TPP前提の農協解体は許さない
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政府・与党と全国農業協同組合中央会(JA全中)は2月9日に農業・農協「改革」について大筋合意しました。続いて安倍首相は12日の施政方針演説で、改革断行の最優先事項として、「農政の大改革は待ったなし」とし、「60年ぶりの農協改革断行」「農業委員会制度の抜本改革」などを強行することを宣言しました。
安倍政権が進める農協「改革」の主なポイントは次の通りです。
(1)JA全中を農協法から分離し、2018年度中に一般社団法人に移行する。農協法の付則に全中が農協組織の代表・総合調整機能を担うと記述する。都道府県中央会は農協法上の「連合会」に移行する。
(2)これまでの単位農協(地域の農協)の全中監査(JA全国監査機構)の義務付けを廃止し、公認会計士による会計監査を義務付ける。JA全国監査機構を全中から分離し、別の監査法人として新設し、単位JAが監査法人を選択できるようにする。
(3)単位農協の信用、共済事業を分離して代理店化する。
(4)農家以外の準組合員のJA利用制限については5年後に判断する。
(5)JA全農は株式会社に組織変更できる規定を作り、病院を経営しているJA厚生連は社会医療法人に組織変更できる規定を作る。
「攻めの農政改革」は、関税の撤廃が求められるTPP交渉の妥結を前提に、農地を集積して経営規模を拡大する、「農業の成長『産業化』」を口実に、農業、食料、農村を大企業のビジネスチャンスにするために、家族経営を前提にした農家への経営所得対策、米政策、農地政策などを土台から見直そうというものでした。
家族経営を基本とした農家の協同組合であるJA(農協)は、全国に約700の組織が展開し、組合員が生産した農畜産物の共同販売、生産資材の共同購入など農民や農村社会に根を張って多彩な事業を行っています。また、地方自治体が地域農業振興策を推進するうえでJAは中心的役割を担っています。大企業などが農業をビジネスチャンスにするうえで、家族経営を支えるJAは邪魔! これが農協「改革」の大きなねらいです。
水菜を収穫する茨城県の農家 |
この間、JA組織を中心に立場を超えたTPP反対の「一点共闘」組織が全国に張り巡らされ、前のめりな政府の前に立ちはだかってきました。
そもそもJAは組合員が自主的に出資して事業と運動を行っている団体であって、政治権力が介入することは絶対に許されません。JA解体は“抵抗する勢力はつぶす”という安倍流のファッショ的な報復であり民主主義の否定です。その矛先はJAだけではなく国民に向けられたものです。
世界各国の協同組合組織が加入している「国際協同組合同盟」(ICA)や日本協同組合連絡協議会(JJC)が「農協改革」をきびしく批判しているのもそのためです。
昨年5月、在日アメリカ商工会議所が日本政府に、「JAグループ組織改革の意見書」を提出し、JAの信用・共済事業を一般の金融機関と同等の環境に置くべきだと要求しています。
また、農家は農産物の販売でも農業機械や資材の購入でも、個々の対応では取引交渉力が弱いために農協を通して共同販売・共同購入しています。これを全国規模で展開しているのがJA全農です。これまで大企業との対等な競争条件を確保するために、協同組合には独占禁止法の適用が除外されてきました。
JA全農が株式会社化されれば独占禁止法が適用され、これまでの地域で生産された農産物が単位農協に集荷され、全農を通して有利な価格で共同販売することが違法扱いされるのです。
TPP交渉で、国家に保護されている公営企業が民間企業との対等な競争条件を阻害していると問題視され、交渉の大きな焦点となっています。JAを解体して日米の大企業が“もうけ”最優先にJAが担っている分野に参入する――まさしくTPPを先取りしたものです。
[2015年3月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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