「農民」記事データベース20190930-1378-06

豚コレラ

ついに関東でも発症
日本の養豚守らぬ国に憤り

群馬農民連副会長 上原 正
((株)下仁田ミート会長)

関連/ワクチン接種へ
  /ついに関東でも発症 日本の養豚守らぬ国に憤り
  /一刻も早くワクチン開始を
  /風評被害対策を万全に


 次はわが県かと
 戦々恐々の日々

 昨年9月に国内で26年ぶりに豚コレラが発生してから1年経過しましたが、依然として終息していません。岐阜県・愛知県を中心に東海・北陸地方で野生イノシシと豚に感染し、豚コレラは法定伝染病に該当するため、感染していない豚を含めてすでに13万頭以上の豚が強制的に殺処分されました。岐阜県では飼育頭数の半分以上の6万頭が殺処分され、愛知県でも6万頭を超えました。

 9月13日には埼玉県から山梨県に出荷された豚から豚コレラの陽性豚が確認され、いよいよ関東地方にまで感染が拡大しました。もうどこで感染するのか分からない状況です。群馬県は有数の畜産県であり63万頭の豚を飼育しています。次は僕の番、群馬県で発症するのかと戦々恐々としています。

 人体に影響なし
 風評被害が心配

 国は「飼養管理基準」の徹底と防護柵の設置、野生イノシシへの経口ワクチンで防げるとして、養豚関係団体の数度にわたる要請にもかかわらず、予防的ワクチン接種を認めませんでした。しかし、飼養衛生管理を徹底しているはずの岐阜県・愛知県・長野県の畜産試験場でも感染してしまいました。後手後手の国の対策は完全に失敗しました。

 豚コレラは豚とイノシシ特有のウイルス性の家畜伝染病であり、人にうつることはありません。さらに、と畜場で獣医師が一頭ごとに検査していますので感染した豚肉が流通することはなく、もし食べたとしても人体に影響はありません。「風評被害」により消費者が豚肉を食べてくれなくなるのが心配です。

 ワクチンがない
 アフリカ豚コレラ

 また、豚コレラよりもさらに恐ろしい「アフリカ豚コレラ」が中国・ベトナムや東南アジアで大流行しており、数千万頭の豚が死んだり、殺処分されたりしています。「アフリカ豚コレラ」に有効なワクチンは国外でも開発されておらず、対策の取りようがありません。入ったらもうおしまいです。

 発生国からの豚肉や加工品は輸入禁止されていますが、旅行客がこっそり手荷物などに紛れ込ませて持ち込む事例が多発しています。国は検疫探知犬を増頭していますが、全ての手荷物を検査できるわけではありません。

 すでにアフリカ豚コレラのウイルスが日本国内に入っていると考えたほうが良いかもしれません。空港や海港等での徹底した輸入検疫が必要です。

 日欧EPA(経済連携協定)、TPP11(環太平洋連携協定)が締結され2年目に入り、関税率の引き下げで輸入畜産物が増加しています。

 さらに日米貿易交渉が9月末までに署名されようとしています。日本の養豚を犠牲にしてアメリカからの輸入豚肉を増やそうと忖度(そんたく)しているかのような政府の姿勢に憤りを感じます。

(新聞「農民」2019.9.30付)
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2019年9月

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