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信濃平へようこそ…

ホンモノの自然、手作りのもてなしを

活気満々民宿部会/初の交流会開く


 初めて農民連の民宿部会が発足した長野県飯山市で開催された農民連の全国研究・交流集会。二日目の八月二十五日には、長野県連民宿部会の取り組みについて足立ていさんが特別報告を行い、参加者を感動させました。夜には、足立さんを囲んで民宿交流会も行われ、約三十人が参加しました。

 参加者は、民宿経営が苦境に立たされている実態を改めて深く知るとともに、「民宿部会を全国に広げていくために地元でも取り組んでいく」「行政も地域振興をめざしているが、どうしていいかわからないで悩んでいる。ここで学んだことを生かしていきたい」「将来、グリーンツーリズムに取り組みたいと思っており、参考にしたい」「長野県内にも大いに広げていきたい」「行政が視察にくるよう働きかける」など、時間のたつのも忘れて話し合いが続きました。

“農業を基本に発展させたい”

全国研究交流集会/感動呼んだ足立さんの報告

 全国のみなさん、信濃平の民宿にお泊まりいただき、民宿部会を代表し、心からお礼を申し上げます。
 六月二十八日号の新聞「農民」に“信濃平に「民宿部会」発足”と華々しく報道されました。全国初の民宿部会は、発足後二カ月ですが、力強く育っていると確信しています。

35年の歴史がつちかった絆

 ここ信濃平は昔、外様村といい、長野県でも自由民権運動の発祥地で、さまざまな農民闘争がありました。外様では昭和三十年代に歴史に残る安保闘争をたたかいました。当時、農業基本法により米作地帯のこの地方は、農業では生きていけなくなりました。豪雪地帯のため、冬の間は出稼ぎ者が三千人ぐらいもおり、「出稼ぎをなくせ」「仕事をよこせ」という運動を起こしました。

 また、村の青年が中心となって都会の人たちにスキーを楽しんでもらおうとスキー場を開き、四軒で始まった民宿が七十軒に増えました。一九六二年には、全国青年スキー祭が開催され、全国から千人以上が集まって、村中びっくりしました。あれから三十五年、この時の参加者とのつきあいは、いまも続いています。民宿では、都会の人たちに安心して安く泊まれる宿を提供しようと位置づけ、農民と労働者が力を合わせた労農共闘がしっかりとありました。

 その後、高度成長の時代になり、観光資本が全国すみずみに入ってきました。自然条件が悪く資本力の弱い信濃平の民宿は、半分以下になりました。さらに消費税五%と不況の長期化で、スキー客はもちろん、夏のお客さんも落ち込み、観光業者と安く契約をしなければならなくなるという悪循環になりました。

都会の子の笑顔に励まされ

 一方、減反政策が進められ、そして政府は中山間地対策としてグリーンツーリズムの名のもとに予算をつけ、ハコものや天下り組織が全国に作られました。

 こうした中で、私たちは本当のグリーンツーリズムを発展させていく必要があると思い、信濃平観光協会は、信濃平の自然、くらし、文化、歴史を観光に生かす基本目標を掲げ、民宿組合全員が一緒になってお客さんを受け入れています。
 今年は神奈川や東京から「自然体験教室」の子どもさんを、のべ七千人以上受け入れ、最初は一校だったのが、六年目で十四校と増えました。民宿のおじさん、おばさんは、子どもたちとのふれあいを深めるためにワラ細工、そば打ち、田植え、ジャム作りなどを教え、秋には子どもたちが植えた田んぼで取れたお米を持って、もちつきに学校を訪れ、喜ばれています。

 民宿をやめてしまいたいと思う時もありましたが、子どもたちの生き生きとした姿に接し、非常にやりがいを感じるようになり、活気もでてきました。農業が基本の民宿として、自分の家で取れた新鮮な野菜でお客さんをもてなすために、心を込めて頑張っています。

 全国に自慢できるものは何もありませんが、資本に頼らず自分たちの力で、みんなで考え、力をあわせていくことが自慢です。
 民宿部会は農業を基本に民宿経営を守り、税金や消防法、建築法の改善要求を出していきます。なによりも全国農民連と手をつなぎ、早く全国に民宿部会ができ、お客さんが大勢くることを期待しています。

 最後に私事で恐縮ですが、飯水岳北農民組合の初代書記長であった私の夫は一昨年、脳挫傷で世を去りました。夫が亡くなり、つらい時期もありましたが、夫が残してくれた運動はずっと生き続けると思います。私は地域の人たちと農業と民宿を守っていきたいと思います。

(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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