「農民」記事データベース20151214-1194-07

TPPでどうなる食の安全
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関連/遺伝子組み換え食品の表示は?
  /安全審査を省略・簡略化
  /TPPが安全無視して後押し

 TPP「大筋合意」を受けて、食の安全はどうなるのか、国民は大きな不安を抱えています。政府は、10月5日に発表した「TPP協定の概要」で、「日本の食品の安全が脅かされることはない」「遺伝子組み換え表示を含め、食品の表示要件に関する日本の制度の変更が必要となる規定は設けられていない」とうたっています。本当はどうなのか? 遺伝子組み換え食品の表示問題を中心に問題点を考えてみます。


遺伝子組み換え食品の表示は?

 消費者の要求にほど遠い表示

 日本で1996年に遺伝子組み換え作物の輸入が始まってから20年。当初、「遺伝子組み換え食品」を示す表示はまったくありませんでしたが、表示を求める消費者の運動が広がり、2001年から、遺伝子組み換え食品の表示が始まりました。しかし、その表示は、消費者が求めたものとはほど遠い企業寄りのものでした。

 15年4月に新しく「食品表示法」が施行されましたが、遺伝子組み換え食品に関しては見直しが行われませんでした。

 日本の遺伝子組み換え表示制度の問題をみてみると……。

 日本が輸入を許可している遺伝子組み換え作物は、とうもろこし、大豆、ナタネ、綿実、じゃがいも、てんさい、アルファルファ、パパイヤの8種類です。そのうち、食品として主に流通しているのは、とうもろこし、大豆、なたね、綿実の4種類のみです。とうもろこしは、米の消費量の2倍近くもの量を輸入しており、その8割以上が遺伝子組み換えであると推測されます。日本は世界最大の遺伝子組み換え食品輸入国です。

 日本で、遺伝子組み換えの表示義務のある食品とは何か?

 大豆では、豆腐、納豆、豆乳、みそ、そして油揚げなどの豆腐派生製品。とうもろこしでは、ポップコーンその他のコーンスナック菓子、コーン缶など。表示義務のある食品で「遺伝子組み換え」のものは、実際にはほとんど流通していないと思われます。

 原材料の4番目以下は義務なし

 一方、組み換えられたDNAとそれによって生成したタンパク質が含まれない食品には表示義務はありません。

 具体的には、油、ショートニング、マーガリン、マヨネーズなどの油製品。果糖、ぶどう糖、液糖などの糖類や水あめ、みりん風調味料などの甘味料類。しょうゆ、醸造酢、たんぱく加水分解物などの調味料類。そのほかにも、コーンフレーク、醸造用アルコール、デキストリン(増粘剤等に使う多糖類)などには表示義務がないとされています。

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「遺伝子組み換えでない」の表示ですが…

 その理由を政府は「組み換えられたDNAやそれによって生成したタンパク質を検出できなければ、検査しても遺伝子組み換えかどうかわからないから」と説明します。しかし、本当は原料の流通経路の証拠を残すようにし、それを調査すれば確認できるはずです。

 また、現在の制度は、使われている原料の重量で上位3品目(かつ全重量の5%以上)にしか表示義務がありません。

 たとえば、コーンスターチには本来は表示義務がありますが、原材料の4番目以降であれば表示義務がありません(「でんぷん」と書かれている場合、多くは遺伝子組み換えとうもろこしからつくられたコーンスターチを指しています)。

 さらに、問題なのは、全重量の5%以下の「意図しない混入」は、表示義務がないことです。輸送の過程で、たとえばコンテナの移し替えなどの際に、遺伝子組み換えのものが少々混じってしまっても、それが5%以下であれば「遺伝子組み換えでない」と表示することができます。

 全食品・飼料に義務があるEU

 家畜飼料にも表示義務はありません。

 日本にはたくさんの遺伝子組み換え作物が輸入されていますが、その最大の用途は家畜飼料です。とうもろこしの4分の3は飼料となり、大豆・ナタネ・綿実の油搾りかすも、飼料として利用されています。また、アルファルファの種と、てんさいの種も飼料用に輸入されています。

 EU(欧州連合)では、遺伝子組み換え作物を使用したすべての食品、さらに飼料にも表示義務があります。これは食品の流通経路を追跡調査できるトレーサビリティ法があるためです。意図しない混入の許容率は0・9%です。

(新聞「農民」2015.12.14付)
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2015年12月

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