「農民」記事データベース20140505-1116-07

さけ弁当からみえる
TPP問題
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 スーパーやコンビニエンスストアの店頭に並んでいるさけ弁当。さけ茶漬けやさけおにぎりなど私たちにとって身近でおなじみのサケですが、ここからTPPの問題点がみえてきます。今回は、さけ弁当を味わいながらTPPについて考えてみましょう。ただし、読み終わったころ、おいしいと感じられるかどうかは保証できません。


遺伝子組み換えサケ

2倍のスピードで成長
野生より体重最大25倍も

 アメリカFDA(食品医薬品局)は2012年、2倍の成長スピードをもつ遺伝子組み換え(GM)サケについて、環境への影響はないとする「環境影響評価書」案を発表しました。遺伝子組み換え動物としては初めてです。成長を速めたGMサケは、アメリカのベンチャー企業アクアバウンティ・テクノロジー社(アクア社)が、研究所のあるカナダ・プリンスエドワード島で開発したものです。

 GMサケは、一つは大西洋に生息するアトランティック・サーモンに、「キング・サーモン」と呼ばれる大きく成長するチヌーク・サーモンの遺伝子を導入したものです。さらに、サケは寒くなると成長ホルモンが分泌されず冬の間は成長が止まりますが、そこに一年中成長するゲンゲというウナギに似た深海魚の遺伝子を組み込んで異常に成長を速めたのです。この2つの遺伝子を組み込んだGMサケは、野生のサケに比べて最大25倍の体重をもつようになります。

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上が成長を速めた遺伝子組み換えサケ。下は通常のサケ

 アクア社は、「GMサケは不妊(繁殖不能)にしてあるので安全に養殖できる」とし、魚そのものでなく卵を販売することになっています。13年11月にアクア社は、カナダ政府から10万個のGMサケの卵をカナダからパナマの養殖場に輸出する承認を得ました。

 遺伝子組換えサケ問題点はどこか?

 このGMサケ。どんな問題があるのでしょうか。

 「今のところはパナマだけで養殖されることになっていますが、その後、各地で養殖されることになれば環境中に逃げだすリスクを高めることになります。また、魚は動き回るので、養殖場に完全に封じ込めるのは困難です」。市民バイオテクノロジー情報室の天笠啓祐代表はこう指摘します。

 繁殖不能サケ逃げ将来は絶滅種?

 「2倍の速度で成長するサケの雄は体が大きく、その分、雌をひきつける能力を高めています。もし繁殖不能のサケが大量に逃げ出すと、将来的にはサケの絶滅をもたらすかもしれません。また、サケは肉食であり、他の魚を食い荒らすことによって、希少種の魚が失われるおそれもあるのです」

(新聞「農民」2014.5.5付)
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2014年5月

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