種子を企業に明け渡す
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10月26日から始まる臨時国会で、政府は種苗法改定法案の早期成立をねらっています。同法案の主な内容は、登録品種の自家増殖を「許諾制」にすることで、事実上、一律に禁止し、農家の種取り(自家増殖)の権利を著しく制限するもの。前国会では、反対世論の高まりの前に審議入りできずに継続審議になりました。
改定案のねらいと問題点を特集します。
2017年に種子法が廃止され、農業競争力強化支援法が制定されました。
種子法は、米、麦、大豆など主要食料の優良な種子を安定的に供給するために、都道府県に対して種子の生産・普及に責任をもたせる法律でした。しかし、「種子法があるから民間の参入が阻害されている」という理由で廃止されました。
農業競争力強化支援法の8条4項は「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成を促進するとともに、(国の)試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進する」と規定しています。つまり、「国や地方自治体が開発してきた種苗を民間事業者に明け渡せ」と迫っているのです。その「民間事業者」には「多国籍アグリバイオ企業」も含まれます。
種子法廃止が決まり、農業競争力強化支援法が成立した17年、農水省事務次官名の通知が11月15日付で都道府県に向けて出されました。「都道府県は…民間事業者による稲、麦類及び大豆の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う」という内容です。都道府県は民間企業の準備が整うまでは種苗事業をやりなさい、そして準備が整ったら、民間企業にそれを提供しなさい、というのです。
こうして、種子法の廃止で公共の種子をやめさせて、農業競争力強化支援法で民間がその公共の種子をもらい受け、そして、種苗法の改正でその権利を強化する、という一連の流れができました。
種苗法改定により、これまでよりもはるかにビジネス的な種子登録の動機付けが強くなるため、登録品種は増えていくことになります。そうなると、自家増殖できる種子はどんどん限られていきます。
今年3月に閣議決定された新「食料・農業・農村基本計画」によれば、政府は「日本産品の特色をアピールするため、戦略的な知的財産の活用・保護を推進する」とうたっています。政府は、種苗法改定も「育成者権」を活用しやすくするための措置だといいますが、「育成者」には「多国籍アグリバイオ企業」が含まれます。
安倍前政権の経済政策の究極の目標は「日本を外国企業が最も仕事をしやすい国にする」ことでした。菅政権もこの路線を引き継いでいます。
[2020年10月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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