「農民」記事データベース20110221-961-07

TPP(環太平洋連携協定)阻止の
国民共同を構築し、農山村を再生する
“核”となる組織づくりに挑戦しよう
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第19回大会への常任委員会の報告 笹渡義夫事務局長

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 中央と地方の行動が世論を動かし、政府を追い詰めた

 さて、こうした運動の前進を築く上で、いくつかの教訓があります。それは、農民の要求を基礎に、国民合意の立場に立ってねばり強く全国一斉に結んだ運動、これが政府を揺り動かし、たたかいの前進を切り開いてきた第一の教訓です。

 もう一つは、農民連はこの数年来、農協などへの呼びかけ、働きかけ、共同を一貫して重視してきました。3年ほど前でしょうか、農協特集の新聞「農民」をつくり、この見本紙をひとつ残らずJAに届ける作戦もやりました。同じ農にかかわる団体、仲間に共同を呼びかけ、別の言葉で表現するならば、「農のオールジャパン」というこうした大きな角度で共同を呼びかけてきました。それが、米価暴落対策でも、あるいは、TPPをめぐる運動の到達点をつくる上でも、大きな教訓になりました。

 三つ目に、ビア・カンペシーナ・インターナショナル代表のヘンリー・サラギさんからビデオメッセージをいただきました。格調高く、連帯感あふれるビア・カンペシーナのメッセージに、これもまた心から感謝申し上げます。私たち農民連は、国際的視野で情勢を見て、そして国内の運動と国際連帯を結んで、グローバル化した経済、グローバル化した攻撃に立ち向かってきました。

 JA全中の代表も、あいさつの中で「食糧主権」をくり返し強調されました。食糧主権を日本に持ち込んだのは、間違いなくわが農民連です。これらも運動を進める上で大きな教訓になったということを、改めて強調したいと思います。

 組織づくりの取り組みを振り返って

 次に、組織づくりについてです。

 この間の取り組みの中で、2年前の前大会よりも世帯会員現勢を前進させた県は、11県あります。前進した県ですから、この際、県名を紹介します。

 本部への組織登録で最も前進した奈良県連をはじめ、大阪、愛媛、福島、埼玉、新潟、福井、静岡、岐阜、島根、佐賀の各県連です。

 新聞「農民」の読者拡大で前進した組織は15道県あります。奈良、岩手、福井、滋賀、福岡、北海道、宮城、栃木、山梨、静岡、愛知、島根、徳島、沖縄、新潟の各県連です。

 世帯会員と読者の両方で前進させた組織は4県で、奈良、福井、新潟、島根の各県連です。

 全国的には数百の会員と読者を後退させて大会を迎えましたが、前進した組織の経験は貴重です。全国の先頭を切って仲間を増やし、新聞「農民」読者を前進させたこれらの組織の奮闘に心から敬意を表したいと思います。(拍手)

 いま名前があがらなかった多くの県連では、残念ながら前進に転化できませんでしたが、拡大して現勢を維持してきたという面も正確に見なければなりません。今日、この会場に来るまでに多くの方々が「大会に手ぶらでは行けない」と奮闘されて、成果を持ちよってくださった方がたくさんいます。

 組織づくりの教訓

 組織づくりの教訓をいくつか述べます。

 最近、加入される方に特徴的なことは、規模の大きな農家の加入が相次いでいるということです。この方々は、米戸別所得補償モデル事業に当然入っています。そういう方々が、米の準産直や、昔は「そんなチマチマしたことはやっていられない」と言っていた直売所などの要求で入ってきているのも特徴です。ですから、ここまで農業情勢が厳しいなかで、自前で、仲間と力を合わせて経営を守りたいという農民の強い思いが、私たちと共鳴しあう状況にあるということが第一点です。

 もう一つは、広範な農家に農民連を知らせ、日常的に農家と要求で結びつき、具体的で多様な要求で加入を呼びかけたところで加入してきていることです。どんな条件があっても、結びつきを強め、信頼を構築し、加入を働きかけない限り、絶対に組織は増えません。

 三つ目には、みんなが日常的に集まって悩みを相談し、支えあい、学習して成長しながら、仲間を誘えるような確信を培う取り組みです。県連の役員会も、「そういえば、前回開いたのは何カ月前かなぁ」という組織もありました。単組でも、「しばらく開いてないな。税金の時以来、会ってない」というところもずいぶんあります。この状態で、どうしてこの厳しい農業情勢に置かれている会員の暮らしと経営を守ることができるのでしょうか。みんなが支えあい、なぜこんなに苦しいのかということをしっかりと学習し、展望をもってみんなでがんばろうというあたたかい集団になることなしに、組織の前進もないということ。これも教訓として強調しておきたいと思います。

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JAのデモ行進を激励する農民連・食健連(国会前=2010年11月10日)

 それから、要求運動で結びついている農家、すでに農民連の要求運動に参加している農家に、「加入してほしい」という一声を言わずに何年間か推移してきた県があります。この中で、これを巻き返して正面から加入を訴えて、入会を勝ち取ったという組織がいくつかあります。「これではいけない。やっぱり働きかけよう」という思いに至ったことを多としたいと思います。

 運動を広げる新聞「農民」の役割

 最後に、運動を広げるその要は、新聞「農民」です。そして、会員拡大のすそ野を広げる要も新聞「農民」です。さらに、組織と財政の要も新聞「農民」です。この新聞「農民」の役割を握って、日常的にみんなで読者を広げる努力は、だれにでもできる課題です。これらを日常的にやったかどうか。これらが、前進した組織と、そうでない組織の分岐点ではないでしょうか。

減りつづける農林水産予算

 1月24日から国会が始まり、予算案が出されます。農水予算は、35年前の水準まで低下しました。また今年も、昨年に続いて1805億円の減です。戸別所得補償予算を800億円あまり増やしましたが、それ以外の予算をすべてなで切りにして実施しようというものです。

 他の予算を切って、戸別所得補償に集中させることによって生まれる弊害は深刻です。たとえば共済組合。政府は法律で決まっている予算は確保しましたが、管理費、維持費、職員の給与、こういうものはバッサリです。「どうやって維持するのですか」と質問したら、「共済組合の合併です」といいます。合併したら、災害のきめ細かい評価ができなくなるのではないか。「そこは工夫と知恵でなんとか」という答えです。これらの予算の削減は、農民の負担にはね返りますから、ほんとうに重大です。

 しかも、「全部輸入自由化したら、戸別所得補償だけで4兆円以上必要だ」。これがこれまで農水省が言ってきたことです。4兆円どころか、バサバサ削るに削って、ついに35年前の水準まで削減させた張本人が、民主党政権です。

 日本農業を再生するためには、輸入を規制して価格保障を軸に、直接支払いとの二本立てで、そして国をあげた担い手づくりに政治が打って出ること。このこと以外に農業再生の道はありません。

当面の方針の重点にかかわって

 TPPを阻止するたたかい

 当面の方針についてです。

 第一は、TPPとどういう構えでたたかうのかということです。3つの点を指摘したいと思います。

 一つは、このTPPを、何があっても必ず阻止するという構えでいこうということです。

 二つ目に、TPPは新自由主義の立場に立った攻撃です。これを私たちが阻止することができれば、その力を農業・食料、農山村を再生する力に転換する。つまり、次を創造する力をこのたたかいでつくろうということです。現に、地域で農民連、新婦人、全労連、いわゆる民主勢力と、JAや森林組合や漁協などとの共同が全国で広がっています。そして、単にTPP阻止だけにとどまりません。この国を守ろう、この地域を守ろうという質的な発展が伴って共同が広がっています。この力で阻止することができるなら、次の展望が見えてくるではありませんか。これほど夢のあるたたかいはありません。

 三つ目は、消費税問題なども含めて、要求に基づく国民的なたたかいの発展が、混迷した政治を国民本位に打開する流れを切り開く。政治を変える力になる。このことも、農民連はしっかりと腹に据えて、たたかいの先頭に立ちたい。

 そして、私たちはこのたたかいで、組織をつくるということも強調しておきたいと思います。

 イデオロギー攻撃への反論

 たたかいをすすめる上でいちばん大事なのは、イデオロギー攻撃への反論です。イデオロギー攻撃に反撃する最良の武器は、雑誌『農民』63号です。ぜひ読んでいただきたい。これを読めば、みんな語り部になれます。この雑誌『農民』をすべての会員に持ってもらい、広範な方々に普及しようではありませんか。

(新聞「農民」2011.2.21付)
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2011年2月

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