「農民」記事データベース20150302-1155-02

誰のための農業・農協「改革」か
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さらに組合員や地域住民に
密着、営農や地域を守る農協

 農協への攻撃は始まったばかり

 農協改革の本当のねらいは、昨年5月の在日米国商工会議所の提言に示されています。これは、農業の規制緩和を進める「前川リポート」からの流れです。郵政改革で、アメリカの保険会社アフラックのがん保険を日本の郵便局で扱っています。なぜアフラックだけ扱うのか。公平に競争入札にしてやればいいではないですか。農協改革の最大のねらいは、農民の資産である信用、共済事業に日米の金融資本が参入することにあり、TPPと連動していることは間違いありません。

 その一歩として、今回は見送られましたが、農協の政治的な力を弱めるために、準組合員の農協利用を制限する。全中の力をそぎ落しておこうというのです。今後、今以上に農協への攻撃が強められるでしょう。そのときには全中に力がなくなっているわけだから、今度は思うようにできるということです。農協への攻撃は今回で終わりではなく始まりにすぎません。

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村上組合長(左から2人目)を囲んで(左から)小林信司・広島県農民連副会長、笹渡義夫・農民連副会長、長谷川敏郎・島根県農民連会長(中国ブロック担当)

 農協への全中監査の義務付け廃止は

 「農政改革」では「農協に対する全中監査の義務付けを廃止し、公認会計士監査を義務付ける」ということですが、いま農協では、公認会計士を全国の監査機構の中に入れ、人数も増やしてきているし、監査法人の責任者をしていた人を全国監査機構の委員長に据えています。JA広島でも、公認会計士を採用しています。しかし、公認会計士がやることと農協の監査のやることと、それほど違うわけではありません。問題は、公認会計士が監査すれば、もうけのことしか言わないわけです。総代会で決めた方針に沿って、みんなのためになるようなことをやっているかどうかという業務監査のようにはいかないことになります。

 今後、「赤字になっている営農指導部門をやめろ」と言われるおそれがあります。農協が2億円以上つぎ込んでいる営農指導をやめたら、誰が農家の面倒をみるのか。

 農協の信用・共済事業を信連や共済連に譲渡して代理店になり、専門農協でやれと言いますが、過去に専門農協の経営が行きづまり、総合農協に吸収合併された経緯があります。赤字経営になったら誰が組合員になるでしょうか。職員もなり手がいなくなる。こうしたことに対する認識が全然ないですね。

 総合農協の地域のインフラを支える機能が、今回の「改革」でよくなることはなく、むしろ弱まることは間違いないでしょう。農協というのは、組合員あっての農協であって、もうからなくなったからといって、企業のようによその地域に行ったり、外国に行ったりするわけにはいかないのです。農協は、組合員や地域と一心同体、運命共同体のようなもので、組合員のくらしが苦しければ、農協の経営も悪くなるし、農協の経営が苦しくなれば、組合員のくらしも悪くなるのです。

 地域密着型のJAにとって準組合員の利用制限は重大問題

 これは、地域密着型のJAの問題と密接な関係があります。JA三次管内の人口は約6万人で、農協組合員が約2万人です。そのうち正組合員が64%で、準組合員が36%です。比較的、正組合員の比率が高いのですが、農協は地域と一体に、住民のくらし全体を守ってきました。

 ここは中山間地で高齢化率も高く、農家組合員のくらしを守るためにも、まずは高齢者を守っていかなければなりません。こうして介護事業など福祉の事業にもいち早くとりくんできました。農業でがんばってきた先輩方(準組合員)が高齢化して困っているときにちゃんと面倒をみるのが農協の務めです。こうして地域のつながりを強めていくことが大事です。

 農産物の販売額は減っても、農協の営農指導員は増やしています。去年の低米価でみんなショックを受けていますが、きびしい経営環境のなかで地域農業の振興のためにがんばっています。

(新聞「農民」2015.3.2付)
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2015年3月

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