「農民」記事データベース20230731-1563-07

農基法改定の焦点は
食料自給率の向上
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 1 自給率向上を拒否する政府

 いま農業基本法を改定する最大の焦点は増産による食料自給率向上をめざすことです。ところが農水省が5月に発表した「食料・農業・農村基本法」の見直しに向けた「中間とりまとめ」は、さまざまな「情勢の変化」をあげ、新基本法のなかで自給率指標を格下げし、それ以外の指標を掲げるべきだとしています。

 しかし、「情勢の変化」と、食料自給率が指標として不適切だということには何の関係もありません。これは低自給率から国民の目をそむけさせる詐欺的手法であり、自給率向上目標を将来的に放棄する布石といわなければなりません。

 しかも、政権本体から自給率向上を拒否する逆流が生まれています。

◆財政制度審議会の建議

 予算編成に決定的な影響力を持つ財政制度審議会の建議(2022年11月)は、国民の願いとは全く逆方向をめざして次のように述べています。

 「食料安全保障の議論が、輸入に依存している品目等の国産化による自給率の向上に主眼が置かれることには疑問を抱かざるをえない」「今後、食料自給率や備蓄の強化が殊更(ことさら)に強調された議論にならないよう十分に注意しなければならない」

◆野村農相“米加豪日80%供給”論

 野村農相は「わが国の輸入先は米国、カナダ、豪州であり、それに日本の自給率を足すと、カロリーベースで8割をまかなっている」と国会で答弁しています。これでは、まるで、アメリカなどの「同志国」と連携すれば自給率向上は必要ないといわんばかりではありませんか。

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 日本のカロリー自給率38%は先進国の中で最低であり、穀物自給率29%は世界179カ国中127位です。なぜこんなに低いのか、私たちの生活にどうかかわるのか―。

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 2 自給率向上はサボリ、“イモ尽くし”押しつけ

 (1)農水省の「不測時の食料安全保障マニュアル」

 農水省はすでに防衛・外務・経産省などと一体で、食料の有事立法体制を検討しています。それによると――

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 ◆「輸入の減少等により食料の供給が減少し、国民が最低限度必要とする熱量の供給が困難となるおそれのある極めて深刻な場合を、不測の事態のレベル2とする」

 ◆この場合、カロリーの高いイモ類の増産を行う。このために必要な面積は、以下の順序で非食用作物等の作付けを減少させることで確保する。

 (1)花、工芸作物(供給熱量がゼロ)

 (2)飼料作物(熱量効率が最も低い)

 (3)野菜・果樹(石油の消費が多い温室栽培に対しては、石油の供給を抑制する)

 (4)穀物、イモ類の生産を確保するため、燃料を割当・配給によって重点的に配分する

 (2)卵は1.5カ月に1個、肉は23日に1皿

 政府は、食料危機対策も自給率向上対策も投げ捨てたまま、食料の輸入がストップした場合、国民にはイモ尽くしの食事を強いる青写真を図のように描いています。

 牛乳は4日に1杯、卵は1・5カ月に1個、肉は23日に1皿――畜産物は“ぜいたく品”です。みそ汁も満足に飲めるかどうかわかりません。

 しかも、農地が減少しているいま、実際には、イモさえもつくれるかどうかもあやしく、輸入がストップしてからあわててイモを作っても急場をしのげません。

 現在の食料・肥料・飼料の自給率では、戦時体制=有事の際に、軍隊にも、「銃後」を守る国民にも食料供給できず、文字通り「兵糧攻め」にあい、たたかう前に飢え死にさせられてしまうことは必至です。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2023.7.31付)
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2023年7月

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