「農民」記事データベース20150302-1155-03

誰のための農業・農協「改革」か
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 格差是正にとって協同組合の役割はますます重要

 フランスの経済学者、ピケティが「資本主義で格差が広がっていく」と指摘しましたが、その格差を是正していくことが大事です。ところが今、政府や竹中平蔵氏らは、さらに格差を加速させる新自由主義経済を進めると主張しています。そうなると日本もいずれ、アメリカのように「富裕層1%対貧困層99%」という構図になってきます。そうなったときに、「99%」の生活をどうしていくのかということです。ちゃんと暮らしを守っていくためには、助け合っていく以外にないではないですか。むしろ農協、協同組合を強くしていくことを安倍首相はやらなければならないのです。

 資本主義には格差を広げる欠陥があるわけです。だからそれを修正することが必要で、その役割を協同組合が担うのです。実際にいろんなかたちで、消費者の生活防衛のための生活協同組合もあるし、NPOもあります。そうした企業でもない、行政でもない、民間の組織が必要なのです。農協もその一つです。安倍首相は“岩盤を壊す”と言っていますがとんでもないことです。岩盤を壊したら倒れてしまうじゃないですか。安倍首相は「日本を取り戻す」と言いますが、「新しい日本を築く」ことが大事なのです。

 農協の役割で大事なのは、組合員の目線で、農業と地域を守っていく。そのことが組合員の暮らしを守っていくことにつながります。政府からみれば、それが小さな農家、兼業農家を守ることになるから気に入らないわけです。しかし、組合員は小さな農家、兼業農家が多いわけですから、農地を守り、持続可能な社会を維持していくためには、小規模な農家を守らなければなりません。企業であれば、地域に入ってきても、もうからなければ出ていってしまいます。撤退すれば地域が維持できません。昨年は国連の「国際家族農業年」でしたが、農水省は無関心でした。小規模な農家は、非効率のようにみえるけど実は最も効率的です。家族農業はすばらしいものがあります。株式会社がすべてのように言うのはおかしい。助け合いの精神を守っていかなければなりません。

 JAの自己改革も必要

 農協改革でいうと、確かにわれわれも反省しなければいけないところもあります。いまの販売・購買について、予約購買、全面委託販売などを見直す時期にきているのかもしれません。この事業方式が始まってから60年近くが経過しており、委託販売が当たり前のこととなっていますが、リスクがないということで安住し、自ら販売するという危機意識がなくなり、また消費者動向にうとく、適切な営農指導もできなくなっているのではと危惧しています。従って、リスクはあるけれども、段階的に買取販売を導入し、それに向けて全国連あげての保険制度の創設などの環境整備も必要です。

 もう一つは、農産物の販売で、すべて平等だということでなく、いいものは高く売ってもらうなどの公平の視点も必要です。これまでは、共同でコスト低減ということが最優先で、品質に差があっても、すべてプール処理、共同計算で対処していました。今後は、すべて個別処理とはいかないまでも、品質ごとに処理し、販売していくことを考えていかなければならない時期にきています。

 政府は、株式会社化を主張しますが、そうなれば北海道の雪印のようなことになりかねません。雪印も元々は協同組合でした。はじめは協同組合の精神をもっていても、上ばかり見ていては、生産者や組合員に迷惑をかけて、問題を起こすことになりかねません。

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JA三次ふるさと祭り(グリーンフェスタ)=JA三次提供

 さらに地域住民に密着する農協めざして

 農協攻撃はこれで終わりではありませんから、これからが大事です。今回、「全中を一般社団法人化する」と言いますが、これでわれわれが引き下がるかどうか。開き直って農協法の付則を生かし、なんでもやれるということもあっていい。

 これからの農協の進む道は、多くの方々に農協攻撃のねらいを知らせ、理解を広げることが大事です。そして、いっそう組合員や地域住民に密着し、営農や地域を守ることに貢献することに尽きます。

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(新聞「農民」2015.3.2付)
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2015年3月

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