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農業委員選挙特集(1)

みんなで選ぼう! 農地守り、地域発展の推進役

7月11日投票

 農業委員選挙が、七月に全国の約七割の市町村(沖縄は九月)で行われます。農業委員会は「農民の利益代表機関」であり「農民の議会」と言われています。
 厳しい農業情勢のもと、二十一世紀の日本農業をどの方向へ導き、地域の農業をどう再生させていくかが問われています。そこで、農業委員会の果たす重要な役割や各地の地域農業を守る取り組みを紹介します。


農業委の重要な役割

元福島県農業会議事務局長 斉藤実さんに聞く

“農地の番人”の役割になう

斉藤
斉藤実氏
 ――今日の厳しい農業・農村の中で、農業委員会の果たすべき役割は。

 斉藤 私も長い間、農業会議の仕事をやり、農業委員会の役割は大変大きいと思っています。
 農協は、大型合併で組合員とのむすびつきが薄くなっており、行政もまた適切な施策が打ち出せなくなっている状況の中で、農業委員会は、農民の議会として村や町の農業をどのように振興するか、また、農地の番人としての役割を担っています。さらに、建議権を活用して国や地域の行政の施策を確立することも大いに可能です。

「新農基法」で農地が危ない

 ――新農基法については、どのように考えていますか。

 斉藤 戦前の地主制による土地所有が、戦後の農地法によって大きく変わり、今日まで日本農業を支えてきましたが、今度の新農基法は、この原則をすべてなくしてしまうという内容であり、大変重大です。
 そして、四一%まで下がった自給率をどのようにするのか、これもあいまいにされたままです。
 農業委員会関係で言えば、農地法をなくせという方向であり、農業委員会法改正も問題です。これらについても、農業委員会が防波堤の役割を果たさなければならないと思います。同時に、農業委員は、そもそも何のために委員になるのかが問われており、今回の農業委員選挙は瀬戸際に立たされていると思います。

農業に参入をねらう大資本

 ――いま株式会社の農地取得、大資本は農業への参入をねらっていますが…。

 斉藤 株式会社の農業参入は農地取得とともに、財界がねらっていたものです。彼らがやろうとしているのは、投機的なものであり、良いところを取り、もうからなくなればさっさと撤退する。無責任なものです。郊外に大型店が農地をつぶして進出し、撤退した例は、現在でもたくさん見られます。二十兆円産業といわれる農業を支配しようとするねらいは、明白ではないでしょうか。
 特定の大規模農家のみを対象にしたやり方は現在でさえうまくいっていないし、多様な経営、家族経営を育てることが何よりも大事です。

WTO協定改定求める運動を

 ――WTO農業協定の次期改定交渉をひかえ、農業委員会の役割は。

 斉藤 今回の農業委員選挙で選ばれる農業委員は二〇〇〇年のWTO協定の改定を求める運動に参加できるわけです。WTO協定は輸出国中心で農産物輸出国・アメリカの横暴は目にあまるものがあります。
 農業の多面的機能を生かし、国内自給率向上のためにも、WTO農業協定の改定を求める運動が大切です。消費者とも共同した国民的運動が必要です。以前、日本農業を守る一千万人署名を進めた経験を生かし、農業委員会が積極的な役割を果たすべきです。

(聞き手は、福島県農民連会長の佐々木健三さん)


農業委の発案でスタートして17年

名物朝市拝見/千葉・酒々井町の朝市

朝市
次つぎとお客があらわれ大いそがし
 「これどうやって食べるの?」「これはおいしいよ。今朝採って来たんだよ」――そんな声がにぎやかに飛び交う千葉県酒々井町の日曜朝市。休日の朝七時だというのに会場はお客さんでいっぱいです。旬の野菜ははもちろん、手作りの漬物、お餅や揚げ煎餅、ピーナッツみそやキンピラごぼうなどお惣菜から切り花、野菜の苗まで、農家でできるありとあらゆる物が色とりどりに並び、客が奪い合うようにして買っていきます。

準備3年

 「酒々井朝市出店者組合」が日曜朝市と夕市を開くようになって今年で十七年。この組合結成の大きな力になってきたのが農業委員会と農業委員の竹尾忠雄さん(千葉県農民連常任執行委員・酒々井町支部長)。
 小さな兼業農家が多かった酒々井町では、これといった特産物もなく市場でも買いたたかれ、離農と宅地化が進んでいました。そんななかで「なんとか農家が元気になれるものを」と農業委員会で準備会を結成、神奈川県厚木市の朝市の見学に行ったのが、日曜朝市の始まりでした。それ以来農家に出店希望のアンケートを取るなど、準備すること三年がかりで朝市組合はスタートしました。

濃い交流

 最初は「本当に売れるのか」という心配や、作付けも多品目少量生産にかえなければならないなどの苦労もありました。そのたびに朝市組合では話し合いを重ねて「オレ達は単なる物売りじゃない。消費者との交流が大切なんだ」と知恵を出し合って乗り越えてきました。そのなかには竹尾さんはじめ農業委員の大きな活躍があったのです。
 ところでこの朝市、とにかく地元にしっかりと根づいています。十七年の間にお客さんも、野菜の旬も各農家の特徴も実によく覚えていて、なじみの農家とは顔どころか名前まで知っている、そんな濃い交流ができてきました。これも、消費者も出店しての「朝市祭り」の開催、イモ掘りを兼ねての「生産者と消費者のつどい」など、双方の思いを交流する場を大切にしてきたからこそでした。

楽しい!

 十七年、かかさず朝市に出店してきた農家の高崎笑子さんは言います。「朝市があったからこそ農業を続けてこられました。お客さんからはとにかく安い、物が良いと喜んでもらえて、朝市では話しもできるし、農家同士も情報交換やお喋りもできます。農業は作る喜び、朝市は売る楽しみ、これですね」。
 農業委員として力を尽くしてきた竹尾さんも「とにかく農家が元気なのがうれしいですね。今後は朝市を行程に組み込んだ朝市ツアーなども実現していければ」と、次のアイディアを温めています。
(満川)

(新聞「農民」1999.6.14付)
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