「農民」記事データベース20151214-1194-08

TPPでどうなる食の安全
(2/3)

関連/遺伝子組み換え食品の表示は?
  /安全審査を省略・簡略化
  /TPPが安全無視して後押し


食品表示基準に他国の干渉も

安全審査を省略・簡略化

食の安全・監視市民委員会運営委員
食品表示を考える市民ネットワーク副代表
山浦康明さん

画像  日本政府は「TPP協定概要」を公表しましたが、それは都合の悪い点をさらっと流すか、あるいは隠しているなど、極めて欺まん的です。英語の原文にでてくる新しい制度についての説明は一切ありません。ここにもTPPの秘密主義があらわれています。

 食の安全・監視市民委員会は11月26日、政府に対して、TPP協定案の日本語での公開と食の安全上の懸念事項への公開質問状を提出しました。引き続き、協定案の分析を進め、さらに追及していきます。

 関与できる仕組みが

 遺伝子組み換え食品の安全性については、協定案第7章「衛生植物検疫(SPS)措置」の項目で、懸念がある場合でも、予防原則を排してリスク分析手法にのっとり厳密な科学的証拠を出す

必要がある、とされます。安全性審査の評価手続きに海外の企業が関与する恐れもあります。

 第8章「貿易の技術的障害(TBT)措置」のなかで「透明性の確保」との表現がありますが、ここには各国の食品表示基準の策定に海外の利害関係者が関与できる仕組みが導入されているのではないか危惧されます。

 これは、各国の食品添加物、食品表示の基準やルールが貿易の障害にならないようにするという目的が重視されているからです。たとえば、日本が強制規定(製品の特質や生産工程などについての規格を法令で義務づけるもの)、任意規定(法令で義務づけないもの)、これらの規格を満たしているかどうかを評価する「適合性評価手続き」の導入などのさまざまなルールを策定しようとする際に、他の国(たとえば米国)の利害関係者を検討に参加させなければならず、また、日本が新たな規定を実施する60日前までに相手国の利害関係者が意見を述べる機会を与えることなども盛り込まれています。

 今後、日本が厳しい遺伝子組み換え食品の表示をしようとしても、米国の事業者からの反対意見で、表示ができなくなる恐れもあります。

 多国籍企業の訴訟も

 また、日本政府の「概要」でも、各国の代表で構成されるTBT委員会や作業部会を設け、ルールの設定や見直しなどを行うとしています。この委員会や作業部会には業界代表なども関与できることになるのではないでしょうか。

 さらに、TPPに盛り込まれているISD(投資家対国家の紛争解決)条項により、モンサント社などの多国籍企業が、食品表示で自社の商品が売れないとして訴訟に訴える可能性もあります。

 TPP協定以前に、TPP発効を見越して既成事実化が進められているものもあります。それは、食品添加物です。国際汎用(はんよう)添加物といって、国際的に認められている添加物を日本も早く認めなさいという要求です。TPPの前倒しで日本政府が、食の安全そっちのけで安全性審査を簡略化して、添加物の認可作業を進めています。こうして表示義務のない遺伝子組み換え添加物の承認が進んでいるのです。

(新聞「農民」2015.12.14付)
ライン

2015年12月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2015, 農民運動全国連合会