「農民」記事データベース20231120-1578-09

遺伝子操作(遺伝子組み換え、ゲノム編集)食品、
フードテックはいま――

アグリビジネスによる
食料支配を許すな!
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開発に前のめりの政府・バイテク企業

関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(1/3)
関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(2/3)
関連/アグリビジネスによる食料支配を許すな!(3/3)

 遺伝子組み換え、ゲノム編集などの遺伝子操作食品、培養肉・昆虫食などのフードテックの開発を政府・バイテク(バイオテクノロジー=農薬、化学薬品、種子)企業が推進しています。それに対して、食の安全を守り、食料・農業を振興し、生物多様性を生かそうと、市民・農家が運動で跳ね返しています。遺伝子操作食品、フードテックで食料支配をねらうアグリビジネスの現段階とその問題点を特集します。


日本で進むゲノム編集食品開発

トマト、マダイ、トラフグは市場流通

 いま日本で、ゲノム編集食品として市場に流通しているのは、トマト、マダイ、トラフグの3つです。

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ゲノム編集トマト

 血圧の上昇を抑えるGABA(ギャバ)高蓄トマトはベンチャー企業サナテックシード社が開発。苗を家庭菜園用に無償配布したのをはじめ、福祉施設・小学校への苗の無償配布もねらっています。現在、パイオニアエコサイエンス社のホームページで通信販売を行い、一部の量販店でも期間限定で販売しました。

 肉厚マダイと高成長トラフグはベンチャー企業リージョナルフィッシュ社が開発。マダイは2021年から販売サイトを開設しています。トラフグは、京都府宮津市がふるさと納税の返礼品として販売し、百貨店の催事にも出品しています。


新たにトウモロコシ、ヒラメを届け出

 厚生労働省は3月、ゲノム編集トウモロコシをゲノム編集食品として受理しました。米種子大手「コルテバ・アグリサイエンス」社が同省に流通や販売を届け出ていました。ゲノム編集食品の受理は4例目で海外企業の製品は初となります。

 このトウモロコシは「ワキシーコーン」と呼ばれ、加熱するともちもちとした食感が出るのが特徴。粉末状のコーンスターチにして、食品の増粘剤などに利用するといいます。

 さらにリージョナルフィッシュ社は10月、厚生労働省にゲノム編集食品として「高成長ヒラメ」を届け出し、受理されました。水産では3例目となります。


アメリカでは
高オレイン酸大豆が製造・販売を中止

 世界に目を向けると、アメリカのカリクスト社が、世界初のゲノム編集食品として、トランス脂肪酸をゼロにするという「高オレイン酸大豆」を大豆油として売り出し、外食産業などで使われていました。

 しかし、農家にとっては収量が低く、消費者にとっても不人気なこと、従来の育種技術で高オレイン酸大豆が可能になったことなどにより、カリクスト社は高オレイン酸大豆の製造・販売を中止。同社も経営危機に陥ったことから、いまは流通していません。


初の遺伝子組み換え動物、GMサケが破たん
(アメリカ、カナダ)

 遺伝子組み換え(GM)サケは、米国アクアバウンティー社が開発。夏しか成長しないサケを年中成長できるようキングサーモンの成長ホルモン遺伝子と通年で成長する魚ゲンゲの遺伝子をアトランティックサーモンに導入、通常3年で出荷サイズになるのを1年半で通常の2〜3倍のサイズに成長します。成長ホルモンの濃度が高くがん細胞を刺激すること、アレルギーの懸念、逃げ出した場合の野生種への影響が懸念されていました。

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上が遺伝子組み換えサケ

 23年2月、アクアバウンティー社はカナダでのGMサケの生産を中止し、従来の生産に切り替えると発表。米オハイオ州で新規の巨大養殖場建設を進める計画を中断しました。

 GMサケの開発以降、アクアバウンティー社の売り上げは6割近く減少し、株価は暴落。養殖場では、大量のGMサケが死んでしまいました。GMサケは短期間に巨大化しますが、その成長に内臓が耐えきれず胃の破裂などの臓器異常で3分の1が早死にしました。

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(新聞「農民」2023.11.20付)
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2023年11月

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