全国研究交流集会「新しい時代にふさわしい新しい組織」に作り替える気概で小林代表常任委員の開会あいさつ
[1]研究交流集会はどんな役割を果たしてきたか農民連が結成されて以来の十年を振り返ってみますと、私たちは運動の面でも組織の面でも、全国の進んだ経験を学び合い、模索し、共育ちをしてきたように思います。また、全国の実践や経験がこの集会に持ち寄られ、それが全国に返されて、次の新しい段階につながる――そういう大事な場になってきました。全国の方針もここから学び、吸収して練られてきたものです。それほど私たちにとってはこの研究交流集会は大事なものです。 [2]この研究交流集会の特徴(1)民宿部会ができて、そこに分宿する今度の研究交流集会の一つの特徴は、長野県農民連に民宿部会が作られ、民宿に分宿することです。私たちはリゾート開発が盛んな頃、これを批判するとともに、「安らぎと人間性の回復」のためのグリーン・ツーリズムを主張して、当初から研究交流集会を農山村の宿泊施設や民宿を使って開いてきました。大きなホテル一カ所に集めるやり方だけでは、私たちのめざす方向からずれることになるからです。 これを契機にいよいよ本格的に真のグリーン・ツーリズムの取り組みに踏み出すことになります。 (2)栄村(長野県)の村長さんの講演この後に、栄村の高橋彦芳村長さんに、地方自治とはどういうものか、生きた民主主義の話や山村の農林業の施策や介護保険などのユニークな話を聞きます。私たちの運動にとって、大変参考になると思います。(3)農民連の学習テキストができた六月に発行したテキストは、この十年の要求・政策・運動・組織・財政などについての全国の悪戦苦闘の総括であり、汗と涙の結晶です。この集会で思いを新たにして、生かしていただければと思います。[3]農民連は情勢をどう見、どう展望を切り開こうとしているか(1)農民運動の面ではコメ関税化のときとは違い、「一俵六百円」には多くの農協組合長が反対の声を上げていますし、短期間にかつてなく大量の署名を国会に提出することができました。大きな変化です。いま、一般に国産米として売られている米には、かなり広範に外米が混ぜられています。これは、国産米がほしいと願う消費者にとっては大変な問題です。
もう一方では、ウソ・ニセモノとたたかうという点では決定的に有利な局面にもつながる問題です。 (2)政治の動向からみると政府は銀行救済に国の当初予算に匹敵する六十兆円もの巨額な公的資金をつぎ込み、さらに「日の丸・君が代」「盗聴法」「戦争法」など、憲法を踏みにじり、暮らしと平和・民主主義を蹂躪する戦後最も反動的な政治を押し進めています。まさに逆立ち政治です。農政では、コメの関税化、新農業基本法の強行、さらには「一俵六百円」問題を、ろくな論議もせずに強行しようとしています。
自民党が自由党・公明党を抱き込んで戦後最悪の政治を強行していますが、自由党と公明党は総選挙で反自民の公約をしたのですから、自・自・公の連立は国民に説明がつかない公約違反という大きな弱点をもっています。しかもやることが国民の大多数が反対していることですから、二重の弱点です。 [4]農民連はどんな展望でたたかっているかこういうときに大事なことは、農業のきびしい側面だけを見るのでなく、もっと広く全面的に見ることです。農業が衰退するなかで流通・生産資材・加工など農業関連産業まで大きな影響を受けています。ものを作るのが一番の農民にとって身近なのは、減反が四割にも及ぶいま、何を作るか、作ったものが売れるのか、いくらで売れるのかということです。 (1)流通の変化と新しい市場出荷その意味で「流通の変化に対応した多様な産直の探究を」という課題をここ数年来探究し、それにもとづく各地の取り組みを強めてきました。卸・仲卸の経営が悪化するなかで、卸売市場が地場産・国産ものを欲しがっています。粘り強い対話をするなら、農民との関係を改善する可能性は客観的にかなり広範に存在しており、この一年間、大きな進展がありました。亜寒帯から亜熱帯まで三千キロもある日本列島では、季節によって作物ができない所があれば、必ず別の地方でとれるという特徴があります。だから、私たちの全国的なネットワークができるなら、どこで何を作っても必ず売れるはずだ――そういう展望で、この一年ネットワークを作る努力が払われてきました。 国民の八割以上が国産農産物を望んでいる、市場も変化して、対話をすれば可能性があるこれが悪政が生んだ新たな条件です。まして、遺伝子組み換えの有無を調べる機械が分析センターに近く入ってきて、容赦なく暴露します。この厳しい農業情勢のなかで、私たちはこのような条件を切り開いてきたのです。 (2)国産米が攻勢に「一俵六百円」問題は、「それがイヤなら減反をしろ」という陰湿な減反強制であり、「過剰」にしないということは、年中不足状況にして、外米輸入を限りなく拡げるということでもあります。これを国民に広く知ってもらうため、頑強に粘り強く宣伝すべき問題です。「たたかいこそが矛盾を解決する」という立場に立てば、正念場のたたかいというだけでなく、戦略的に有利な立場に立てると見るべきです。(3)運動してこそ展望がしかし、切り開いてきた条件を実現する力と運動が弱ければ、すべて絵に描いた餅になってしまいます。いろいろ悪条件が重なったとはいえ、果たして皆さんの組織で「流通の変化に対応した多様な産直の探究を」について、ネットワークや「新しい市場出荷」について、どれだけ話し合ったでしょうか。 [5]新しく組織を作り替える気概の取り組みを私たちの運動にとって最も抜本的な改善が必要なのは、ここです。みんなが会議(寄り合い)で話し合って納得し、やる気になってこそ大きな力を発揮することができます。組織が大きいとか小さいとかいっても、みなスタートラインについたばかりです。それどころか、「一俵六百円」問題を契機に訪問・対話、署名や新聞拡大などで、これまでパッとしなかった組織が素晴らしい活動をしています。
その一番のカギが「すべてのことをみんなが取り組む」ことです。テキストにある「得手を生かせば誰でも活動家」という問題、請負主義の克服です。 私たちは、いま、歴史の大きな流れのなかにいます。苦闘をしながら展望を確実に切り開くためには、農民連を「新しい時代にふさわしい新しい組織」に作り替えるくらいの努力が求められていますが、皆さんの持ち寄った経験の交流はきっと、その大きな糧になるだろうことを期待して、開会の挨拶にします。
(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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