農村と農民の権利の集大成
国連「農民の権利宣言」って?
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「小規模・家族農業守る」が世界の主流に
農民の権利宣言に含まれる主な権利
農民の定義(第1条)
小規模生産を行う農民のほか、漁業、林業、牧畜を行う人やその家族、コミュニティー、これらの産業の労働者
加盟国の義務(第2条)
国は、農民の権利に影響を及ぼし得る法律、政策、条約の適用と実施の前に、農民と誠実に協議する
女性農民の権利(第4条)
土地や資源を平等に利用する権利、自助組織や協同組合をつくる権利、融資、施設、技術を平等に利用する権利を保障
結社の自由(第9条)
農民は、労働組合、協同組合、その他の組織や結社をつくる権利、団体交渉の権利を持つ
適切な食料への権利と食料主権(第15条)
農民は自らの食料と農業制度を決定する権利を持つ。この中には、食料と農業に関する政策決定に参加する権利、文化や環境に配慮し、持続可能な方法で生産された健康によい食料への権利が含まれる。
国は、食料主権をはじめ宣言に含まれる権利を守る持続可能で公正な食料制度を促進する公共政策を定める
十分な所得や人間らしい生活の権利(第16条)
農民は、適切な水準の生活をする権利、生産手段にアクセスする権利を持つ。伝統農業を行う権利、地域を基盤とした商業を発展させる権利を持つ。国は、アグロエコロジーを含む持続可能な生産を活性化させ、産直を推進する
土地に対する権利(第17条)
農民は、土地に対する権利を持つ。権利には、慣習的土地所有・利用権を含む。国は、共有地、共同利用・管理の制度を認め保護する
種子に対する権利(第19条)
農民は、食料や農業の植物遺伝資源に関わる知識を保護する権利、自家採種の種苗を保存・利用・交換・販売する権利を持つ。国は、農民が播種(はしゅ)を行う上で最適な時期に十分な質と量の種子を手ごろな価格で利用できるようにする
生物多様性に対する権利(第20条)
国は、遺伝子組み換え生物がもたらす農民の権利への侵害を防止する
5月25日に国際フォーラム
宣言の実施に向けた第一歩
「宣言が、農民と農村で働く人々の権利と尊厳を守る各国の活動をあらゆるレベルで強化することにつながるように期待する」。農民の権利宣言の成立を受け、ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が述べました。
権利宣言を活用し、農村の暮らしを豊かにする――。焦点は「各国での実施」に移っています。
日本で求められるのは、国内に権利侵害は存在しないと強弁する政府を動かすこと。そのためには、宣言の内容を理解し、知らせ、運動を広げなければなりません。
第一歩を踏み出す絶好の機会が、5月25日に訪れます。ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議の一環として開かれる国際フォーラム「国連家族農業の10年と農民の権利宣言を考える」です。国際的な運動を主導してきたインドネシア農民組合議長のヘンリー・サラギ氏(前ビア・カンペシーナ代表)らが基調報告します。
産直運動などで世界をリードしてきた日本が、農民の権利を守る運動でも力を発揮してほしい――。日本の運動には世界の仲間からも熱い視線が注がれています。
ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域って?
東南アジア・東アジアの10カ国の13加盟組織から成るビア・カンペシーナの構成単位。農民連も所属。毎年一度、活動の総括と行動計画をたてるために地域会議を実施。今年は日本で5月21日から26日まで開催。
(新聞「農民」2019.4.22付)
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