「農民」記事データベース20150302-1155-08

TPP前提の農協解体は許さない
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地域から共同広げ、攻撃を跳ね返そう

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 全中監査権の廃止はJAつぶしの突破口

 JA全中は、規制改革会議がJA改革を提言して以来、きびしく批判し、昨年11月に「JAグループ自己改革」を打ち出し、政府・与党案に対置してきました。今回の「合意」は「無理が通って道理が引っ込んだ」といわれるように、政府・与党の圧力の前に苦渋の選択となりました。

 農協法の付則に全中の役割が記述されることになっても、農協法を背景に全国のJA組織を統括してきた力が大きくそがれます。

 農協の「非営利」規定を外した上に、一般営利企業の基準による監査が導入されることも重大です。たとえば、米など穀物生産は1年1作であるように、農業生産は、種をまいて収穫し、販売して現金化するまで一定期間を要します。

 こうした特性から、信用事業を含む総合農協の利点を生かしてJAから購入した農業資材の支払いが一定期間、猶予され、収穫までの期間の生活費の融資を受けるということなどが行われてきました。公認会計士による監査になれば、こうしたことはできなくなる可能性があります。

 JA経営と地域住民に大きな影響を与える準組合員の利用制限も5年間、先送りされたにすぎません。準組合員率の高い北海道では、離農した農家が准組合員となってJAを利用しています。

 農村では金融機関やガソリンスタンド、スーパーなどが撤退し、JAが住民のインフラを支えています。こうした現実をかえりみずに農村住民からJAの利用を奪うことは、人の住めない農村を加速させることにしかなりません。

 今回の農協「改革」は、これで終わりではなく、これから二の矢、三の矢が放たれます。そのときに備えて総本山の全中の力をそぐのが今回のねらいです。

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「農業つぶしはやめよ」と宣伝する全国食健連=1月7日、東京・新宿

 農協解体は農業版「戦後レジームからの脱却」

 安倍首相は「戦後レジームから脱却する」とし、侵略戦争への反省を基本にした戦後の枠組みを否定し、戦争する国づくりに暴走しています。

 戦後の家族経営を基本にした農政は、侵略戦争に至った反省から確立したもので、先輩たちの戦前からのたたかいで勝ち取ったものです。

 その柱は、(1)農政の柱を家族経営におき、(2)農地を農民が所有することを「農地法」の大原則とし、公選で選出された農民で構成する農業委員会が農地制度を担保する、(3)家族経営を支援する様々な経営所得確保対策の構築(すでに廃止された食糧管理制度や価格保障制度、融資、災害対策など)、(4)分散した小経営の農民が自主・自立・参加を基礎にした農業協同組合を作って事業と運動を進める――などの点にありました。これが“農業の戦後レジーム”であり、日本国憲法のもとでの民主主義原則に裏づけられたものです。

 アベノミクス「農政改革」は、これらを乱暴に否定し、解体しようとするもので、戦争する国づくりと根は一つです。

 農協解体許さず協同を守ろう

 安倍政権は、「農協改革によって農協が発展し、農家の所得も増える」かのようにいいますが、その道筋は全く示されていません。また、「10年で農業・農村所得倍増」といいますが、大暴落した米価対策に背を向け、農業を土台から破壊するTPP交渉をアメリカと連携して妥結させようと躍起になっています。

 農業・農協「改革」は、日米の大企業が日本を「世界で最も企業の活動の自由な国」にするためのものです。

 農協解体攻撃はJAだけにとどまらず、大手流通資本と競合する生活協同組合など、他の協同組合にも向けられることは必至です。それは、国民・住民が助けあって大企業の横暴から暮らしと権利を守ろうとする一切の規制や活動、組織が多国籍企業の自由な活動の邪魔になるというTPP流のイデオロギーに政府・与党が立っているからです。

 政府は、農業・農協つぶしを進める「農業改革関連法案」を今国会に提出しようとしています。

 法案を阻止するために、すべての農民、農協関係者、国民が力を合わせて地域から共同をまきおこし、農業・農協「改革」を跳ね返しましょう。


農民連は主張します

 ◆日米の大企業の要求に沿った「農協解体」路線をJAに押しつけることは断じて容認できません。
 政府与党は3月に「農協改革・関連法案」を提出しようとしています。
 農民連は、法案阻止のために、多くの農協関係者、労働者、地域住民との協力・共同を広げてたたかう決意です。
 ◆政府が今やるべきことは、食料自給率を向上させる国家目標を鮮明にし、世界の政策のすう勢である家族農業を基礎に、協同組合の自主・自立・民主的発展を支援することです。
 国益が守れないTPP交渉から撤退し、農産物の輸入をコントロールすること、価格保障を農政の柱にすえ、多様な担い手確保策を推進することを要求します。
 ◆農協が農家組合員の経営とくらしを守り、循環型の地域社会を構築する核となって奮闘するときです。
 農民連は、農協組織と一致点で共同し、農業と地域を守るために力を尽くします。

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(新聞「農民」2015.3.2付)
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2015年3月

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