農基法改定の焦点は
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そして60年に日米安保条約が改定され、軍事的・経済的にアメリカに従属することを確約。その農業版として旧農業基本法(61年)がつくられ、「アメリカで余っている小麦や大豆、飼料用穀物は日本で作らない」という穀物“安楽死”政策がスタートしました。旧農基法では、畜産も生産拡大品目にされましたが、飼料はアメリカ産トウモロコシと大豆です。
その後も攻撃は執ように繰り返されました。70〜80年代にかけて、日本の大企業による「集中豪雨」的な工業製品の輸出拡大によってアメリカの貿易赤字がふくれあがり、日米経済構造調整が本格化した84年には、中曽根首相とレーガン大統領の主導のもと、「日米諮問委員会」が“日本の農民は野菜や果実、草花を作っていればいい。穀物、大豆、牛肉の生産はアメリカにまかせて、もっと深く食料の傘の下に入れ”と要求。両首脳は「最大限の尊重」を確約しました。
その結果、小麦・大豆生産は壊滅寸前まで激減し、穀物自給率とカロリー自給率は急落しました(図4)。アメリカ食料戦略によって痛めつけられた日本農業は本格的な回復にはほど遠いのが現状です。
無責任きわまりない発言ですが、戦後最悪の食料危機のもと、「国際的な圧力と危険」はさらに強まっています。今こそアメリカの食料の傘の下から脱却し、本格的な国内増産と自給率向上に踏み出す時です。
さらに、米や麦のワラは繊維質が豊富で、これを糞尿(ふんにょう)で発酵させて堆肥にし、豊かな土壌を作ることができます。
ですから、穀物は人と動物と土にとって「主食」であるといえるでしょう。穀物を輸入に依存し、自給率29%にまで低下させている日本の政治は、とんでもない「亡国(穀)」の政治です。
海外からの物流が停止したら、世界で最も餓死者が集中する国が日本だとアメリカの大学も試算しています。
また、農学博士の篠原信氏は「食料や化石燃料の輸入がストップした場合、国内の生産力だけでは3000万人分の食料しか作れない」というシミュレーションを明らかにしています。
かつては工業製品で稼いだ貿易黒字で食料を輸入するという構図でした(図5の左の円)が、2011年以降は赤字に転落し、農産物輸入が貿易収支を上回りました。さらに2022年には貿易・サービス・所得収支の合計である経常収支が農産物輸入額に迫る(図5の右の円)までに落ち込んでいます。
世界輸出に占める日本のシェアも、ピークだった1986年の10・3%から2022年には3・0%まで低下しました。これは1960年の3・7%を下回る水準で、日本の輸出競争力は凋落(ちょうらく)の一途をたどっています。
膨大な食料輸入を続ける日本資本主義の力は、強じんでも持続可能でもありません。
[2023年7月]
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