農業再生・自給率向上させる
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関連/いま考えよう 日本の食料自給率 /農業再生・自給率向上させる農政へ転換を /農民連はこう考えます |
世界で人口は増え続け、食料の需要も大きくなる一方、大規模自然災害や異常気象などにより、農産物の生産量の減少が心配されます。それなのに、日本の食料自給率は先進国中最低の39%(2013年度)。本来なら、食料自給率を高めなければならないはずなのに、日本はなぜ、低いのか。
「基本計画」によれば「国内生産のみでどれだけの食料(カロリー)を最大限生産することが可能か=食料の潜在生産能力」が「食料自給力」です。
農水省は、食料自給力の指標として、体重を保つために人が1日あたり必要なカロリーを2147キロカロリーとし、どんな農作物でどの程度のカロリーを供給できるかを試算しました。
「イモ類中心型」の食生活にすれば必要なエネルギー量は確保できるが、現在の「米・小麦・大豆中心型」では確保できない――これが「基本計画」の結論です。それによれば、「米・小麦・大豆中心」の食生活では、必要なカロリーをまかなえず、「いも類中心」の食生活では、必要な量を確保できるとしています。
果樹や花き、米や野菜などの農地もイモ生産にフル活用することが「基本計画」の前提ですが、これでは“食生活統制”と“生産統制”に踏み込むことにならざるをえません。
「戦争立法」の成立に血道をあげる安倍政権ならではの政策というべきでしょう。
さらに、イモが収穫できるまでの数カ月をどう乗り切るのかについては一言もないなど、現実離れした出来の悪い仮定の計算です。
愛媛大学アカデミック・アドバイザーの村田武さんは、「問題は、『基本計画』が、供給熱量ベースや生産額ベースでの食料自給率よりも、もっと深刻な穀物自給率を引き上げる課題から国民の目をそらすことに躍起のようにみえることです。イモ中心の食生活などの試算をやるよりも、農業の基本である穀物生産をどう回復させるのか、その方策をまじめに考えるべきです」と批判します。
しかし、TPP推進、農業・農協つぶしの農政では、45%さえ「実現不可能」で、現在の39%よりますます下がることは必至です。
2011年の東日本大震災で、被災地は栄養失調状態の食生活を長期にわたって経験し、東京などでもスーパーの店頭から米やパン、牛乳などが姿を消しました。そしていま、食料の輸入港が集中する太平洋沿岸を襲う東海大地震の発生が予測されています。「基本計画」は、こういう事態をまったく無視したものです。
その基本的方向は、次の通りです。
(1)TPPやFTA(自由貿易協定)路線を転換して農産物の輸入をコントロールする
(2)生産費が保障されなければ自給率は向上しません。主要農産物の生産費を基準にした欧米社会なみの価格保障制度を確立する
(3)家族経営を基本に、後継者対策を強めて、老・壮・青のバランスのとれた多様な担い手を確保する
いざというときに国民に“非常食”を強いるなどというバカげたやり方をやめ、日本農業が持っている世界有数の農業生産力を存分に生かす政策の実現こそが求められています。
[2015年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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