JCFU沿岸漁民フォーラム
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関連/家族経営こそ日本漁業の主役 /亡国の漁業権開放論 /政府は漁民の声を聞け! |
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魚市場に魚を水揚げしようと入港する漁船(静岡県伊東市、「日本人と魚」から) |
しかし今、これまで農協・農業改革をごり押ししてきた政府の「規制改革推進会議」が、「漁業権を民間に開放する」という議論を今年5月から始めました。
フォーラムでは、同会議の漁業権開放論について、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が「亡国の漁業権開放論〜資源・地域・国土の崩壊」と題して、講演しました。
「三重県志摩半島の漁村の出身者、当事者の一人として、漁業権の開放には強い違和感を抱く」と切り出した鈴木教授。「漁業権は、海を協調して、立体的、複層的に利用している。漁業は企業間の競争、対立ではなく、協調の精神、共同体的な論理で成り立ち、貴重な資源を上手に利用している。その根幹が漁協による漁業権管理だ」と指摘。「規制撤廃して個々が自己利益を追求すれば、結果的に社会全体の利益が大きくなるという論理を、共有資源に適用するのは論外だ」と、強く批判し、「全国の漁村の地域コミュニティーや、国土・国境を守るうえからも漁業権の開放は容認しがたい」と述べました。
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築地女将(おかみ)さん会の皆さんも、漁業フォーラムにかけつけました |
「よみがえれ!有明訴訟」弁護団の堀良一弁護士は、「宝の海」と呼ばれた九州西部の有明海が、諫早湾干拓事業によって水質汚染と干潟の喪失、そして深刻な漁業被害に見舞われ、開門を求めて裁判に訴えた漁民のたたかいを報告。
福島大学の林薫平特任准教授と、福島県農民連に加盟する岩子漁業生産組合の遠藤友幸さんは、原発事故後の福島の漁業と汚染水問題について報告しました。遠藤さんは、「アサリは去年から、ノリは今年から試験操業が始まった。しかしノリは今でも基準値以下だが検出限界以下とはならない。漁家の高齢化が深刻ななかで、消費者の信頼に応えるような出荷管理をどう実現するかが、大きな悩みとなっている」と、率直に語りました。
宮城県からは「復旧・復興支援みやぎ県民センター」の綱島不二雄さんが、被災者置き去り、大規模土木工事一辺倒の復興の現状を報告。水産特区を利用して漁業者グループと水産会社の合同会社に漁業権が許可されたものの、社員(漁業者)の退職や赤字経営が指摘されるなど、問題が噴出している事例を紹介し、「特区という全国の漁業権取りあげ拡大に向けた“小さな穴”をふさぐよう、がんばっている」と話しました。
弁護士の澤藤大河さんは、岩手県の小型漁船漁業者100人がサケの刺し網漁の許可を求めて県を訴えた「浜の一揆訴訟」を報告しました。澤藤さんは、本来、大資本や国政と対峙(たいじ)して零細漁民を守るべき漁協が、岩手県では県の許可のもとで定置網によるサケ漁の漁業権を独占している実態を告発。漁業権を定めた漁業法の第1条に、「漁業の民主化をはかることを目的とする」とあることにも触れながら、「漁協・漁業権の二面性を見きわめなければならない。漁民のための漁協、漁民の生業と共存してこその漁業権という大原則に徹してこそ、その正当性が発揮できる」と訴えました。
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漁の準備に余念のない岩手県三陸漁業生産組合の滝澤英喜さん。こうした小規模漁業者が日本の水産業を支えています |
クロマグロの漁獲規制と沿岸漁民の窮状についても各地から報告が相次ぎました。長崎県対馬市引き縄漁業協議会の宇津井千可志さん、千葉県沿岸小型漁船漁協の堀川宣明さんと本吉政吉さん、北海道留萌海区調整委員の熄シ幸彦さんが登壇し、魚を取って生活している漁師が魚をとれず、廃業に追い込まれている現状を生々しく語り、「資源回復は賛成。しかし小規模沿岸漁民は漁獲規制の対象から外すべき。規制するなら減収の補償をしてほしい」と、訴えました。
[2017年9月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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