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全国研究交流集会・特別報告

徹底した宣伝活動で農協の態度が変わった

長野・上伊那農民組合/飯島光豊


 私は米の六百円投げ売り構想問題で、農民組合の取り組みにより、組合員二万人のJA上伊那が二十日間で構想反対に変わったという事実をお話します。
 私たちの上伊那農民組合は一昨年十二月、農政一辺倒の前近代的な組合から近代的な組合をめざして再出発しました。この中で、幻の「白雪餅」の産直などいろいろやってきましたが、大会決定による新聞や組合員の拡大がなかなか進まない。どうしたら増やせるんだろうという討議の中で、産直講演会を開いて仲間を呼び集めるようアドバルーンを揚げようということになりました。

理事会に「農民」号外が配られて

 そういう討議をしている七月、六百円問題が起こりました。「この問題を関税化の二の舞にしてはいけない」「これは農民組合しかやる所はない」ということになって七月二十三日、JA上伊那の組合長に反対するよう申し入れました。

 しかし上伊那の農民組合と農協は四年前に農協合併問題で長野県知事や農水大臣を巻き込んだ大闘争をやって、組合長は私の顔なんか見たくないというほど、しっかりやり合った仲なのです。申し入れに行くと嫌な顔をすることはわかっていたが、問題が問題ですので、申し入れにいくとやっぱり組合長は迷惑そうな顔をして、話もしない。ただ副組合長が一人で「減反もやむを得ない。米を売り抜かなくてはならないのでどうにもならない」などと言うだけで、話が噛み合わない。やっぱり農協はだめだという思いでした。

 これはいつものパターン、こういう重大問題を三役だけで握りつぶされてはたまらない。私たちは理事会が近く開かれるのが分かっていたので理事の数だけ申し入れ書(その裏にラーメン一杯分という「農民」紙をコピー)を持っていき、「これを理事会で配れ」と組合長に詰め寄りました。

「もう後はない、一緒にやろう…」

 組合長もこれだけは無視できず、理事会で配りました。それを見た理事から「農民組合からこんな申し入れがきている。大変な問題だぞ」ということで大問題になり、理事会のなかで長時間話をするハメになった。私の地域の農協理事も、自民党宮下創平代議士後援会の地域の事務局長で、減反問題では私たちと対立してきた。その人までが今度は「もう後はないから、一緒にやろう」と言いだしたのです。

 これは大きな変化だ、それなら農政対策会議の全メンバーに、すぐこの事実を知らせようということになり、予定していた産直講演会を米問題中心の講演会に切り変えて開くことにし、案内を稲作部会、農業委員、農協青壮年部、米を一・五ヘクタール以上作っている農家などに約八百部を郵送。宣伝カーも出して街頭演説、ビラも一万枚まくなど、徹底した大運動を起こしました。

農協組合長も一変し「構想」批判

 こうして世論が高まるなか八月六日に農政対策会議が開かれ、会場入口では農民組合の宣伝カーが宣伝し、会議では、冒頭から井口組合長が「農民組合から申し入れを受けているが、大変な問題だ」と話をしました。出席者からは、県中の説明に対して六百円問題で批判が続出。その批判の前に県中の説明者自身も「実は、私も全中のやり方はおかしいと思う」と、言わざるを得なくなるまでになりました。

 会議での発言内容をよく聞いてみると、発言者は新聞「農民」号外をメモしてきて、発言しているらしいのです。今回はいかに「農民」新聞が威力を発揮したかということです。
 結局、この問題について県中に「組織討議の結果報告」が出され、「JA上伊那は反対」という意思表示をしたのです。

 八月十一日に農協組合長に再度申し入れにいったら、こんどは組合長の態度が一変、ニコニコして「こんな構想は駄目だ。JA上伊那は県中で反対する」というまでに変化。そして「農協合併の時には、いろいろあったが、今考えて見ると有難いことだった」とまで言っていました。
 私たち農民組合は、いまさら何を言うかという気持ちをぐっと抑え「私たちも農協を愛している。共同して頑張ろう」と言って帰ってきました。

 いま農民が集まると「一俵六百円はひどい」「これは政府自民党がやっている。今度の選挙は自民党に入れては駄目だ」「政治を変えなくては」と言っています。今回のことを通じて、だまされている農民も、事実を知らされれば一気に変わることが分かりました。情報が入ったらすぐ動く、そして新聞「農民」を増やすことが大事です。

(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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