乳価引き上げは待ったなし!
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42頭の搾乳牛を飼う本田さん、「わが家は粗飼料(※)を比較的たくさん自前でつくっているから、なんとかやっているけど、経営が大変なのはみんなと同じだよ」と豊さんは言います。
濃厚飼料(※)の高騰が始まったのは、2008年の穀物危機からでした。ここ2年ほどはさらなる高騰はないものの、約4割も値上がりしたまま高止まりしています。
「でも、濃厚飼料以上にもっと高騰していて大変なのが、輸入乾草なんだよ」と豊さんは強調します。「採草地の少ない都府県の酪農家はどうしても輸入乾草を使わざるを得ない。それに、夏の炎天下でやる粗飼料づくりの作業はすごく重労働。今はどの酪農家も高齢化して、10年くらい前までは自分でやっていた乾草作りもできなくなって、購入飼料が増えているのも実態」と言います。
本田さんの牧場では、近くの酪農家と共同で鬼怒川の河川敷で乾草作りをしており、乳価に占める飼料購入費の割合を4割程度に低く抑えられています。「これを全部購入飼料にしたら、6割はエサ代に消えてしまう。よっぽど搾乳成績が良くないと、生活できない」と後継者の誠さんが言います。
牛舎を見回る誠さん |
経費は飼料代だけではありません。若い搾乳牛の市場価格も高騰しています。ホルスタインに和牛の精子を人工授精すると、交雑種(F1)の子牛が生まれ、ホルスタインのオスよりもよい価格で売ることができます。そのため、酪農家は低い乳価をなんとか補おうと、和牛の精液を人工授精することが増え、ホルスタインの子牛、とくに搾乳牛となるメス牛が足りなくなっているのです。
「それでも今は、ホルスタインのオス子牛も比較的いい値段なので、乳価が低くてもなんとか息を付けている。でもTPPや日豪EPA(経済連携協定)の影響で、ホルスタインのオスを肉牛にしてくれる肥育農家がダメになったら、酪農も大打撃を受けることになるだろう」と豊さんは心配します。
その一方で、乳価は生乳1キロあたり、現在約100円。6〜7円ほど上がっただけです。「飼料代が高騰してる分、せめてあと10円は上がってほしい。やっぱり酪農家は牛乳を搾るのが本業。乳価で再生産できるようにしてほしい」――365日、朝夕欠かさず搾乳し、夏の炎天下で乾草作りに汗を流す酪農家のささやかな願いです。
青草、乾草、サイレージなど、牛の消化器官の働きに必要な繊維質を多く含んだエサです。サイレージとは、牧草や飼料用トウモロコシ(実だけでなく、茎や葉もすべてエサにします)を発酵させたエサ。粗飼料は牛にとっては主食ともいえる、欠かせないものです。
トウモロコシや麦、大豆、綿実など、タンパク質やデンプン、脂肪など、牛の泌乳能力を発揮させる豊富な栄養分を含んでいます。濃厚飼料は数種類を混合して与えることが多く、配合飼料と呼ばれることもあります。
[2015年7月]
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