安倍政権
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スーパーの店頭に並ぶアメリカ産牛肉 |
2017年2月の総理訪米も11月の大統領訪日も日本メディアは「大成功」と持ち上げたが、米国では「Flattery(ごますり・へつらい・従属)」外交と評された(タイム誌など)。2月の訪米時には日米経済対話をわざわざ日本から提案し、共同声明には日米FTAが選択肢と明記し、早々と日米FTAへのレールは敷かれた。先のトランプ大統領の来日時にも共同会見では明示されなかったが、それに先立つ駐日米大使公邸での日米の経済関係者を前にした大統領の演説では日米FTAへの強い意思表示があった。
(注=編集部=)ハガティ米駐日大使は、11月の日米首脳会談で日米FTAについて話し合われたことを明言している。
例えば、BSE(狂牛病)に対応した米国産牛の月齢制限をTPPの事前交渉で20カ月齢から30カ月齢まで緩めたが、さらに、国民を欺いて、米国から全面撤廃を求められたら即座に対応できるよう食品安全委員会は1年以上前に準備を整えてスタンバイしている。
情けない話だが、米国にはTPP以上を差し出す準備はできているから、日米FTAと当面のTPP11は矛盾しない。いずれも米国への従属アピールだ。米国内のグローバル企業と結託する政治家は、米国民の声とは反対に、今でも「お友達」企業のもうけのためのTPP型ルールをアジア太平洋地域に広げたいという思いが変わらないから、そういう米国のTPP推進勢力に対して、日本が「TPPの灯を消さない」努力を続けているところを見せることも重要な米国へのメッセージだ。
「米国に迫られて、いやいや認めた項目なので本当は外したい」という凍結要求が60項目も出たこと自体、TPPがいかに問題が多いかの証明とも言えるが、ならば米国離脱で削除すればいいのに、米国の復帰待ちで最終的には20項目ほどを凍結し、否定したい項目なのに米国が戻れば復活させるとは、どこまで米国に配慮しなくてはならないのか、理解に苦しむ。
ずるずると米国の要求に応え続ける政治・外交姿勢から脱却できない限り問題は永続する。
バターと脱脂粉乳の生乳換算で7万トンのTPP枠が設定されているが、そのうち米国分が3万トンと想定されていたとすれば、米国が怒って米国にもFTAで少なくとも3万トンの輸入枠を作れということになるのは必定で、枠は10万トンに拡大する。
かつ、上述のとおり、すでに米国がTPPも不十分としてTPP以上を求める姿勢を強めていることから、米国の要求は3万トンにとどまらないだろう。
結果的に日本の自由化度は全体としてTPP12より間違いなく高まり、国内農業の打撃は大きくなる。
ただでさえ設定量が大きすぎて実効性がないと評されていた牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限)の発動基準数量も未改定だから、TPP11の国は、米国抜きで、ほぼ制限なく日本に輸出できる。
TPPでは米国の強いハード系チーズ(チェダーやゴーダ)を関税撤廃し、ソフト系(モッツァレラやカマンベール)は守ったと言ったが、日欧EPAではEUが強いソフト系の関税撤廃を求められ、今度はソフト系も差し出してしまい、結局、全面的自由化になってしまったという流れも、いかにも場当たり的で戦略性がない証左だ。
TPPでもEU・カナダFTAでも、国民の基礎食料は死守するとして乳製品の関税を死守したカナダを少しは見習うべきではなかろうか。見せかけの成果主義では国民の命は守れない。
[2017年12月]
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