農民連第20回定期大会決議(案)
持続可能な社会へ、
農業の復権と農村の再生を担える
農民連の建設を!!
(4/5)
2012年12月26日 農民運動全国連合会常任委員会
5、農家の選別をやめさせて多様な担い手を確保する運動
2011年10月に政府が打ち出した「食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」、「取組方針(案)」は、青年後継者を確保するための支援策など前進面があります。しかし、重大なのは、TPPや高度な経済連携協定に対応するために「平成28年度までに経営規模を平場で20〜30ヘクタール、中山間地域で10〜20ヘクタールが大宗(80%)を占める構造をめざす」とし、そのために「地域農業マスタープラン」を策定するとしています。これは、自公政権時の「品目横断的経営安定対策」を上回る構造政策であり、「担い手確保」の名のもとに、多数の農家を生産から締め出す危険なねらいがあります。
「マスタープラン」づくりは約3割の自治体で作成されたといわれていますが、選別政策であるためにどこの地域でも困難を極めています。
農民連は、集落の話し合いに積極的に参加して、ねらいを農家に知らせるとともに、地域の実態や農家の要求を無視した「構造政策」に反対します。同時に、選別ではなく全員参加型で農地と集落機能を維持するために知恵を出し合い、政府や自治体への支援策を要求しましょう。青年就農給付金の柔軟で弾力的な活用を認めさせ、積極的に活用しましょう。困難の中で奮闘している集落営農組織の生産、経営、販路の確保などの要求で連携を強め、団体加入を視野に働きかけます。農民連組織として、使える制度を利用して多様な担い手を確保する取り組みを進めましょう。
6、原発ゼロと再生可能エネルギー、全面的な損害賠償を要求する運動
(1)原発ゼロ、再稼働を許さないたたかい
ズサンな電力会社いいなりに原発が建設されたために、多くの原発が活断層の上に立地していることが明らかになっています。大飯原発を停止させ、停止しているすべての原発を廃炉にすることが最も現実的な原発ゼロへの道です。原発推進、再稼働を容認する安倍内閣のもとで、「なくせ原発、再稼働やめろ」の運動をさらに広げるために力を尽くします。毎週金曜日に行われている首相官邸包囲行動をさら広げ、呼応した運動を全国で広げましょう。
(2)全面的な賠償を要求する運動 損害賠償は、東電だけでなく政府の責任が重大です。精神的損害に対する慰謝料や作物転換のための保障などを含め、農家のあらゆる損害を東電と政府に要求してたたかいます。東電に不当な線引きの口実をあたえている原賠審の「中間指針」を転換させ、全面賠償のための新法の制定を要求してたたかいます。損害賠償に対する課税を中止させる運動を強めます。
(3)再生可能エネルギーの取り組み
農民連は、原発を即時ゼロにして原発に依存しない社会、省エネ社会、そして小規模に分散した再生可能エネルギー社会、循環型社会をめざし、その担い手として奮闘します。再生可能エネルギーの宝庫である農村こそ、持続可能な循環型社会を作っていく潜在力があり、この方向に農村を持続可能な社会にする展望があります。
再生可能エネルギーと取り組みを広げるための「農民連の呼びかけ」を力に、再生可能エネルギーを生産する実践を、全国の組織に共通する課題として推進します。学習を力に、会員が可能な取り組みに踏み出し、協同の力による発電にも踏み出しましょう。取り組みへの支援策を政府や自治体に要求します。
7、被災地の救援、復興の取り組み
引き続き、仮設住宅での不自由な避難生活や、全国に散らばって避難している被災者への全国の力を結集した救援活動に力を尽くします。また、被災者の暮らしと生業の復活、住宅再建などの復興への万全な支援策を求めて運動を強めます。特に、組織の力を生かして被災した農家が再び農業に復帰できるよう全力をあげます。
8、食品分析センターの発展と活用、食の安全を守る運動
(1)食品分析センターを活用した取り組み
これまでの農薬、重金属、遺伝子分析などの機能に加えて、高度な放射線測定器を完備し、法人としてスタートした「農民連食品分析センター」を、食の安全を守る“市民の分析センター”としてさらに発展させることが求められています。安全な農産物を生産する農民連として、さらに組織内の分析センターの活用を呼びかけます。
(2)食の安全を守る運動
アメリカ産米からヒ素が検出され、BSEの検査対象と輸入条件を30カ月齢以下に緩和と、さらなる安全基準の緩和もねらわれているもとで、国民の食の安全に対する不安が高まっています。こうしたねらいを許さない運動を進めます。
9、消費税増税、重税に反対する運動
消費税を2014年4月から8%、2015年10月から10%への引き上げを阻止するために全力をあげます。デフレ不況のもとでの消費税増税は国民の暮らしと経済を破壊し、特に販売価格に転嫁できない農家にとって死活問題です。消費税に依存しなくても、不平等税制を改めて大企業と富裕層への応分な課税によって財源は賄えることを強く打ち出し、国民的な運動に発展させます。2013年夏の参議院選挙は増税を阻止する重要なたたかいです。増税反対派が国会で多数になることをめざして奮闘します。
10、国際連帯の運動
ビア・カンペシーナは2013年6月にインドネシアで第6回国際総会を開き、創立以来20年間の活動を総括し、家族経営・小農民による農業こそが食糧・環境・経済危機に対する根本的な対案であることを明らかにし、地球を救うビジョンを検討します。
アジアで初めて開かれる国際総会に代表団を送り、アジアと世界の農民運動との連帯を強化します。
TPPやFTAを許さず、食糧主権を基本にした農業・食糧、貿易政策への転換をめざし、国内の運動とアジアやTPP関係国の人々との国際連帯運動を結んでたたかいます。
国連は2014年を「国際家族農業年」に定め、持続可能な食糧生産の最も重要な基盤である家族経営農民の役割を発揮させるための国際的なキャンペーンを呼びかけています。この呼びかけにこたえ、ビア・カンペシーナなどと連携してキャンペーンに取り組みます。
11、農家の暮らしと農村を守る多様な要求運動
(1)確定申告運動と3・13重税反対運動について
消費税増税や新たな国民負担が押しつけられ、すべての事業者に記帳が義務づけられたもとで、今年の確定申告と3・13重税反対行動は、納税者としての自覚を高め、広く農家に宣伝して仲間を広げ、増税に反撃するたたかいとなります。
確定申告期に取り組まれる「春の大運動」では、記帳簿を前面に、農家の多様な要求で結びつきのある農家に働きかけて会員に迎え入れましょう。所得税だけでなく、国保税、損害賠償請求、生産や販売、準産直など、多様な要求を掲げ、農民連の存在と要求運動を大量宣伝で広く知らせ、結びつきを広げましょう。きめ細かく地域で「相談会」を開きましょう。
(2)免税軽油制度の恒久化を要求して
運動で継続させた免税軽油制度は平成27年3月までの制度です。恒常的制度として確立させるための運動を強めます。
(3)暮らしを守る相談会運動
農家は、営農や暮らし、雇用、高すぎて払えない国保税と保険証の取り上げ問題など、さまざまな問題を抱え、気軽に相談できる窓口を求めています。こうした要求に応えるために、弁護士や労働組合、市民団体、地方議員などと協力した日常的な相談活動を進めましょう。
(4)畜産を守る運動
飼料や燃油価格の高騰と引き合わない畜産物価格、BSE安全対策が後退させられようとしている中で畜産経営の困難が広がっています。特に酪農家の離農は著しいものがあります。再生産が可能な畜産物価格の実現、国内産飼料生産への支援策、BSE全頭検査の継続などを要求して運動を進めます。
(5)漁業や林業など、農山漁村を守る運動
震災や原発事故で被災した漁民の要求を取り上げた運動、魚価の価格保障の実現、漁民の暮らしと経営を守る運動を進めます。林業の再生は中山間地の活性化、雇用と地域経済の再生、温暖化対策からも重要な課題です。漁民や林家への働きかけや、関係団体との共同を広げます。漁民会員の組織化を踏まえた漁民対策を強化します。
12、生産と結んだ多様な産直運動の展開を
(1)新婦人会員との産直、多様な産直
20年余の蓄積を生かし、“運動と産直”の原点に立ち返った新婦人会員との産直の発展をめざします。新婦人会員の要求に応えた取り組みにするための話し合いや学習、交流を強めましょう。
朝市や直売所、インショップ、旅館や飲食店など、地域のあらゆる消費の場面に地場産の農産物を提供する取り組みは、農家の要求であるだけでなく、循環型の地域経済づくりに沿ったものであり、社会問題となっている“買い物難民”の要求に応える取り組みでもあります。学校や保育園給食を“食農教育”として重視し、大都市の学校に全国のネットワークを生かして食材を提供しましょう。組織内産直も重視して取り組みましょう。
(2)在来種を守り、引き継ぐ運動
多国籍企業によるバイオテクノロジーをテコにした遺伝資源や種子の独占など、生物多様性の破壊が進んでいます。こうした動きに国際的、国内的規制を要求するとともに、生物多様性に配慮した生産の努力、在来種を守る運動を進めましょう。
(3)市場を守る運動
卸売市場の再編整備のねらいは、市場をさらに大手量販店の集配センター化することにあり、築地市場の移転問題の本質もそこにあります。地域の生産と流通を支える卸売市場にするために、地域の市場や、自治体、卸との話し合いや提携を進めましょう。
13、都市農業、中山間地を守る運動
(1)都市の農業と農地を守る運動
国土交通省は、2009年6月、社会資本整備審議会が「都市政策の基本的な課題と方向検討小委員会報告」を発表し、これまでの都市の農業・農地政策を転換し、農業生産機能、自然とのふれあい、憩いの場、防災機能などの多面的機能を積極的に評価して都市計画に生かす方向を打ち出しました。
農民連は、「都市計画法」制定以来の40年間、宅地並み課税や相続税など重税による農地の吐き出し政策とたたかい、長期営農継続農地制度、相続税納税猶予制度、生産緑地制度などを勝ち取りながら、都市の中に農業を息づかせる取り組みをしてきました。今回の政策転換は、この間のたたかいの集大成を意味する大きな成果でした。
こうした流れを、国や自治体の具体的な政策に実らせるのはこれからです。自公政権の出方にも注意を喚起しながら、宅地並み課税をはじめとした税制の転換、都市農業を振興させるための農政と、自治体での条例制定と振興策、住民と共同した「農のある街づくり運動」を進めます。
(2)中山間地を守る運動、鳥獣被害対策を求める運動
高齢化と担い手不足による農地の維持、地域コミュニティの確保、鳥獣被害など、中山間地は多くの困難を抱えています。中山間地の直接支払い制度を充実させるとともに、住民の要求にもとづいた人の住める山村にするための支援を要求します。
鳥獣による農作物被害は切実な要求です。十分な予算の確保と、国と地方自治体、住民が連携した対策の強化を要求します。
14、改憲阻止、平和と民主主義を守る運動
改憲勢力が国会の多数を占めているなかで、自民党、維新の会、みんなの党は、国会の改憲手続きを定める96条を改悪し、国会の3分の2から2分の1の賛成で改憲できるようにするねらいを強めています。最終的なねらいは9条の全面的な改悪にあります。中央、地方で「憲法改悪反対共同センター」を軸に運動を強めるとともに、「9条の会」、農林水産関係者の中で「農林水産9条の会」の発展に協力します。
普天間基地の名護市辺野古への移転に反対し、基地とオスプレイの撤去を要求してたたかいます。農村での核兵器廃絶の運動を強めます。
農民要求を実現するためには、アメリカいいなり政治のもとになっている日米安保条約を廃棄し、大企業の利益を最優先する政治の転換が不可欠です。政治革新のための3つの共同目標を掲げる革新懇運動の発展をめざし、全国でも地方でも奮闘します。
民意を切り捨てる国会議員の定数削減に反対し、著しく民意をゆがめている衆議院の小選挙区制の見直し、政党助成金の廃止を要求して運動を進めます。
15、参議院選挙について
2013年夏の参議院選挙は、復帰した自公政権に初めて審判をくだす選挙です。2014年度からねらわれている消費税増税を中止させるかどうかに直接かかわる選挙であり、TPP参加問題、原発政策なども重大な争点となります。農民の要求が反映する国会にするためにたたかいます。
(新聞「農民」2013.1.14付)
|