もう一つのアジアの構築とFTAに
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2011年10月12日〜15日の間、私たち、農民、労働者、消費者、都市・農村部の貧困者、社会運動、市民社会組織が千葉と東京に集まった。ビア・カンペシーナ東南・東アジアは、FTAウォッチ(タイ)、食健連(日本)、反韓米FTAタスクフォース(韓国)とともに自由貿易協定(FTA)と環太平洋パートナーシップ(TPP)についての戦略会議を開いた。これは、アジアに拡大する協定の履行と推進への懸念を共有するための会議であった。現在、国家または地域間に多くのFTAが存在しており、民衆の暮らしを脅かしている。
現在、食糧・エネルギー・金融・環境の危機は依然として世界を覆っている。これらの危機を引き起こしてきた企業や資本家はFTAとTPPを推進することですでにたっぷり得ている利益をなお拡大しようとしている。世界人口のたった1%しか自由貿易から利益を得ていない。このような企ては現在の危機をさらに悪化させ、特に貧困な人々に犠牲を払わせることになる。
FTAは世界貿易機関(WTO)の交渉よりもさらに自由化を促進する。2003年のWTOの崩壊後、FTAは自由貿易を拡大させるための手段として利用されている。TPPは、より広範な環太平洋地域で商品、産業、サービス、投資の自由化を進める。TPPは主として米国のイニシアチブから始まったもので、これを通じて米国は世界経済の約54%を占めるこの地域を自由化地域にしようという野心を抱いている。
自由化によって公共支出のための国家予算は大幅に削減される。FTAとTPPのもとでは、医療、教育、電気、水など重要な公共サービスへのアクセスがより困難になるとともに、企業と大資本家の搾取によって地域内の民衆の食糧、雇用、生産的な天然資源へのアクセスもまた失われる。
さらなる自由化は民衆と国家の主権を侵害することになる。私たちは、これまでのFTAがどのように民衆の食糧主権、特に地域における価格と市場を破壊してきたかの目撃者であり、強い警戒感を持っている。FTAとTPPは多国籍企業の支配を容認し、国家の主権(特に発展途上国や貧しい国)を侵害し続ける。また、FTAとTPPのもとで、貧しい発展途上国は先進国に燃料と原材料を供給し続けるために、新植民地主義が拡大されるであろう。
FTAとTPPは、金融セクターをより自由化して、金融危機を悪化させる。多国籍企業と大資本の民衆からの利益収奪に歯止めをかけるために、金融セクターを規制する必要がある。
労働者の権利もまた危険にさらされている。FTAとTPPは柔軟な労働市場を作り出すことにより保護を緩和する。低賃金、非正規雇用、アウトソーシング、無保険・無保障は、私たちの地域の多くの労働者が経験している非常に危険な状態である。
一方で、多くの貿易オルタナティブ(代案)がローカル、国、さらに地域のレベルで存在している。私たちは貿易自体には反対しない。しかし私たちは正義と公正なルールにもとづいた貿易を求める。それは一人が他の多数を収奪するようなことがない貿易である。私たちが求める貿易とは、人権を尊重し、食糧主権を支え、必須な公共サービスへのアクセスを保証する貿易である。
戦略会議ではそれぞれの国家と国民が協力し合える「もう一つのアジア」(Another Asia)を構築し、意義ある真の持続可能な開発、新しい金融システム、連帯と相互補完にもとづく貿易、気候正義、食糧主権、エネルギー主権のためのシステムチェンジへの取り組みを継続させることを誓いあった。
私たちは、FTAとTPPの影響を考慮し、私たちの政府に対し、今後の協定の締結を全面拒否するとともに、これまでのFTAの履行をストップすることを要求する。政府が調印する前に協定の中身を徹底的に分析する必要がある。このような重要な問題を決めるためには農民、労働者、漁師、中小企業、消費者などの人々の参加が必要である。
したがって、私たちはFTA・TPPに対する運動と連帯を今後とも発展させる。とくに――。
*FTAとTPPに関する共通の研修・教育材料の作成と分析を行う。
*2011年11月に開催されるインドネシア・バリでのASEANサミットと、アメリカ・ホノルルでのAPECサミットの両会議に私たちの声を届け、運動を起こす。
*FTAとTPPに関する行動を調整できるように常設戦略委員会を置く。地域共同のためのオルタナティブの研究とともに地域の組織間で共通のプラットフォームを構築する。
FTAとTPPの流れを変えるには、特にこの地域では長期的なプロセスが必要であることを私たちは知っている。私たちは全力をあげた取り組みと連帯強化を通じて目的を達成することを固く決意している。また、私たちは、民衆運動と市民社会組織にこのきわめて重要なたたかいに参加するよう呼びかける。
ポジションペーパー
ビア・カンペシーナ東南・東アジア
2011年10月15日
[2011年10月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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