「農民」記事データベース20170918-1279-05

政府は漁民の声を聞け!

沿岸漁業フォーラムから

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クロマグロ漁獲規制
長崎・対馬

大中型巻き網漁こそ規制強化を

対馬市引縄漁業連絡協議会会長
宇津井千可志さん

 私の住む対馬は、対馬暖流と日本海流がぶつかり合い、島周囲には豊富なプランクトンが発生し、昔から多くの魚類、イカ類などの産卵場や育成場が無数に点在しています。

 2014年からクロマグロの資源管理が始まりましたが、対馬の漁民は、マグロ資源の減少の大きな要因は、大中型巻き網漁の無秩序な大量漁獲であり、資源回復には巻き網漁の操業を2〜3年中止すればよいと考えています。

 沿岸漁民も、資源保護には積極的に賛成します。しかし現在、沿岸漁民のマグロ漁業の承認船は全国で2万5000隻おり、漁獲規制を1隻あたりにすると年間でわずか80キロ弱です。この水揚げで、どうやって生活できるでしょうか。

 私たち対馬の引き縄漁民は昔からヨコワ(クロマグロの0歳魚)漁を中心に生計を立て、かつて多い日には1トン以上のヨコワを水揚げし、大漁旗を掲げて帰港したことも多々ありました。

 しかし、1989年頃には、大中型巻き網船が1回操業すると、沿岸漁民は1〜2週間、漁がなくなるという事態が発生し、それが2週間、3週間、4週間と長くなりました。しかもヨコワだけでなく、ブリ、アジ、サバにも同様の状況が起こっています。

 対馬では3年前から冬と夏、各1カ月間、大中型巻き網の操業が自粛されるようになり、その成果として、昨年と今年は数年ぶりに多くのヨコワが集まり、イカや小魚を食いつくす、漁具を壊すなどの被害すら出ています。しかし対馬の漁船の1隻当たりの漁獲配分量は年間370キロで、現状では半日程度の操業で割当量に達してしまい、漁ができません。

 水産庁には、この現状を知らせ、対馬の沿岸漁民のための所得対策を要望しています。


カツオ大不漁
和歌山

沿岸漁民は消滅の危機

和歌山東漁業協同組合副組合長
杉本武雄さん

 和歌山県紀南地方では、春から夏にかけて、10トン未満の小型船によるカツオの引き縄漁業(ケンケン漁)と、竿(さお)釣り漁業が行われています。カツオは水揚げ量、水揚げ額、従事者数が多く、重要な漁種です。また地元で水揚げされたカツオは、町おこしや観光にも利用されるなど、地域経済にとっても不可欠なものとなっています。

 しかし、近年、カツオの紀州沖への来遊量が激減。2004年から水揚げ量が大きく減少するなかで、14年、15年の大不漁が起こりました。今年も過去2番目の大不漁となり、4年連続で大不漁が続いています。

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和歌山・杉本さん発表から

 自分の漁師としての経験からも、カツオが釣れなくなったのは1990年代に入ってからで、年々、カツオの群れが小さくなっています。カツオの適温である19〜20度の海域に当たっても釣れない。とくにここ10年くらい、ひどくなっています。

 なかでも西日本ルートからの来遊量が減少しており、現状から見て、不漁原因は「熱帯域での大規模巻き網漁による乱獲」で資源が減少している以外に考えられません。今、国を挙げてこの熱帯域の大規模巻き網の漁獲規制に取り組まなければ、高齢者がほとんどを占める紀南の小規模漁業は、消滅してしまいます。

 漁業の大半をしめる私たち小規模漁業を守ることこそが、現在政府が進めている「地域再生」「地方創生」につながります。今の大不漁の実態と深刻さについて、小規模漁業者みずからが大きな声をあげるべきでしょう。そのためには、各地の引き縄漁業者の結束が大事だと思います。


クロマグロ漁獲規制
千葉

引き縄漁は資源にやさしい

千葉県沿岸小型漁船漁協副組合長
堀川宣明さん

 現在、マグロの資源は危機的状況です。大中型巻き網漁による乱獲が一番の原因です。マグロの規制について、国は巻き網漁には緩い規制、沿岸小型漁船には厳しすぎる規制を課しています。小規模な生産者に、所得保障もなしに生活が困窮する規制をかけることは、漁業をやめろということです。

 巻き網漁は、水揚げの95%が産卵期に集中しており、マグロに産卵させることなく乱獲しています。私たち沿岸漁民は、引き縄で一尾ずつ釣りあげます。しかし巻き網は1台何億円もするソナーで、何キロも先の魚群を見つけ、大きな網で一網打尽にします。こんな漁業と零細漁民が同じ扱いでは、私たちは生きていけません。

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引き縄(釣り)漁
 
大中型巻き網漁

 私たちはマグロを増やすことに反対しているのではありません。資源管理なしでは未来の漁業は成り立ちません。しかしいま、メジ(小型クロマグロ)の引き縄漁だけで生活してきた漁師が、船を解体して辞めるということが増えています。どうか、この浜の現状を知っていただき、豊かな海を取り戻すため、力を貸してください。


クロマグロ漁獲規制
千葉

廃業し解体する船も

千葉県沿岸小型漁船漁協副組合長
本吉政吉さん

 今年1月下旬、水産庁より千葉県にメジ漁の操業自粛要請が下され、私たち沿岸小型漁船は、納得はしていないが資源管理のためにと、禁漁に協力しました。カツオやカジキの引き縄にメジが混獲されても水揚げしないなど、がまんにがまんを重ね、耐えている小型船漁業者に早急な支援策をと、2月には、水産庁長官にも陳情。

 しかしその後も国からの支援策はなく、泣く泣く漁師を廃業し、解体した船が出てきています。

 その一人は、過去には青年部員相手にメジの引き縄漁の講師をつとめたほどの漁師でしたが、「メジが捕れないなら船を持っていても仕方ない。従来通りの操業ができたら、解体することもなかった」と心の内を話してくれました。

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漁獲規制で廃業に追いこまれ、解体されるベテラン漁師の船(今年7月)(写真は千葉県沿岸小型漁船漁協の提供)

 大中型巻き網による産卵魚の漁獲や大目流し網では、混獲したメジを水揚げしています。このような状況のなかで、小型船の漁師が自粛要請を守るために船を解体することなど、あってはならないことだと思います。

(新聞「農民」2017.9.18付)
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2017年9月

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