「農民」記事データベース20220411-1500-10

国連が警告
「戦後最悪の食料危機」
(3/3)

ロシアのウクライナ侵略と食料危機

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食料自給率向上に逆行
危機感ゼロの岸田政権

 小麦の自給率は15%、濃厚飼料は12%、大豆6%。ウクライナ危機のもとで、これらの増産こそが求められていますが、政府がやっていることは全く逆方向です。

 「小麦や飼料への転作・増産やめろ」

 “岸田農政”を象徴する財政審議会建議(昨年12月3日)は、次のように提案しています。

 (1)収益性が低く、補助金依存が高い作物――要するに小麦・飼料・大豆――への転作・増産をやめろ。そのため転作補助金(水田活用交付金)を打ち切れ。

 (2)農家戸数を3分の1に集約して、農地を農産物の輸出基盤に生まれ変わらせろ。

 米をつくるなと言うだけでなく、転作で麦、大豆、飼料を作る支援の交付金をカットするというのです。岸田首相の施政方針演説には「自給率向上」も「食料安全保障」もなく、輸出振興とデジタル化を強調するだけです。

 「食料有事」の時代に、危機感も国家戦略もゼロです。

 EU(欧州連合)が危機対応として飼料などの緊急増産を打ち出したのとは大違いです。

 異常に少ない日本の農業予算

 「金だけ主義」の“財務省政権”は、農業予算、とくに転作予算をカットし、軍拡にあてることを狙っています。

 しかし、日本の国民一人あたり農業予算は、アメリカ・フランスの半分、韓国の3分の1にすぎません((7))。

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 鈴木宣弘東大教授が指摘するように「世界一過保護と誤解され、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきたのが日本の農家です」。

食料自給率向上へ
政策の大転換を!

 日本農業新聞「論説」は次のように主張しています。

 「『食料有事』の時代に備え、国家戦略として総合的な食料安全保障政策――転作の在り方を含めた生産対策、飼料や肥料の国産振興、それらを支援する抜本的な価格保障――を打ち出す時だ」(3月22日)

 これは農協関係者をはじめ、多くの国民が一致する方向ではないでしょうか。

 いま求められているのは、史上最低になった食料自給率を向上させること、とくにウクライナ危機で不安定が浮き彫りになっている小麦や飼料、大豆の増産に踏み出すことです。これこそが食料自給率向上の決め手です。

 そのためには、水田活用交付金のカットなどという暴挙をやめ、飼料米を含めた飼料・小麦・大豆の増産政策に大転換し、アメリカ・EU並みの価格・所得保障を実施することが重要です。

 ウクライナ侵略をただちに中止せよ、食料危機打開・自給率向上へ政策転換を――私たちは生産から消費までの国民的共同を強く呼びかけます。

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(新聞「農民」2022.4.11付)
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2022年4月

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