「農民」記事データベース20220103-1487-08

学校給食
パンに地元産小麦、ご飯に有機米
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和歌山 和歌山市 海南市 日高川町

県産小麦の給食パンを
2市1町86校に広く提供

食料自給率向上へともに

 一昨年に始まった和歌山県産小麦を学校給食パンに提供する取り組みが、去年は生産量が10倍、学校数も2市1町の86校にまで広がりました。これは、「安全な食材を学校給食に」との思いを持つ保護者・学校栄養士・地域住民のみなさんと、食育・耕作放棄地対策に取り組む農家らが県学校給食会やSNSで知り合い、協力し合って次々と小麦畑を広げ、できた小麦粉を学校給食会が積極的に買い上げてくれた成果です。

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県産小麦100%でつくられたパン

 自ら小麦育てて子に提供しよう

 この取り組みの中心が「給食スマイルプロジェクト〜県産小麦そだて隊!〜」です。農民連食品分析センターによる学校給食のコッペパンで輸入小麦を使ったものから除草剤グリホサートが検出されたことに衝撃を受けた新日本婦人の会の会員らが、県内に麦畑がほとんどないことを知り、「それなら自分たちで小麦を育て学校給食に提供しよう」と、休耕田23アールを借り、栽培に挑戦。農機具や栽培技術(時には農作業も)は農民連会員が支援しています。

 この動きを新聞で知り、和歌山市で1戸、日高川町で2戸の農家が賛同してくれて生産が本格化しました。

 11月21日には、活動拠点近くの海南市の小学校を借りて収穫祭を開き、85人が参加しました。プロジェクトを積極的に支援してくれている奈良県の旭製粉が和歌山県産小麦でパンや菓子を焼いて持って来てくれ、参加者に配布も。活動記録の展示を見ながら交流を深めることができました。

 今期は品種を「せときらら」に統一して、面積をさらに2倍にする計画です。

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収穫祭を開催した「県産小麦そだて隊!」の人たち。中列右が貴志さん=11月21日、海南市(「しんぶん赤旗」提供)

 圃場整備をして小麦栽培広げて

 今後、多くの農家に広めていくには、国の補助金(経営所得安定対策)が必要ですが、和歌山県には小麦の産地品種銘柄も登録検査機関もないので、これらの準備もしていかなくてはなりません。

 他県は行政やJAが主導して麦作を振興しているようですが、和歌山県はそれがありません。原因を考えると、平地が少ないために果樹などの栽培に力が入り、水田の圃(ほ)場整備が遅れ、麦作などの畑作物の栽培がやりやすい暗渠(あんきょ)などの排水改良工事がほとんどされていないことにあると思います。

 しかし、休耕田も増え、中には排水の良い圃場もあるので、麦畑を広げられると思います。

 製パン業者とも懇談してともに

 日本は全国どこでも稲作が最も適しており、水田を守ることが必要ですが、同時に麦などの穀物自給率も確保しておくことは重要だと思います。

 その一方で私は、米離れを憂い、米を食べる習慣付けには「完全米飯給食を」と要求してきたものの、地元和歌山市の教育委員会は製パン業者への気兼ねから週2回のパン給食を続けています。今回の取り組みで製パン業者との懇談もして、一緒に日本の食料自給率を高める方法を考えたいと思います。

 (和歌山県農民連 貴志正幸)

(新聞「農民」2022.1.3付)
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2022年1月

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