「農民」記事データベース990913-419-07

全国研究交流集会

働きかければどこにでも飛躍の芽がある

役員会や寄り合いで討議し、来年の大会をめざして奮闘しよう

谷口事務局長の提起


 第十一回大会から、半年余り、全国の仲間の奮闘により、大会決定の三課題を中心に大きく前進しました。
 来年の大会めざして、後半の課題と運動について提起したいと思います。

一、「大いに物を作ること、作る人を増やすこと」は“日本の農業を守る”たたかい(学習テキスト第五章参照)

(1)市場関係者との懇談を通じて何がわかり、どんな展望がもてたか

 市場は、農民と同じように輸入攻勢と買いたたきの犠牲者でもあります。
 これまでとまったく様相が変わり、大手量販店とつきあわなければやっていけない、つきあってもやっていけないというギリギリの状態に置かれていること、それだけに「国民のための流通を共同してつくっていこう」という農民連のよびかけにもとづく懇談と議論を通じて、今なら一致できるときであることがわかってきました。今ならまだ、一方的に大手量販店の指し値で動く事態になっているわけではなく、その横暴に市場関係者が反発をもって対応しているときだからです。

 しかし、一方では、まかり通っている相対取引を追認し、大手を振って市場外流通ができるように卸売市場法の改悪がなされたことで、市場の役割を放棄し、仲介屋の子会社を作って大手量販店の横暴に沿って生き延びようとする動きも出てきています。
 農民連の働きかけがいかに大切かを示しています。

 農協の大合併と購買・販売部門の軽視は、大手量販店との相対取引が主流になり、指し値同然のため、農民や市場にしわよせがいくなど、市場にとっても農民にとっても、農協が役割を果たせない傾向が強まらざるをえません。また、大合併は、地域農業を見放し、出荷場が遠くなることで小さな農民ほど出荷できなくなり農業をやめざるをえない状況をつくりだしています。それだけに、市場関係者から「生産から流通、消費まで国民の立場で考え行動するめずらしい団体だ」と言われる農民連の果たすべき役割は大事になっています。

 個々の農家の利益を守り地域農業や生活圏を視野に入れて、国民の食糧・農業を守る連動にとって、市場流通を国民の手に取り戻す運動は、重要な柱になっているのです。

(2)作る人を増やすことで、飛躍ができるとき

 古くからの産直センターも新しく産直を始めた組織も、共通して売上が落ちたことを心配しています。多様な産直、市場との共同事業の推進で売り先に心配はないのにどうしてか?

 新婦人の運動が弱いから、生協の注文が減っているからと他に責任を転化しつつ、現状の産直から脱皮しようとせず、「会員を増やせば取り分が減る」と、逆に自分の作物づくりを減らしてさえいる組織があります。「ほかの産直では価格が合わない」「そんなに大きな取引ができるほど物がない」というのが共通した理由です。価格保障が全廃され、市場原理が押し通されるなかで、新婦人産直や生協産直、直売所、朝市の価格だけが維持できるのでしょうか。

 いま大事なことは、話し合いと合意のなかで、多様な売り先とルートを確立することであり、そのなかでできるだけ高く売ろうとする努力も生きてくるのではないでしょうか。多様な産直への努力、大いにものを作って、作る人を増やす運動に打ってでるか、じり貧の中で埋没するか、腹をくくるときがきています。

(3)今後の課題と運動

――必ず地方卸売場と懇談し、まず物を出し、来年に向けての作付を準備し、作る人を増やそう
――政府の検討状況をみて、遅くない時期に米の全国研究集会を開こう

 (1)多様な産直運動(直売所、朝市・夕市、学校給食、病院給食、新婦人産直、生協産直、商店街産直など)を発展させながら、新しい市場出荷・市場との共同を推進できる生産の力量をもつことこそが、新たな発展の打開の道であることに腹を固め、今あるものを、まず市場に出して懇談しあい、来年に向かって作付の準備を進め、作る人を増やす手だてをとりましょう。

 (2)「一俵六百円問題」にみられるように、政府はWTO次期交渉での自由化にそなえ、安上がりで陰湿な減反政策を準備しています。そのうえ、「自給率向上」・直接支払いの財源を米関係予算から回そうとするなど財政からも手を引こうとしています。
 こういうときだからこそ、地域農業を守り、自給率の向上のために減反田や荒廃地に物を作る提案と実践をしましょう。
 減反政策の推進のためのごまかしでなく、農民の要求が実現できる措置を求め、大豆・ナタネ・小麦などの増産に結びつくよう具体的に対応しましょう。
 あらためて「一俵六百円問題」の号外を全農家規模、消費者にまで配る勢いで年内頑張ろう。署名も、予想される十月の臨時国会めざしてさらに推進しましょう。

 (3)単組・班の会議(寄り合い)で作物・生産の話を常日頃重点に置きましょう(学習テキスト参照)。

 (4)県連・単組の役員は、大いに作ること、作る人を増やすことを何よりも重視し会員がどんな疑問をもっているのかよく聞くこと、会員やまわりの農民の意欲が涌く運動を提案しましょう(学習テキスト参照)。

 (5)ブロックネット、県ネットを立ち上げ、全国の仲間の力が結集できる体制づくりを急ごう。全国ネットと、米・雑穀、野菜、果実、畜産加工品など、すべてに対応できるコンピューターがいよいよ始動します。

(4)分析センター二千万円カンパを推進し、九月中に分析の開始を

 消費者の大きな関心事になっている遺伝子組み換え食品の表示は、大企業の製品がほとんど免除され、一割の食品に限られました。事実をもって遺伝子組み換え食品だということを分析し、国民に情報を提供できるのは、農民連食品分析センターだけです。
 今、この世論が高まっているときに開始できなければ値打ちがありません。
 わかりやすいチラシを五万枚作成しました。急速にカンパ活動を進め、九月中に機器を始動させ、その成果を示して、多くの消費者団体、マスコミも招いて大きな集会を開きたいと思います。

二、地域農業を再建し暮らしを守るために、多様な要求運動を展開し、自治体に働きかけよう

 (1)「この指とまれ」ではなく、地域の農業・経済、暮らしに根ざす多様な要求を実現するため、足を運んでの対話と共感、共同を進める運動がますます求められています―生産に関わる課題はもとより、特に介護保険法の実施にともなう困難を打開するたたかいを重視しましょう。

 (2)まず作ること、生産条件に必要なことを提案すること、これを組織として進めましょう。

 (3)いっせい地方選挙や農業委員選挙で切り開いたあらゆる条件を生かして、農業委員会、議員とともに市町村の農業と暮らしの全体をとらえ、地域経済発展をともに考え、その実践部隊になりましょう。

 (4)全国で自治体が果たしている役割、教訓を学び、何から始めるかをみんなで討議しよう。その際、革新自治体を重視して取り組みましょう。

 (5)重税をはね返すたたかい 今年度の確定申告から標準課税を廃止し、収支計算方式に切り換える動きが広がっており、「農民連に入って、自主計算・集団申告を」とよびかける絶好の機会です。全農民規模のよびかけと学習、記帳を中心に取り組みを大きく広げましょう。
 来年は固定資産税の評価替えの年です。また、来年から農業用施設のある農地が農地なみに課税されることになります。著しい重税となっている固定資産税を軽減させる取り組みも大切です。

三、新たな情勢を打開するために、新聞「農民」を先行した拡大の飛躍を

(1)いかに新聞「農民」を求めている情勢か、この運動がいかに組織の勢いをつけ、運動全体を引き上げるか

 (1)全国大会の決定を正面から受け止めた県連役員会の討議が基礎になっている、(2)決めたことを一つ一つやりあげることで、県連役員の団結が固まり、方針に確信をもち、組織の勢いがついてくる、(3)真実の情報を広め、「一俵六百円問題」の運動に打って出ることで、対話と共感が広がり、情勢による変化を体感し、展望が次々に湧いてくる、(4)単組・班まで動けるようにするための手だてをとり、すべての会員の運動にするにはどうすればよいかの知恵を生み出す――などの教訓が作られました。

(2)今後の課題――農業委・自治体関 係者への総当たりをやりぬき、どんな運動でも新聞拡大を

 (1)単位農協、農業委員会への働きかけが求められる多くの課題が出てきます。
 「一俵六百円問題」の徹底した運動とともに、新農基法の具体化の課題で、新聞「農民」購読の全国一斉の働きかけが求められます。

 (2)真実を伝える商業マスコミは、日本農業新聞を含めてなくなりました。戦後農政の総決算である新農基法の具体化は、法律改悪は来年の通常国会になりますが、方針は今年中に次々に出されてきます。新聞「農民」を求める情勢はますます高まるでしょう。対話運動に全力をあげましょう。

 (3)新聞「農民」拡大を飛躍させるうえでのネックは何か、特別報告を生かして県連役員会で討議を深めましょう。

 (4)役員会での討議を重視し、単組・班の会議、寄り合いをもとう。その際「学習テキスト」(段取り八分)を活用し、みんなで話し合って自主目標と段取りをすぐとり始めましょう。

四、新農基法農政に対するたたかいとWTO協定改定をめざす運動

 食糧と農業を守る課題からみた今年から来年にかけての特徴は、(1)価格保障の全廃をはじめ新農基法が次々と具体化され、農民、農業団体、農業関連産業との矛盾が深まり、働きかけることで運動が大きく発展させうること、(2)WTOの次期交渉が十一月三十日からのWTO閣僚会議から実質的に始まることです。

 (1)新農基法の一つ一つの悪政の具体化を暴露し、積極的な提案をもってたたかおう。

 (2)新農基法とWTO協定との関連をあばき、改定の世論を高めよう。
 国際交流を推進し、国際シンポジウムをめざして運動しよう。
 考え方の基本は、アメリカ本位のWTO協定でなく、米の関税化を撤回し自給率の向上を認めるなど、食糧主権を尊重し、輸出国と対等な条約とすることで一致する幅広い個人、組織を結集する努力をすることです。

 (3)全労連(九月・十月)食健連(十月・十一月)の宣伝とすべての自治体への訪問活動を中心とする全国キャラバン行動に積極的に対応し、地域に根ざした運動のステップとしましょう。

五、国民的課題をともにたたかい、総選挙に追いこもう

――農業の根本的な打開と農民・国民の暮らしを守るために

 農民ですから、ものを作ること、販売することに関連する要求が最も強いのは言うまでもありません。しかし、お年寄りの多い農村では、介護保険問題や医療・年金問題が切実であり、農村で多数を占める兼業農民の仕事先をめぐる問題も、いよいよ切実です。

 自自公による悪政が、農民の営農と暮らしを丸ごと破壊しているからです。それだけに、すべての農民を視野に入れ、多様な要求運動の一つ一つに誠実に取り組むことが、要求をはばんでいるものを明らかにし、「農政だけは自民党は許せない」と言っていた保守的な人も、自自公政治の悪政全体に目を向け、政治を変えねばならないという原動力になるのです。
 要求運動を強めれば、個々の農民だけでなく、農業関連産業や単位農協、農業委員会、自治体も、自自公政治に批判的な立場に立たざるを得ないのも今の特徴です。

 国民大運動実行委員会は、これまでの戦争法や盗聴法、君が代・日の丸法反対などのたたかいで広がった宗教者や「連合」などとの連携をさらに強め、秋の九月、十月の地域を中心としたたたかいを踏まえて、十一月の初旬に大集会を準備しています。
 小渕内閣の解散・総選挙を待つのではなく、要求運動とともに、国民と連帯して《総選挙で国民の信を問え”の声を高め、解散に追い込むことが、農民・国民のための政治を取り戻す先手必勝のたたかいです。

(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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