結成30年の力を生かし、日米FTAストップ、
「家族農業の10年」の運動を広げ、
強く、大きい農民連を
(3/10)
農民連第23回定期大会決議(案)
2018年12月5日
農民運動全国連合会常任委員会
(1)日本の食と農壊滅の政府試算を思い起こそう
安倍政権は15年12月に「影響が出ないように対策をとるから、影響は出ない」と強弁し、農産物の生産減少額が800〜1600億円にとどまるという過小試算を示してTPP協定批准を強行しました。
しかし、実際に、自由化推進が日本の食と農にどういう打撃を与えるのか、過去の政府の試算が雄弁に物語っています。10年11月、農水省は、農産物輸入が自由化された場合、食料自給率(カロリー)が39%から14%に落ち込み、米生産は90%減などという惨たんたる試算を公表しました(図表2)。
(2)日米合意はまぎれもない日米FTAそのものだ
その最悪の現れが、日米FTA交渉入りです。18年9月の日米共同声明について、安倍首相は「日米物品貿易協定(TAG)の交渉入りで合意したが、これは日米FTAとは全く異なる」と強弁しました。しかし、共同声明には「TAG」などという言葉はなく、「物品とサービスなどを含む日米貿易交渉」、つまり日米FTAそのものであることが、トランプ政権側の言明で次々に明らかになりました。
これは、自動車関税大幅引き上げを脅しの武器に使ったトランプ政権の凶暴な圧力に屈し、自動車業界の利益を守る見返りに、農業と主権、国民生活を貢ぎ物として差し出す戦後最悪の売国的譲歩です。
安倍政権は、(ア)農産物についてはTPP以上に譲歩しない、(イ)交渉中は自動車関税を引き上げないことをアメリカ側に認めさせたと、「手柄」を誇っていますが、これもでまかせにすぎません。
実際、トランプ大統領は「日米FTA交渉を開始することで合意した。日本車に莫大な関税をかけると言ったら、日本側は『すぐ交渉を始めたい』と言ってきた」「日本が農産物の市場を開放しない場合、日本車に20%の関税をかける」と、言いたい放題です。農務長官も「アメリカの目標は原則、TPP以上だ」と公言しています。
(3)TPP+日欧EPA水準でも大問題、しかもこれにとどまる保証は何もない
共同声明では、「農林水産品については、日本の過去の経済連携協定での譲歩を最大限とする」と日本政府が主張し、アメリカが「尊重する」と表明したことになっています。しかし、これは日本の農と食を守る保証には絶対になりません。
第1に「日本の過去の経済連携協定」つまりTPPと日欧EPAは、両方とも最悪の自由化協定です。TPPは、アメリカに7万トンの米輸入拡大を差し出し、牛肉・豚肉関税を76〜90%引き下げ、日欧EPAはこれにソフトチーズとワインなどの関税撤廃を加えています(図表3)。交渉に入る前に、最悪の自由化協定の水準まで譲歩することを一方的に誓約したのが実態です。
第2に「TPPでは不満だ」といって脱退したトランプ政権は、日米FTAで「TPP+日欧EPA以上」を求め、言うことを聞かなければ自動車関税引き上げで脅すことを公言しています。しかも、トランプ政権がしかけた貿易戦争によって、中国への農産物輸出は大きく落ち込む見通しであり、そのはけ口を日本に向ける可能性が強いといわなければなりません。
日本の輸入農産物のうち、アメリカ産の比率は10%前後落ち込んでいます(図表4)。トランプ政権が日本に、他国からの輸入と国内生産を減らしてでも輸入拡大を迫る危険性、とくに飼料米生産への支援をやめ、トウモロコシ輸入を増やすよう要求する危険性があります。また、日米FTA交渉では、アメリカがTPP交渉で求めていた15〜20万トンの米輸入枠を要求する危険性も強いといわねばなりません。
(4)日米FTAなど総自由化体制の影響は医療・食の安全など国民生活全体に及ぶ
共同声明は「早期に成果が生じる可能性のある物品、サービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」としています。この「早期に成果が生じうる交渉」で、標的にされる可能性が強いのは、TPP12での日米政府間交換書簡での対米約束です。
とくに危ないのは医薬品・医療です。トランプ大統領は、日本などが「アメリカ企業に対し、薬を不当に安く売るよう強要している」と述べ、通商交渉を通じて、薬価引き上げを求める方針を示しています。「薬価見直しも日本の市場開放の本丸と位置づけているフシがある」とも伝えられており、TPP反対運動のときのように、医療・食の安全・地域経済・農業など、広範な国民的ネットワークで日米FTA反対の運動にもりあげることが重要です。
(2)TPP反対を上回る運動で、日米FTA・総自由化ノーのたたかいを
(1)野党と国民の共同の機運と条件の広がり
TPP反対の運動では、野党が一致して反対をかかげ、戦争法・憲法改悪反対と並んで、野党と国民的な運動の共同・連帯は戦後史上空前の規模に達しました。
いま、日米FTAをめぐる安倍政権のウソとゴマカシに対する怒りは強く、TPP反対を上回る運動に広がる条件があります。
同時に、克服すべき課題が2つあります。
一つはJAグループの動向です。“TPPに反対するような農協はつぶしてしまえ”という農協解体攻撃の中で、全国農業協同組合中央会(全中)は日米FTAに対する反対運動に後ろ向きです。
しかし、日本農業新聞の農政モニター調査などによっても、単位農協や農家の安倍農政に対する不満と怒りは渦巻いています。国連「家族農業の10年」の運動とも結合し、組合員や単位農協幹部との対話・共同を強化することが重要です。
もう一つは国民的な共同と連帯です。日米FTAの標的は農業だけではありません。TPPが標的にした医療、食の安全、地域経済など、国民生活と地域、日本の主権にかかわる広範な問題がねらわれています。全国・県・地域のTPPネットワークの活動を再開し、学習会やシンポジウム、集会をTPPのときを上回る規模で開きましょう。
(2)学習と宣伝を強化しよう
TPPはTPP11、日米FTAと姿を変えましたが、本質は共通です。私たちは、TPP反対運動で総自由化がもたらす害毒について学習を深めた経験があり、ブックレットや書籍も種類豊富にあります。もう一度学習しましょう。農民連本部としても、今後新しい情勢に応じたビラやブックレットを発行します。
(3)日米FTA・総自由化を地方選、参院選の最大の争点に 日米FTA反対で安倍政権を倒そう
日米FTAでの欺まんと国民愚ろうに加えて、安倍政権は憲法改悪と消費税大増税を打ち出し、国民への挑戦をむき出しにしています。これは安倍政治の行き詰まりともろさの現れです。国民的な運動の力、野党と国民の共闘の力で、日米FTA・総自由化反対を地方選、参院選の最大の争点に押し上げ、破たんした安倍政治を終わらせましょう。農民連はその先頭に立ちましょう。
(新聞「農民」2018.12.17付)
|