「農民」記事データベース20140915-1133-08

世界遺産の富岡製糸場
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金もうけよりたくさんの繭とりたい

養蚕農家 酒井英樹さん(群馬県高崎市)

 「もう、金もうけなんかじゃないよ。たくさんの繭をとりたい。もうそれだけ。ハッハッハッ」――こう言って豪快に笑う酒井英樹さん(72)。群馬県高崎市の養蚕農家です。群馬県は、繭の生産量日本一。しかしその群馬県でも養蚕農家は181戸しか残っていません。酒井さんはそのうちの貴重な1軒で、今でも毎年約1・6トンの出荷を続けています。「オレは日本一たくさん出荷しているんだ」と胸を張る酒井さんは、受賞歴も多い県内でも有数の養蚕農家です。

 蚕種をふ化させてから繭の出荷まで、およそ45日間。これを春から秋にかけて、1年に3〜4回繰り返します。蚕が育つ間は桑畑から毎日桑を切り出し、その成長を注意深く見守りながら、朝、昼、夜と、蚕が小さいときには小さく刻んで、桑を与える日々が続きます。その仕事は繊細にして、重労働です。

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酒井英樹さん(右から2人目)と奥さんの志ずゑさん(右端)を訪ねた群馬県農民連の木村一彦会長(左端)と目黒奈美子事務局長(左から2人目)、埼玉県農民連の松本慎一事務局長(中央)。酒井さんは木村会長の米づくりの仲間

 「もうトシなんだから、たくさんとろうとしないで、品質が良くて高く売れる繭を、少しだけ作るようにすればいいのに、そうしないのがこの人のこだわりなのね」と笑うのは奥さんの志ずゑさん。夫婦二人の仲の良いかけあいから、蚕への深い愛情が伝わってきます。

 しかし繭の価格は、1・6トンも出荷して約300万円。1キロで2000円足らずにしかなりません。「おれはこの道50年。でもこの20年くらい、繭の価格はずっと同じ。しかも蚕の卵代だけで50万円もするんだよ。米も作ってるから、なんとかやってるけど」と酒井さん。自宅に隣接する蚕の飼育場が、今年2月の雪害で倒壊しましたが、なんと自分で再建しました。これからも新たな表彰めざして、蚕を育てる日々が続きます。

(新聞「農民」2014.9.15付)
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2014年9月

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