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農業委員選挙特集(2)

東で西で活躍する農業委員会


「役に立った」と喜ばれる「新規就農者支援制度」

鹿児島・大浦町

 鹿児島県農民連会長の下屋一美さんが農業委員を務める大浦町は、温暖な気候を利用してポンカン、タンカンなどの柑橘の産地として知られています。大浦町では、農家の高齢化、農地の荒廃がすすむ中で、九六年、農業委員会の活動によって「新規就農者支援制度」がつくられました。

 総予算額は千百四十万円。新規学卒者や単身のUターン者には、一年間六十万円以内(Uターンの夫婦には百二十万円以内)の金額が支給されます。また、町外や他産業から町内に就農する新規参入者には、二年間で二百二十万円以内(夫婦の場合は二百八十万円以内)になります。さらに、住居移転援助金、倉庫建設等援助金などもあります。
 現在、地元の出身者が二人、大浦町に戻って新たに就農しています。百十三万円を支給された水田六ヘクタールを所有する就農者(44)は、「親譲りの農機具がそろっていたので、援助金を肥料の購入にあて、新たに借金せずにすんで本当に助かった」と言っています。

 また大浦町の農業委員会は、町に建議をするために毎年、若い農家との対話を行っています。その中で、「有機農業研究がしたい」との若者の要望をうけ、農業委員会として「ぼかし肥料」をつくっている熊本県の「大矢野有機農産物供給センター」(産直協加盟)を視察しました。
 そして、このセンターの活動に学んで、農民連(農業委員会が五人いる)が中心となって「大浦有機の会」を結成、有機農業の研究を開始しました。こうした運動の高まりによって、九八年十月、県と町がそれぞれ半額の補助をおこない六百九十万円で施設が完成しました。
 下屋さんは、「このように、農業委員会の活動は、農業集団の育成と強化なしには進展はない」と語っています。


横暴な農地転用に「待った!」、「残土投棄」に規制条例も

茨城・八千代町

 水田を中心に関東でも有数な露地野菜の産地として知られる茨城県八千代町。同町農業委員の小竹節さん(県西産直センター代表理事)は、農地を守り、地域農業の振興策をいろいろ提案し、農政をリードしています。

 大手コンビニのローソンが業者を通じて資材置き場の目的で書類を申請し、駐車場に使用しようとしましたが、農業委員会は農地転用の許可を拒否。目的をはっきりさせるよう要望し、さる五月二十五日に一年ぶりに申請を許可しました。
 「目にあまる違法な農地転用が、いまでも行われている。インスタントラーメンを作っている企業は無許可で農地を駐車場に使用している。農業委員会は現状回復命令を出しているが、自民党県議や県当局などを動かして圧力をかけてきている。違法転用には断固たる決意が必要だ」と強調する小竹さん。

 低湿地の田んぼを残土で七割も埋めててから、倉庫を建てるという転用申請が出されたとき、警告を無視した悪質なものだったので同僚の農業委員と力を合わせ、現状回復命令を何回も出し、八〜九割方元に戻させました。
 こうしたことから転用申請が出されたときには、以前は地域担当の農業委員だけの現地調査でしたが、小竹さんの提案でいまでは全員が半日かけて行い、「農地の番人」の役割を果たすようになっています。

 八千代町を含めた県西地域は、東京や埼玉のビルや地下鉄工事などから出る残土が農地に捨てられています。土地改良区から地下水汚染などの不安が出され、小竹さんは農業委員会で規制措置をとるよう主張し、建議をあげさせ、町議会で残土規制条例をつくらせました。
 この条例は、五百平方メートル以上を埋め立てるには町の許可をとり、違反した場合は、五十万円以下の罰金や懲役刑がつくもです。

 一方、農業振興についても町が農産物の直売所や多品目の野菜を作る計画を立てるよう提案したり、また、その時々の農政問題も取り上げ、WTO協定の改定や米関税化(完全自由化)に反対する意見書を全員一致で採択するために奮闘しています。
 農業委員五期目の小竹さんの活動が、大きな影響を与え、この十四年の間、同期の農業委員のうち五人が県西産直センターの会員になっています。


牛屋のかあちゃんと農業委員

北海道幕別町農業委員 森 勤子

 一九九六年七月、私にとって大きな転機が訪れました。日本共産党から農業委員選挙の立候補の要請があり、いろいろと悩み考えたすえ農業委員になりました。牛屋のかあちゃんと農業委員、結婚して初めて酪農をやり十八年、“農業”が少し解かりはじめてきた私に、農業委員なんてできるのだろうかという思いでした。

 しかし月一回の定例総会、農地の斡旋や賃借、権利移動など、しだいに農業委員会が“農民の議会”としての権限や機能を最大限活用しているのか、農家と農地を守り農業再生に努力していると言えるのか、疑問が湧いてきました。そんな中、議題の終了後に意見を申し出る場を設けるよう要求し実現しました。

 いま幕別町でも遊休農地が増え、対策に苦慮しているのが実情です。農地の斡旋では、農業経営基盤強化促進法にもとづいて、いったん北海道農業開発公社が買い受け、買い手と賃借契約を結び五年後に売り渡すという制度があります。しかし、買い手はその間に認定農家にならなければ買い受けることはできません。私が在職した三年間に、二軒の農家が契約途中で離農してしまいました。規模拡大ばかりをすすめる農政の誤りです。
 農産物の輸入自由化、価格を市場原理にゆだね、株式会社の農地取得に道を開く新農基法では、後継者に引き継げる農業経営は成り立ちません。

 私は、地場産物を学校給食に供給し、子どもたちが安全な食べ物を食べられるようにすること、女性の農業者年金を定額にし加入しやすくすることなど、女性の要求が届く農業委員会にしていきたいと思っています。農業つぶしに立ち向かい、地域農業振興に努力していくつもりです。

(新聞「農民」1999.6.14付)
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