「農民」記事データベース20110221-961-06

TPP(環太平洋連携協定)阻止の
国民共同を構築し、農山村を再生する
“核”となる組織づくりに挑戦しよう
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第19回大会への常任委員会の報告 笹渡義夫事務局長

 農民連第19回定期大会で、笹渡義夫事務局長が常任委員会を代表して大会決議案の報告を行いました。その大要を紹介します。

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情勢について

画像 はじめに、私たちをとりまく情勢についてです。大会決議案では、「政治情勢とこの間の運動」の冒頭に、「前大会以降の最も大きな出来事は、2009年夏の総選挙で国民が自民・公明政権に審判を下して政権から退場させたこと」と述べました。私たちがたたかってきたあの自民党政権を、国民の力で退場させたことは、画期的な成果でした。

 しかし、いまの民主党政権は、国民が審判を下した自公政治の方向に逆戻りしています。その中心は、消費税の増税であり、TPPであり、沖縄の普天間基地の問題などです。アメリカいいなり、財界中心の政治に逆戻りして国民との矛盾を深めています。これがいまの菅・民主党政権の姿です。

 そういう意味で、今日の状況は、大激動の時代に入っています。期待した民主党の裏切りを体験した国民は、新しい国民本位の政治を模索しています。民主党政権に期待した農政もまた期待はずれで、政治のうえでも農政のうえでも、本来のあるべき姿を模索しています。

 この事態を打開するものは何か。中心は、TPP反対をはじめ、国民要求に基づいて国民共同を発展させ、悪政に反撃する力を高めること、これが決定的なカギになるでしょう。そういう意味で、農山村で活動する私たち農民連に課せられた役割は、非常に大きいということを、まず最初に強調するものです。

前大会後の2年間の活動を振り返って

 次に、前大会後の2年間の活動について報告します。

 今日、会場にノボリ旗が掲げられています。「TPPに加入するな」「自由化の合意はするな」「米つくってメシくえねぇ、生活できる米価を保障せよ」。ここに示された要求が、この2年間の私たちのたたかいを象徴しています。

 「米つくってメシくえない」のスローガンを掲げたたたかいは全国で巻き起こり、政府を突き動かし、農業団体の共同、米流通業者との共同まで発展させました。われわれの掲げてきた「過剰米40万トン程度の買い上げをしろ」「棚上げ備蓄を前倒しして実施しろ」、この要求が、時期は遅れましたが、政府がその方針を打ち出すに至りました。これは、まさに農民連のたたかいの成果でした。ねばり強い全国的な運動が、われわれが掲げたスローガンが、多くの人の心をとらえました。

 先ほど日米連(日本米穀小売商業組合連合会)の長谷部喜通理事長が、「米を売ってメシくえない」と言いました。実は、自動車を作っている労働者が車が買えない。電機製品を作っている労働者が電機製品を買えない。まさにワーキングプアです。私たちの「米つくってメシくえない」のスローガンは、国民の前に立ちはだかっているこの壁を打開する運動に共鳴し、合流し、政府を揺り動かしました。

 なかでも、東北・北海道6県の農協中央会の会長が、われわれと同じ要求を掲げて、JA全中に対して「政府に働きかけるべきだ」と求めました。このあたりから、情勢が大きく動きました。

 政府と民間による過剰米処理の方針は、市場に影響を与え、わずかではありますが値上がり傾向にあります。運動の力で政府を動かしたことに大いに確信をもつと同時に、政府が秋口の段階で買い入れを行っていれば、米価の大暴落を防ぐことは可能だったことは明らかです。今日まで事態を放置してきた民主党政府に万感の怒りを表明するものです。

 そして、来年度以降の米価がきちんと生産費を保障するものになるように、政府が価格と流通に責任を持つ方向に大きく踏み出すべきだ。この主張と運動をさらに強める必要があります。

 WTO、FTA、TPPとのたたかい

 もう一つの農政のたたかいの焦点は、WTO、FTA、TPPとのたたかいでした。そして、TPPを阻止するたたかいは、いまどういう状況まできているのか。

 2010年10月1日、菅首相の所信表明での発言が出発点でした。あれ以後の運動の広がりは、「燎(りょう)原(げん)の火」の勢いです。共同通信によると、TPPに反対する決議をあげた道県は、「明確に反対」が14、「慎重に」というものを含めて39道府県議会で何らかの決議があげられています。

 市町村レベルでは、1750市町村のうち766議会で反対決議が上がっています。すでにすべての市町村で採択した県は、山形、富山、熊本、宮崎。9割台の市町村で決議が上がっているのは岩手、宮城、石川、滋賀、高知、佐賀、沖縄という状況です。さらにこの春の3月議会までの間に、圧倒的多数の県や市町村で、採択をひろげなければなりません。

 JA全中をはじめ、日本医師会、肥料・農薬業界、乳業メーカーの業界団体など、農業・食料にかかわる団体はもとより、広範な団体が反対、あるいは危ぐする声をあげています。

 今日の運動の広がりは、90年代初めのガット・ウルグアイラウンド批准受け入れ阻止、WTOの国会批准反対、あのレベルの運動を突破する勢いとなっています。

 生産と販路の確保、担い手作り、地域活性化させる運動の発展

 もう一つ強調したいのは、この間の生産と販路の確保、担い手づくり、地域を活性化させる運動の発展です。

 昨年8月に研究交流集会をやりました。ここで出された全国の経験は、たとえば耕作放棄地を解消するために、新日本婦人の会や、産直をともに進めている生協の組合員、食健連などの人たちと共同して作付けをし、地産地消の運動に生かしている経験。あるいは、この低米価のもとで、米加工に挑戦して付加価値を付けることによって、1俵の米に換算した価格が10万円以上にもなる、こういうたくましい取り組みの経験。あるいは、高齢化社会の中で、買い物難民が社会的な問題になっています。マンモス団地などで商店街の八百屋さんなどがどんどんなくなる。そういう中で、移動直売所を開いて高齢化した住民のみなさんに喜ばれている経験など、まさに地域の資源を生かした創意あふれる運動でした。

 民主党政権の「新成長戦略」はTPP=輸入自由化であり、自給率が4割しかない日本が外国に輸出をするというひっくり返った発想であり、企業が農業・農村に進出する方向です。しかし、私たちが研究交流集会で交流し、いま全国で取り組んでいるこの運動こそ、本当の成長戦略ではないでしょうか。

 この方向こそが内需を豊かに発展させ、農村経済と日本経済を立て直す方向なのだということ。そして、これを政府が後押しし推進することがどんなに大事かということを、この間の私たちの生産、地域を活性化する運動の中で、教訓として作りあげてきました。

 口蹄疫(こうていえき)被害対策のたたかい

 ここで特に申し上げたいのは、宮崎県で昨年4月に発生した口蹄疫の被害を救済し、復興するたたかいです。昨年4月に発生して以後、宮崎県農民連は、あの暑い夏に至るまで、不眠不休の救済運動に全力をあげました。私はこの大会の場で、あの苦難に満ちた状況、牛や豚のうめき声が聞こえるような状況の中で、ほんとうにがんばった宮崎の仲間に大きな拍手を送りたいと思います。(拍手)

 宮崎の仲間の奮闘に応えて、全国でもサポートする運動が自らの課題として展開されました。口蹄疫特措法を制定させ、その後の再建運動、さらには全国から多くの募金が寄せられました。

 そして、「食べて救援」の運動。現地の加工業者と提携し、全国から買い支えた運動が、どれほど大きな支えになったか。これらにご協力いただいた全国の仲間のみなさんに、改めて感謝申し上げます。(拍手)

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2011.2.21付)
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2011年2月

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