TPP(環太平洋連携協定)阻止の
国民共同を構築し、農山村を再生する
“核”となる組織づくりに挑戦しよう(4/5)
農民連第19回定期大会決議(案)
2010年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会
8、環境、地球温暖化防止の運動
2010年は、多くの国民が温暖化の進行を実感した年でした。COP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)で法的拘束力のある国際協定に合意することができなかったことは残念であり、COP16での合意が強く求められています。民主党政権が自ら打ち出した、2020年までに温室効果ガスの排出量25%削減を実現させるために、大口排出源の規制をはじめとする国内対策の実施を要求します。
また、食料自給率を向上させること、食糧主権の立場に立った政策こそが温暖化防止に役立つことを大きく打ち出し、農政の転換を要求します。暮らしや生産のなかでの温暖化対策を進め、政府や自治体に対して支援策を要求しましょう。公害・地域問題懇談会(公害地球懇)などとの共同を広げ、署名を広げましょう。
9、多面的な要求運動について
(1)農業破壊攻撃をはね返す、生産と販路を広げる運動
(1) 「準産直米」のとりくみの飛躍を
異常な低米価は、これまでの米流通に激変をもたらし、「準産直米」の役割を大きくしています。農家や農協、自治体が新たな販路を求めて準産直米に合流する動きが生まれ、大手業者を含めて新たな仕入れルートを開拓するために農民連との提携を求める動きもあります。
こうした新たな条件も生かし、準産直を全国ネットワークの要として、米流通に影響を与える規模に発展させましょう。広範な農家に働きかけて会員を拡大し、JA組織や集落営農組織などとの共同事業として発展させましょう。
(2)新婦人産直をはじめ、多様な産直の発展を
新婦人産直は、「食と地球を守る」を合言葉に、多様に広がっています。不況の影響や、新婦人会員の年齢構成の変化などを踏まえてさらに発展させるために、新婦人組織との話し合いや学習、交流を強めましょう。朝市や直売所、インショップ、旅館や飲食店など、地域のあらゆる消費の場面に地場産の農産物を提供するとりくみは、農家の要求であるだけでなく、“買い物難民”が社会問題になっているなかで、地域社会のニーズになっています。多様な産直のとりくみをさらに広げましょう。
学校・保育園などの給食を地産地消と“食農教育”として重視し、首都圏などの学校へ食材を全国ネットワークで提供するとりくみを発展させましょう。
東北のリンゴと九州のみかんを相互に交換する「ふるさと便」のとりくみをはじめ、多様な組織内産直を発展させましょう。
(3)在来種を守り、引き継ぐ運動
WTO(世界貿易機関)体制のもとで、食糧輸出大国による食糧支配とともに、多国籍企業によるバイオテクノロジーをテコにした遺伝資源や種子の独占など、生物多様性の破壊が進んでいます。こうした動きは食糧主権に対する逆流です。こうした動きを批判し、国際的、国内的規制を要求するとともに、生産現場でのとりくみとして、生物多様性に配慮した生産の努力、在来種を守る運動を進めましょう。
(4)市場を守る運動
卸売市場の再編整備が進められようとしています。そのねらいは、市場を大手量販店の集配センター化することにあり、東京・築地市場の移転問題の本質もそこにあります。
地方には、生産を掘り起こして小売店に供給するなど地場流通を支えている卸売市場が存在しています。地域の市場や自治体との話し合いを進め、市場を機能化させて活かすとりくみを全国的に広げましょう。
(5)安全・安心な農産物を生産する運動と食品分析センターのとりくみ
食の安全を守る運動は自由化戦略との重要な対決点です。安全・安心な農産物生産の努力を強めるとともに、農民連食品分析センターをいかした運動がますます重要になっています。
分析センターによる生産物の残留農薬検査を定期化し、農産物の安全性を証明できる体制を確立しましょう。学校給食の安全チェック、生物多様性を守る運動など、市民運動との提携を広げ、分析センターが食の安全の“相談所”としての機能を発揮できるようにしましょう。
(2)多様な要求にもとづく運動
(1)税金の自主計算・集団申告の運動
所得税の申告が住民税、国保税に連動することを見据えて、2010年度の確定申告を出足早くとりくみ、会員拡大の大飛躍に結実させましょう。基礎控除の増額、家族労賃を認めない所得税法56条の廃止、老年者控除の復活や公的年金控除の拡大、納税者権利憲章を実現する運動にもとりくみましょう。
また、春の運動時だけのとりくみから脱皮するため、確定申告が終わったらただちに記帳簿の普及と相談員の系統的な育成を進めましょう。すべての組織が税金を運動の柱に据えてとりくめるようになることは、全国的な運動と会員拡大の飛躍にとって不可欠です。
農家の切実な要求である固定資産税の負担を軽減させる運動にとりくみましょう。
(2)医療、福祉の負担軽減と改善を求める運動
民主党がマニフェストで公約した後期高齢者医療制度の廃止を先送りすることは許されません。即時廃止を求めてたたかいます。国保の広域化を許さず、国庫負担の増額、保険証の取り上げを許さない運動、出産手当の拡充、自治体に減免を要求する運動を進めましょう。介護保険制度の改善と負担軽減を要求して運動を進めましょう。
(3)総合的な相談活動を日常的に
農家は、営農や暮らし、福祉や雇用など、多方面の困難を抱えており、日常的な相談活動が求められています。弁護士や専門家、労働組合、市民団体などの力を借りてとりくみ、会員拡大にも結びつけましょう。
10、国際連帯
大企業の利益のためには農業や食糧、農村が犠牲になっても構わないという潮流への対抗軸は食糧主権にあります。日本での食糧主権を要求する運動を、世界の運動と結んで前進させるために、ビア・カンペシーナに結集して国際連帯を広げます。
11、出番の情勢を生かし、食健連運動を前進させよう
農と食を守る国民合意と共同を広げるために昨年、結成20周年を迎えた全国食健連の組織と運動を飛躍させることが重要です。すべての都道府県連と単組に対応した地域食健連を確立し、草の根から農と食を守り、地域を元気にする運動を展開しましょう。
12、暮らしと平和、消費税増税を許さない運動
(1)消費税増税を許さない運動
菅内閣が消費税率の引き上げを争点の一つにした参院選で、民主党は議席と得票を大幅に後退させました。しかし、財界は政府に増税を繰り返し迫っており、軍事費や大企業減税に手を付けないために財源不足に陥っている菅内閣も増税へのねらいを強めています。
消費税増税は、不況を深刻にし、農家や中小業者、国民生活を破壊する最悪の“国民生活破壊税”“農業破壊税”であり、絶対に容認できません。“福祉目的税”などの欺まん的な宣伝を打ち破り、真のねらいが法人税減税のための財源作りであることを国民的に明らかにして運動を進めます。消費税廃止各界連絡会に結集して、学習、宣伝、署名を広げましょう。
(2)核兵器廃絶運動を強めよう
核拡散防止条約(NPT)再検討会議の前進など、核兵器廃絶の流れが強まっています。唯一の被爆国である日本で核兵器廃絶の運動をさらに強めることが求められています。被爆の実相を世界に広げるためのとりくみを、ビア・カンペシーナ傘下の各国農民組織に働きかけ、国内外で運動を前進させましょう。
(3)改憲阻止、米軍基地撤去、軍事費を削って国民の暮らしの充実を求める運動
総選挙での自公の敗北は、改憲勢力に重大な打撃をもたらしましたが、改憲勢力のねらいは予断を許しません。引き続き、憲法改悪を許さない運動を広げ、憲法9条、25条を守り、生かす運動をさらに強めましょう。「憲法改悪反対共同センター」に結集するとともに、「9条の会」や「農林水産九条の会」の運動に協力し、9条田んぼ、9条花壇など、農民らしい創意で9条を守る運動を広げましょう。
米軍が沖縄の農民に銃剣を突きつけ、ブルドーザーで農地を奪って米軍基地をつくってから60余年、いまだに居座って爆音と犯罪を繰り返し、沖縄県民の命と財産を危険にさらしています。普天間基地の県内たらいまわしを許さず、「米軍基地はアメリカに帰れ」の運動を強めましょう。「軍事費を削って暮らしと農業にまわせ」「安保条約廃棄」の運動を強めましょう。
(4)雇用を守る運動
非正規切りをはじめ、解雇・リストラで兼業農家が職を失う深刻な状況が広がっています。兼業農家の雇用を守る運動は労働者の権利の擁護はもとより、地域の農業と経済を守るためにも重要であり、県・地域労連などと共同してとりくみましょう。
(5)地域農業を守りTPPを許さないためのいっせい地方選挙に
2011年春にいっせい地方選挙がたたかわれます。住民の福祉と暮らし、地域農業を守る自治体を実現するために重要であるだけでなく、米価の下落を放置し、TPPを進めようとしている民主党政権に審判を下す選挙としても重要な意義があります。農民の要求を掲げ、要求の通る議会を実現するために運動を広げましょう。
2011年6月にいっせい農業委員選挙が行われます。農地と地域農業を守る農業委員会の機能を強化するために農民連会員や協力関係にある方を多数、送り出しましょう。
(6)革新懇運動
政治が流動化し、国民が新しい政治を模索しているなかで、「国民が主人公」の政府をめざし、三つの共同目標((1)国民本位の経済で豊かな暮らしを、(2)憲法を生かし、民主主義の発展を、(3)日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の日本を)を掲げて活動する革新懇運動を発展させることが求められています。農村での革新懇作りに貢献するとともに、運動で結びついている広範な方々に革新懇への参加を促し、「全国革新懇ニュース」の購読を広げましょう。
(新聞「農民」2010.12.13付)
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