「農民」記事データベース20231120-1578-10

遺伝子操作(遺伝子組み換え、ゲノム編集)食品、
フードテックはいま――

アグリビジネスによる
食料支配を許すな!
(2/3)

開発に前のめりの政府・バイテク企業

関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(1/3)
関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(2/3)
関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(3/3)


欧州委員会がゲノム編集作物の
一部を規制対象外に

 EU(欧州連合)では、2018年に欧州司法裁判所が「ゲノム編集技術による変異誘導も遺伝子組み換え作物と同じ法律(指令)によって規制される」と判断していました。

 しかし、EUの行政府である欧州委員会は7月5日、新遺伝子技術(NGT)で作った作物の一部は、遺伝子組み換え作物のような規制対象にはしないと発表しました。NGTとはゲノム編集技術のことです。

 ゲノム編集技術をカテゴリー1と2に分け、従来育種でも起こりうる小規模な変異誘導で、外来遺伝子が残らない場合はカテゴリー1(図のタイプ1)として、遺伝子組み換え作物のような規制をせず、それ以外のゲノム編集技術はカテゴリー2で、今までの遺伝子組み換え作物と同じように厳しく審査、管理するといいます。

 環境や健康へのリスク評価、検査の必要もなく、トレーサビリティーも、表示も、監視も必要なし、有機農産物などとの共存政策の必要もない、という欧州委員会の提案に対して、ハンガリー政府は、健康や環境へのリスク評価がない状態で市場化することに反対し、オーストリア、ドイツの環境大臣も欧州委員会の提案は受け入れられないと表明しました。その他、多くの環境保護団体や有機農業団体などが反対声明を出しています。


開発進めるバイテク企業
前のめりな日本政府

培養肉、昆虫食などフードテックも

 世界でも、ゲノム編集作物の開発が目白押しです。アメリカでは、農務省がゲノム編集作物の栽培を規制しない方針を発表。高食物繊維小麦、うどん粉病抵抗性小麦、高収量小麦、除草剤耐性イネ、アクリルアミド低減ジャガイモ、干ばつ耐性トウモロコシ等の開発が推し進められています。

 日本では、農水省が「次世代バイオ農業創造プロジェクト」(2019年)で、ゲノム編集作物の開発推進をうたい、大学の法人化で研究者に稼げる研究をさせ、大学発ベンチャー企業がバイテク企業とともに国の後押しを受けて開発する構図になっています。

 さらに「みどりの食料システム戦略」でゲノム編集技術活用の「効率的品種開発」をうたい、開発を進めています。

 日本政府は、米国の農業イノベーション推進にならい、最先端テクノロジーを駆使して、「気候危機や食料不安への脅威への対応」として開発を正当化。グローバル種子農薬企業やIT大手企業がもくろむ農業モデルがゲノム編集などのバイテク食品やフードテックです。岸田首相は「日本発のフードテックビジネスを育成する」と開発に前のめりです。

 フードテックとは、代替肉、細胞培養肉、昆虫食、ゲノム編集やGM微生物を利用した精密発酵など。その狙いは、食料生産の仕組み自体を変えること、つまり、従来の生産の中心である農漁業から大企業による食料生産へ、生産・流通・消費に至るまでのすべてを包括した食料支配にあります。

 特許料を含む高額の種苗、受精卵、稚魚の存在で食品価格はさらに高くなるほか、日本の農林水産業が壊滅し、地域社会と文化も消え、食料自給率はさらに低下します。


ゲノム編集技術とは

 遺伝子組み換え技術は、生物の遺伝子に別の生物の遺伝子を入れる技術です。

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 現在代表的なゲノム編集は、特定の遺伝子を切断してその働きを止める方法で、遺伝子を操作する新しい技術です。細胞内で遺伝子を切断する酵素を使い、特定の遺伝子にねらいをつけて切断し、機能を失わせたり(タイプ1)、別の遺伝子を組み入れたり(タイプ2)します。

(新聞「農民」2023.11.20付)
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2023年11月

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