「農民」記事データベース20220103-1487-07

学校給食
パンに地元産小麦、ご飯に有機米
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 子どもたちの健康を考えて、いま全国で学校給食に地元産の農産物を活用したり、ご飯を有機米にしたりする取り組みが広がっています。長野県と和歌山県の農民連会員生産者の喜びの声を紹介します。


長野 松川村 池田町

安全で栄養いっぱいのお米は
健康への第一歩

「とりあえずお米」と動く

 厳しい財政の中予算をねん出し

 北アルプスの麓にある長野県松川村と池田町。歴史的に食育教育が盛んな町村です。

 ここの子どもたちの給食は「池田松川学校給食センター方式」です。給食費は子ども一人当たり年間2万円の補助が予算化され、普段のご飯も松川村産の特別栽培米。財政状況が厳しい小さな町・村ですが、子どものためになんとか予算をねん出しています。

 松川村ちひろ美術館のすぐ東に有機米生産者の宮田兼任(かねとう)さんの自宅があります。宮田さんは、2020年1月に有志たちで有機農産物を学校給食で扱うための懇談会を松川村の平林明人(あきと)村長を交えて開催しました。

 2カ月1回の米を月1回に

 同時に池田町では、東京から移住してきた女性の新人議員が給食に有機米を使うよう働き掛けた結果、すぐに町は調査や講演会など準備を開始し、ほ場見学にも来ました。その結果、池田町の甕聖章(もたい・きよあき)町長は有機米の導入を決定。松川村との合意を経て20年11月から2カ月に1回実施されました。

 それから1年、更に懇談を重ね、21年11月19日の新米から毎月1回の献立をついに実現しました。毎月1回のお米は約140キログラム・1500食分になります。

 生産者は、松川村の宮田さんと池田町の矢口一成さん。2人合わせて7・5ヘクタールのほとんどがJAS有機か有機栽培米。2人とも松川村農民組合員であり、宮田さんは組合長です。また松本地域圏での有機米生産の指導的立場にあり、矢口さんは認定指導員、いずれも「池田松川稲作研究会」のベテラン会員です。

 「有機農産物を学校給食に、とりあえず米を」と動いたのが保護者、議員、若い地域おこし協力隊員、関心がある住民の皆さんであり、有志のサークル「生き物いきいき田んぼの会」です。「田んぼの会」は今後、松川村、池田町内で有機米生産者を増やし、後継者を育てる活動を全力で進めることにしています。

 そのために、(1)有機農業推進プラットフォーム開設の準備、(2)映画上映会や講演会を企画しています。

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「生き物いきいき田んぼの会」のみなさん。左から3番目が矢口さん、右から2番目が宮田さん

 安全で栄養が詰まった物こそ

 12月12日には、池田町内で「いただきます2有機給食バージョン」のオンライン上映会・交流会を開催しました。隣の大町市や安曇野市を含めて13人が集まり、会場には長野県有機農業推進室の吉田太郎室長も参加し、楽しい交流会となりました。

 また、サテライト会場も全部で50カ所を設け、そのうち海外参加がアメリカ、イギリス、ドイツからありました。長野県内からは松川町(下伊那郡)、中川村含め10カ所の参加となりました。

 オンライン交流会では池田松川給食センターへの有機米給食の取り組みも紹介し、交流会を盛り上げました。

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有機米の田んぼで生産者と消費者が一緒に生きもの調査

 新年1月21日には、「稲作研究会」が上映会と講演会を開き、吉田室長の講演も予定しています。宮田さんは言います。「私たちの身体も一つの自然としてみた場合、多種多様な微生物によって生態系が保たれ、免疫力が維持されていれば病原体に強い体にすることができます。その基本は、安全で栄養が詰まった食べものです。有機米の導入はその第一歩です」

(長野・中信農民センター穂高支部 塚田孝雄)

(新聞「農民」2022.1.3付)
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2022年1月

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