やっぱり廃止しかない
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多くの反対の声を押し切り、10月1日にインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入が強行されました。
インボイス反対のオンライン署名が日本で過去最大の約56万人に到達するなど、大きな反対世論に対し岸田政権はあわてて署名を受け取り、対策を打つよう関係閣僚に指示をしましたが、その中身は既存の時限緩和策の周知にとどまり、根本的な対策にはなりそうにありません。導入後、困惑や怒り、不安の声が上がっています。各地の声を紹介します。
牛舎の様子(長野県南牧村、写真提供=片桐さん) |
酪農家の多くは課税事業者ですが、酪農業界にはヘルパーや削蹄(てい)師、人工授精師などのフリーランスが数多くいて、酪農経営はこれらの個人事業者に支えられ、助けられて成り立っています。そしてこうした個人事業者の多くは免税事業者です。
あまり知られていないかもしれませんが、牛も生き物なので蹄(ひづめ)が伸びます。そのため定期的に蹄を整える(切る)ことが牛の健康にとって不可欠です。知識も経験も必要なたいへんな仕事ですが、酪農家を定期的に回って、この削蹄をしてくれるのが削蹄師さんです。
知り合いの削蹄師2人に話を聞くと、2人とも「免税事業者だったが、酪農家から言われたわけではないが、自分で調べて仕方なく登録した」「消費税分を値上げできずに自前で払うことにした」と言います。
Aさんは、これまで一頭3500円の料金で削蹄してきましたが、「酪農家もいま飼料高騰などで前代未聞の経営危機なので、10%も値上げできない」と、基本料金を3300円に値下げして、消費税10%上乗せし、3630円の設定にして、「自腹で消費税分を支払うことにした」と話してくれました。またBさんは、「値上げしても数十円にとどめる」と言葉少なに話しています。
2人とも酪農家の窮状を考え、自らの負担増を覚悟でインボイス登録を選びました。国民の大事な食料である牛乳の生産現場を縁の下で支える削蹄師さんのつらい思いを、岸田政権はどう受け止めるのでしょうか。
収穫直前の稲穂(写真提供=相澤さん)
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これまで免税事業者でしたが、取引先の関係などもあり、インボイス登録をしました。10月から使うインボイスを作りましたが、送料(10%)とお米代(8%)を分けるなど、請求書を作るだけで手間がかかりました。税務署も登録の説明は丁寧にしますが、その後のことは全くフォローがありません。
地元の多くの中小事業者が口をそろえて、「とにかく面倒くさい制度。大した説明もなく非常に困る」といっています。
これを機に振込手数料(10%)をお客さん負担にする事業者も増えるでしょう。結局、インボイスで消費者の負担も増えることになります。とにかくひどい制度です。
そもそも免税制度は小規模事業者の事務負担軽減のためにあったのに、インボイスで事務作業は倍増です。免税制度の理念はどこへ行ったのか。
消費税は預り金ではありません。事業者が負担する税金を価格に上乗せしているだけで、益税でも何でもありません。
うちは免税事業者だったので、お客さんから消費税はもらっていませんでした。しかし課税事業者になったからといって、値上げをするのも心苦しいものがあります。同じ思いをしている事業者は多いのではないでしょうか。
付き合いのある集荷業者も、「こんな不平等な制度はありえない。消費税8%を自分たちが負担するなら、集荷で利益などほとんどでない。玄米だけなら事業として成り立たない」とこぼしています。
軽減税率導入で複数税率だからインボイスが必要だというのであれば、対象品目を0%にするなど、減税をして解消すればいいのではないでしょうか。こんな欠陥だらけの制度は早くなくしてほしいです。
農協特例も検討しましたが、委託販売なので販売価格が農家の売り上げになり、買い取り方式よりも売り上げが増えることで、農家の税負担が増えてしまいます。
しかし免税農家には手数料という形で負担増をお願いせざるを得ません。本当にどこからでもいいから税金をむしり取る制度です。
振込手数料の取り扱いも煩雑です。振込手数料も課税取引のため、仕入税額控除を受けるには適格請求書が必要です。
買い手側が負担する場合には、金融機関の発行する適格請求書で対応できますが、売り手側が負担する場合には、(1)買い手が適格請求書を発行する(2)売り手が買い手に適格返還請求書を交付する(3)売り手が買い手に仕入明細書を交付する(4)売り手が買い手から金融機関の適格請求書と立替清算書を受け取り保存する(5)売り手が売上値引きで対応する、など対応が様々です。取引先によって対応が違えば事務処理も大変です。
インボイス導入で負担が増える一方です。
生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)は、生産者から購入者へ発行するインボイスに代わり、農協が発行する書類で仕入税額控除が認められる。
(2)卸売市場特例
出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)は、生産者から購入者へ発行するインボイスに代わり、市場が発行する書類で仕入税額控除が認められる。
(3)2割特例
(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)
2026年までの時限つき制度で、インボイス導入のために課税転換した免税事業者が対象。事前の届け出不要で、仕入額に関わらず、売上税額の2割を納付税額とできる。年(課税期間)ごとに適用するかどうか自分で選択が可能。
もともと課税事業者であっても該当期間中の課税売り上げが1千万円以下になった場合は特例の対象。
免税からインボイス登録をした場合でも課税売り上げが1千万円以上になった場合は特例の対象外。
[2023年10月]
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