「農民」記事データベース20181217-1340-06

結成30年の力を生かし、日米FTAストップ、
「家族農業の10年」の運動を広げ、
強く、大きい農民連を
(4/10)

農民連第23回定期大会決議(案)
2018年12月5日
農民運動全国連合会常任委員会

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3 安倍官邸農政とのたたかい

 (1)安倍官邸農政の破たんは明白

 安倍官邸農政は、規制改革推進会議に先陣を切らせながら、ブレーキのない暴走を続けてきました。それは、次のように農地改革によって創出された家族経営を支えるための枠組みの全面的な解体をねらうものでした。

 (1)農地法の解体的な骨抜き
 (2)価格保障の解体
 (3)農業協同組合つぶし
 (4)主要農作物種子法(種子法)廃止
 (5)卸売市場法改悪
 (6)8割の農家を追い出す構造改革目標

 しかし、現場を無視して強行される安倍官邸農政は大きな抵抗に直面しており、破たんは明白です。とくに種子法廃止に対しては、全都道府県が従来通り種子事業を続け、7道県が種子法に代わる種子条例を制定・検討するなど、総スカン状態です。また、農協の株式会社化や信用・共済事業の単位農協からの取り上げは進まず、構造改革目標の達成は遅々として進んでいません。

 (2)8割の農家追い出しと農協つぶし

 安倍首相は10月12日の規制改革推進会議で、性懲りもなく「岩盤のように固い規制や制度を打ち砕き、改革を進める。安倍内閣の決意は揺るぎない」とぶちあげました。官邸と規制改革推進会議が19年にねらうのは、8割の農家を追い出す構造改革の徹底と農協つぶしの推進です。

   (1)現場を無視した構造改革は進んでいない
 23年までに全農地面積の8割を担い手に集約するという目標を掲げて14年に農地バンクがスタートしましたが、農地集積が前年を上回って進んだのは1年限りで、年間14万ヘクタールの集積目標に対し、実績は4万ヘクタール、担い手への農地集積率は80%どころか55%にすぎません。

 農地集積率が制度スタート時の50%を超えているのは13道県にすぎず、27都府県が40%未満です。その多くは、イノシシやシカなどの獣害と悪戦苦闘しながら中山間地農業をなんとか維持している地域です。わずかばかりの補助金や小手先の制度改革で農地が動くという事態ではなくなっているといわなければなりません。

   (2)農協つぶしの仕上げをねらう
 「農協改革」のねらいは(ア)農協の信用・共済マネーを内外の巨大企業が握る、(イ)共同販売を崩して農産物を安く買いたたき、共同購入を崩して生産資材価格をつり上げる、(ウ)農協と准組合員を切り離し、(エ)農協がつぶれるのを待って企業が参入することにあります。

 このねらいを貫くために、官邸・規制改革推進会議は16年11月に(ア)信用事業を営む単位農協を3年間で半減させる、(イ)全農に対し、「1年以内」という期限を区切って、委託販売から全量買取販売への転換と資材共同購入事業からの撤退を迫るという極端な要求をぶつけましたが、さすがに反対にあい、最終的に年限は消えました。

 しかし、これで終わったわけではありません。全農・農協系統に「自己改革」を強要する「農協改革集中推進期間」が終わる19年5月に成果を点検して、いよいよ本格的な農協つぶしに乗り出す――これが官邸・規制改革推進会議の戦略です。

 とくに問題になるのは単位農協から信用(金融)事業を取り上げて農林中金の「代理店」にすることと、准組合員の貯金・購買などの利用を規制することです。さらに、全農(全国農業協同組合連合会)・農協の株式会社化のねらいも執ようです。

 現在、単位農協の平均的な部門別損益は、信用・共済が6・2億円の利益を生んでいる一方、営農指導を含む経済事業は2・2億円の損失になっており、信用・共済事業の利益で経済事業が行われて「総合農協」が維持されています。また、農協組合員のうち准組合員が58%を占めています。代理店化による手数料は現在の運用利率の半分程度になる見込みです。加えて、准組合員の貯金などの利用が仮に2分の1に規制されれば、ほとんどの農協の経営は成り立たなくなります。

 (3)安倍官邸農政から食糧主権・家族経営を基本にした農政へ

   (1)企業の農地支配を許さない
 官邸農政がねらう「特区」の全国化、農業生産法人の要件緩和など、企業の農地支配を許さないたたかいに全力をあげます。

   (2)家族経営の協同組合を守る地域での共同
 家族経営の協同組合である農協の息の根を止める攻撃に立ち向かいましょう。

 農民連、全農協労連、全労連などが呼びかけた農協改革押しつけに反対するネットワークを復活させるとともに、地域の農協、自治体、商工会、生協、消費者、地域住民など、地域ぐるみの共同を発展させて、農協解体攻撃をはね返しましょう。

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2019年から始まる「家族農業の10年」へ、行動する千葉県食健連

   (3)「戸別所得補償制度」の復活など、価格保障を求める運動
 「農業者戸別所得補償制度」の復活を求める運動と署名を進めます。戸別所得補償制度の復活は野党と農民の共通の要求であり、畜産経営安定対策(マルキン)の法制化は、野党がすでに共同提案しています。価格保障・所得補償の復活・充実を参議院選挙での国民と野党の共同・野党共闘の足がかりにすることを呼びかけます。

   (4)安倍官邸農政から自給率向上、食糧主権・家族農業を基本にした農政へ
 食料自給率が38%で、世界人口の1・8%を占めるにすぎない日本が、世界に出回る食料の5〜16%を買いあさっている状態から脱却するどころか、「攻めの農業」と称して、わずかばかりの農産物輸出を拡大する一方で、自給率をさらに引き下げるのは、食糧主権に敵対するものです。食糧主権は世界の全ての人が安全な食糧を得る権利であり、「農民の権利宣言」に盛り込まれました。

 安倍官邸農政から自給率向上、食糧主権・家族農業を基本にした農政へ――私たちは歴史と世界の大道を進みます。

   (5)大規模な人も小規模な人も、集落営農も法人経営も――多様な人々と団結・協力して
 いま、日本は大規模農家から小規模農家、集落営農、法人、あるいは法人に雇用される後継者など、多様な農業経営が存在しますが、圧倒的多数は家族経営か、それを補完する経営です。大規模な人も小規模な人も、集落営農も法人経営も――私たちは、多様な人々と団結・協力しあって、農と食、地域を守るために奮闘します。

4 家族農業尊重は世界の流れ――「家族農業の10年」を地域から広げよう

 (1)「家族農業の10年」と「農民の権利宣言」――大きく変わる世界の流れ

 国連は19年から28年を「家族農業の10年」とするとともに、18年11月20日に「農民の権利宣言」(小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言)を3分の2以上の賛成で採択しました。農地・水・種子に対する農民の権利と食糧主権を高らかにうたいあげた「宣言」に、日本政府は棄権、アメリカは反対しました。

 国連と国際社会が、「家族農業の10年」と「農民の権利宣言」を同時にとりくむことになったのは、価値観(パラダイム)の大きな転換であり、家族経営・小規模農民の再評価と尊重が世界の大きなうねりとなっていることを示すものです。

 国連決議は、「世界の食料生産の80%以上を担う家族農業の重要性」に光をあて、環境と生物多様性を保全するうえで重要な役割を果たしていることを強調しています。

   (1)なぜ、こういう転換が起きたのか?
 21世紀初めまで、世界の農業・食糧政策の流れは、家族農業を“時代遅れ”と決めつける一方、農業を工業化・企業化し、農薬と化学肥料、石油を多用した「効率的」生産に主眼を置いてきました。

 その結果、巨大アグリビジネス(農業・食料企業)の農と食に対する支配が進み、遺伝子組み換え食品や農薬・ホルモン剤漬け食品の氾濫(はんらん)など、食をめぐる不安は頂点に達しています。WTOが農産物貿易自由化を推し進めてきたことが、こういう流れに拍車をかけてきました。

 07〜08年に世界的な食糧危機と経済危機が起きた後、国際社会では「持続可能性」が大きなキーワードになり、国連は「国際家族農業年」(14年)、「持続可能な開発目標」(SDGs、15年)を次々にうちだしました。

 今なお世界中で8億2100万人が飢餓に苦しんでおり、状況は10年前に逆戻りしています。貧困と飢餓の根絶は、17項目の「持続可能な開発目標」のうちの第1、第2の目標です。国際社会は、家族農業を守り発展させることを、持続可能な社会づくりに向けた国際的なとりくみの核心とみているのです。

   (2)なぜ家族農業が再評価されているのか?
 日本国民は長年にわたって、日本の農家の平均規模が世界に比べて極めて小さく、大規模な農業に対して競争力がはるかに劣るとすりこまれてきました。しかし、国連食糧農業機関(FAO)は世界88カ国の調査で、農家が耕す農地の規模が1ヘクタール未満72%、2ヘクタール未満を含めると84%であり、世界の大多数が小規模農業であることを明らかにしました。日本の農家の平均規模は2・98ヘクタールです。

(新聞「農民」2018.12.17付)
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2018年12月

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