食料主権で持続可能な
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国際総会に参加した各国の代表(ビア・カンペシーナのフェイスブックから) |
総会は、多重危機の打開策として食料主権やアグロエコロジー、農民の権利の保障をあらためて提示。人類の未来のため自らの役割を自覚し、前進していこうという熱気と自信にあふれていました。
背景には、30年のたたかいの歴史があります。ビア・カンペシーナは1996年に食料主権を提唱し、それを実現する手段としてアグロエコロジーの実践・普及に努力。これらは、国際法制度や各国の政策の中に盛り込まれてきました。
特に、前回2017年の第7回総会以降の成果が顕著です。国連総会は18年、ビア・カンペシーナが提唱する農民の権利宣言を採択。19年から28年には国連「家族農業の10年」が始まり、その実施にあたる国際運営委員会にビア・カンペシーナも参加してきました。アグロエコロジーについては国連食糧農業機関(FAO)が18年に10要素を発表するなど、持続可能な開発目標(SDGs)達成に寄与するとして国連機関を挙げて奨励するようになりました。
イスラエルによるガザ攻撃、ロシアによるウクライナ侵略という2つの大きな紛争が続く中、軍事対応を退け、平和を求める発言も相次ぎました。
総会ではパレスチナの代表がガザ攻撃を「大量虐殺」「飢餓を武器として利用している」と非難。イスラエルによる大量虐殺を直ちに停止するよう求める決議も採択されました。
アジアからの参加者。右から2人目が小倉さん、3人目が横山さん(ビア・カンペシーナのフェイスブックから) |
運動・組織の質でも大きな進展がありました。
国際総会に先立って青年総会と女性総会を開催。女性総会と並行して、家父長制に反対する男性の会議と性の多様性に関する会議が開催されました。
特に、農村や組織内の性的少数者の権利の向上を目指す多様性に関する会議は初めての開催となりました。ビア・カンペシーナは、青年と女性に関して連絡会を設け、独自に会議を開催するなど組織全体で権利や発言力の向上に努めています。今回これに加え、多様性に関する連絡会の設置を決定。性的少数者の組織内・運動・農村地域での権利や地位の向上に努める方針を打ち出しました。
さらに、青年に関して、運動の世代的継承を重視する立場から、ビア・カンペシーナの国際指導部(国際調整委員=ICC)に入っている青年の数を、地域グループから1人選出することを決めました。青年のICCメンバーは4人から、一気に10人に増えることになります。
また、アグリビジネスとビッグ・テック(巨大デジタル企業)が主導し、21年9月に国連食料システムサミットが開催され、今年7月には、同サミットの「2年後会合」が開かれました。これらは、新自由主義貿易協定やその中での多国籍企業や富裕層が占める支配的地位を維持・強化しながら、食と農のデジタル化、自動・無人化、遺伝子組み換えやバイオテクノロジー技術の大幅活用、知的財産権の強化などを進めるものです。
総会ではこうした動きに対し、「小規模農家を排除し、社会的・環境的コストを隠し、農家のいない農業を促進している」(第5回青年総会宣言)と批判しました。
ビア・カンペシーナはまた、危機への人々の不安を利用し、外国人や移民労働者の排斥を掲げ、国家主義や民族主義、さらには軍拡や好戦的政策を掲げる勢力に対しても警戒を呼びかけました。
こうした逆流に対して、第8回国際総会は、食料主権とアグロエコロジーの旗をあらためて高く掲げ、着実に前進していくことを強調しました。
食料主権やアグロエコロジーが盛り込まれている農民の権利宣言に関しては10月、国連人権理事会で、宣言実施を進めるための作業部会を設置する決議が可決され、実施に向けて弾みがつきました。
総会はまた、食料主権を実現するために欠かせない公正な貿易制度の実現に向け「食料主権・協力・連帯に基づく貿易と農業の新たなグローバルな枠組み」を構築すると表明しました。
食料主権と民衆による食料制度の構築に向け、他の市民社会組織とともにグローバルフォーラム(ニェレニフォーラム)を25年に開催することも発表しました。
[2024年1月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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