「農民」記事データベース20110613-976-07

農地と地域農業を守る先頭に(1/3)

<近づく農業委員選挙>

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 7月には、全国の6割弱の市町村で農業委員選挙が行われます。TPP参加に反対し、農家の声をしっかり受け止めて地域農業と農地を守って行動する農業委員会にするために、大事な選挙になります。女性もおおいに農業委員として活躍しましょう。


京都・舞鶴市

地域の担い手を育てたい

若い農家支援 石束(いしづか)輝己さん

画像 「地域農業の担い手を守り、育てたい」――京都府舞鶴市の農民連会員、石束輝己さんは農業委員になって40年。石束さんの地道な活動には地域の信頼も厚く、舞鶴市の農業委員会会長も務めています。

 高齢化も進んで

 石束さんが農業委員として力を入れているのが、集落営農や、新規就農・後継農業者への支援といった地域の担い手づくりです。

 舞鶴市の農業は稲作が中心で、石束さんの住む与保呂(よほろ)地域は、典型的な中山間地域です。近年は農家数の減少だけでなく、高齢化も進んでおり、農地の維持管理は大きな困難を抱えていました。「せっかくほ場整備した田んぼを荒らしたくない」と、作業受託中心の集落営農組合を結成したのが1995年。以来、石束さんはこの組合の事務局長として尽力してきました。

 しかし担い手は集落営農だけではありません。「いま農業委員会でがんばっているのが、若い農家の支援です」と石束さん。移住者に空き家を紹介する「空き家バンク」制度を市で整備したり、遊休農地の農作業を青年に委託する仕組みづくりに協力したり、新規就農者への生活支援金支給や技術指導制度の拡充などに取り組んできました。

 ベビーブームが

 舞鶴市ではこうした支援もあって、新規就農者やUターンの農業後継者、脱サラして会社を興した青年農業者のグループなどが、地域の担い手として活躍し始めています。

 「若い衆」という作業受託と新規就農支援に取り組む青年グループが、2002年に結成された西方寺(さいほうじ)集落では、2005年までの17年間にひとりの赤ちゃんも生まれていませんでしたが、その後、10人を超える赤ちゃんが誕生。過疎に苦しんでいた農村がベビーブームに沸き、途絶えていた夏祭りも復活しました。

 「地域にとって、若い人をどうやって迎え入れ、どのように育てていくかは、とても大きな課題です。まずは青年や後継者たちが何を求めているのかをよく聞いて、農業委員会のネットワークを活用して情報を提供するなど、農業委員会が役立つ存在でありたいですね」と石束さんは言います。

画像
青年らと対話する石束さん(右)

 「そして同時に、若い担い手ががんばっている姿を、地域の農家や住民にもどんどん知らせていきたい。若いパワーで地域全体を元気づけたいのです」と、熱い思いを語っています。

 現場の声を発信

 舞鶴市の農業委員会は、昨年12月に「TPP参加反対」の決議を採択するなど、農政に農民の声を届ける取り組みも活発に行ってきました。また京都府農業会議も昨年12月、府下市町の農業委員会長連名で「TPP参加断固反対」を決議しています。「やはり農業の現場で起こっていることを発信し、農家の意見を国政や行政に反映させるのは、農業委員会ならではの役割です。農協も広域合併して農家の声が届きにくくなっているし、農業委員会の役割はますます大きくなっています」と強調します。

 「財界などは農業委員会を弱体化させて、株式会社の農地所有に道を開こうとしていますが、農業委員会つぶしは、農業つぶしです」

 石束さんの奮闘が続いています。

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(新聞「農民」2011.6.13付)
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2011年6月

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