TPP(環太平洋連携協定)阻止の
|
関連/TPP(環太平洋連携協定)阻止の国民共同を構築し、農山村を再生する“核”となる組織づくりに挑戦しよう(1/5) /TPP(環太平洋連携協定)阻止の国民共同を構築し、農山村を再生する“核”となる組織づくりに挑戦しよう(2/5) /TPP(環太平洋連携協定)阻止の国民共同を構築し、農山村を再生する“核”となる組織づくりに挑戦しよう(3/5) /TPP(環太平洋連携協定)阻止の国民共同を構築し、農山村を再生する“核”となる組織づくりに挑戦しよう(4/5) /TPP(環太平洋連携協定)阻止の国民共同を構築し、農山村を再生する“核”となる組織づくりに挑戦しよう(5/5) |
農業・食糧、農山村を全面否定し、財界に都合のいい国に変えてしまう攻撃が吹き荒れるなか、これに反対する運動も力強く展開されています。このたたかいの帰趨(すう)は、日本農業の運命を規定するといっても過言ではありません。
こうした情勢のもとで開かれる第19回定期大会の目的は、
(1)2年間の運動を振り返るとともに、新たな情勢に対応したたたかいの発展と、組織を飛躍させる方針を確立することにあります。
(2)2009年、2010年度決算、2011年、2012年度予算を決めること
(3)新役員を選出すること
民主党は、戸別所得補償、食料自給率向上、後期高齢者医療制度の廃止、労働者派遣法の抜本改正、米軍普天間基地の沖縄県外、国外への移設など、部分的ではあっても自民党政治を修正する政策を掲げて政権を担うことになりました。
しかし鳩山政権は、選挙公約と国民の期待を裏切り、9カ月で政権を投げ出しました。代わった菅内閣は、沖縄県民の総意を踏みにじって普天間基地を県内でたらいまわしする“日米合意”の推進、アメリカと財界の要求に応えて日本の農業と食糧、地域経済を破滅させるTPPへの参加に向けた協議の開始、企業・団体献金の全面的復活など、自民党政治以上のアメリカいいなり、財界中心の政策を打ち出し、国民から強い反発を浴びています。
選挙で示された農民や国民の審判は、国民が主人公の新しい日本の政治と、新たな農政を展望するうえで大きな前進でした。この国民の意思を踏みにじるなら、どの党が政権を担っても長続きしないでしょう。自公政権を打倒し、期待を膨らませた民主党政権の裏切りを体験した国民は、国民が主人公の新しい政治への模索と探求を強めています。
選挙の結果は、政府と自民党、団体が一体となったこれまでの農政を一変させ、自民党政治を支えてきた団体が相次いで全方位の対応方針を打ち出しています。そして、米価対策やTPPに反対する運動できびしく政府に対峙(じ)し、一致する要求で従来の枠を超えた共同の広がりがつくられています。
こうした条件をいかし、一致する要求で農協や広範な農業団体との共同を広げ、国民諸階層との共同に発展させるなら、農業・食糧、農山村を再生する新たな政治への流れになるでしょう。農民の要求を高く掲げ、農業と農山村の再生と政治を変える運動を結んで力強く発展させること、この運動を農村で担う農民連を大きくすることが、今ほど求められている時はありません。
選挙のなかで、「農民連の要求と提言」、新聞「農民」号外で多くの農家や国民に働きかけ、米価下落対策を要求するたたかいや、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)への態度を問う各党公開質問状(食健連)、「日本農業新聞」への意見広告などが、農家や農業関係者を激励し、農業・食糧問題を争点にするうえで大きな役割を果たしました。
米価下落の大本の原因は、「米改革」で政府が米の管理責任を放棄し、市場任せにしたことにあります。政府の需要見通しの誤りから生じた「過剰」にも何らの対策もとらず、備蓄米の買い入れを怠る一方、超古米の放出を続け、ミニマム・アクセス米の輸入を優先して行ってきました。
民主党政権は備蓄米を超低価格で買い入れ、市場米価が下がっても「米戸別所得補償モデル事業で補てんされる」「需給調整のための買い入れはしない」とくり返し言明し、これが市場に「米価先安」のメッセージを発信し、業者には“買い控え”産地には“売り急ぎ”をあおり、米価下落の悪循環を招きました。
農民連は、2009年春以来、「政府が自ら決めた備蓄水準を守れ」「生産費を保障する価格で買い入れよ」「過剰米対策で米価下落にストップを」等の要求を掲げ、全国的な運動を展開してきました。議会請願運動、地域集会やトラクターデモ、宣伝行動、農協・自治体要請などにとりくみました。JA全中・全農、全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)、日本チェーンストア協会、日本フードサービス協会に申し入れを行い、「日本農業新聞」紙上での意見広告も反響をよびました。2009年の「8・5中央行動」では、350人の農民と労働者による農水省包囲デモ、150人の農民による農水省交渉、与野党本部への要請行動にとりくみ、運動の大きな節目となりました。
2010年は、「米つくってメシくえねえ」のスローガンを掲げた「9・10中央行動」が各地のとりくみに発展し、多くの農民や農協等の共感を広げました。
こうした運動が情勢を動かし、全国農協中央会(JA全中)が農民連と同様の要求をかかげ、政府に要請を行うに至り、2009年11月に16万トンの備蓄米買い入れ方針を打ち出させ、2010年秋には、集荷円滑化対策の基金を活用した民間による過剰米対策を政府が容認せざるを得ない状況をつくりました。
しかし菅内閣は、鳩山内閣が打ち出した「新成長戦略」を財界の自由化戦略に沿った方向で具体化し、アメリカの強い要求も受けて2010年10月1日の臨時国会冒頭で唐突に、TPPへの参加の検討を言い出し、11月のAPEC首脳会議で世界に向けて表明しようと画策するに至りました。
農民連・食健連は、2010年6月に札幌市で開かれた「APEC貿易担当閣僚会議対抗行動」、10月の新潟市での「APEC食料安全保障担当閣僚会議」、11月の横浜市での「APEC首脳会議」に対抗する行動を展開し、自由化反対のアピールを行ってきました。
こうした運動は、TPP反対の世論を強め、JA全中や全国漁業協同組合連合会、全国森林組合連合会と市民団体が共同した大規模な集会やデモに発展し、地方でも同様の運動が大きく広がる契機となりました。
改悪法は成立したものの、農民連・食健連を先頭にした改悪法案阻止のたたかいは、短期間に情勢を動かし、法案に反対する団体請願署名は2000団体近くまで広がり、多数の農業委員会の反対建議や、地方議会の意見書採択も相次ぎました。各界の有識者による「共同アピール」も大きな力になりました。不十分ながらも法案を修正させたことは、こうした運動の反映でした。
2010年春に宮崎県で発生した口蹄疫は、11市町に広がり、牛・豚への感染・感染疑いは、21万1608頭、ワクチン接種後の処分を合わせると、殺処分された家畜は29万3896頭に及び、宮崎県の畜産と地域経済に重大な被害をもたらしました。
農民連は、宮崎県連や「口蹄疫対策県民ネットワーク」と連携して、政府にまん延防止や農家の救済、地域経済の復興策を要求して運動を広げてきました。また、義援金や、「食べて支援しよう」と現地の食肉処理会社と提携した冷凍牛肉の購入を呼びかけました。農民連の運動は、「口蹄疫特措法」の制定や、不十分ながら基金をつくらせるなど、政府を動かす力になりました。
BSE対策が不十分なアメリカが、日本政府に牛肉の輸入条件を30カ月齢以下に緩和する圧力をかけているなかで、これを阻止する運動を展開してきました。
これまでの環境負荷に配慮した生産の努力や、国内で自生している輸入遺伝子組み換えナタネの告発などのとりくみ、COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)などの国際会議に対応した運動、公害地球懇署名、生産現場での低コスト・低負荷の生産努力などの運動を広げてきました。
農民連は、(1)2008年産米の生産費は60キロあたり1万6497円であるにもかかわらず、モデル事業では補償水準を1万3703円に値切り、地域の条件を無視した全国一律の交付であること、(2)下落したら補てんするというやり方が買いたたきの要因になりかねないこと、(3)「水田利活用自給力向上事業」の交付水準がこれまでの「産地確立交付金」等に比べて著しく減額されていることや、麦、大豆等の戦略作物以外の「その他作物」の交付単価があまりにも低すぎて転作が困難になる、などの点を指摘し、政府に改善を要求してきました。こうした運動が転作助成を上積みさせ、加工米の認定の幅を広げさせるなどの成果を勝ち取りました。
こうした運動とあわせて、2009年7月に、歯止めなき輸入自由化にストップをかけ、価格保障と所得補償の2本立ての政策の実現、国をあげた本格的な後継者確保などを柱にした「農民連の要求と提言」を発表し、普及したことは、運動を広げる力になりました。
米価の下落は、農民連傘下の産直組織の経営や、準産直米のとりくみにも影響を及ぼしましたが、全国ネットワークの力を生かし、粘り強く中小米流通業者との交流を積み上げ、基本的に取り扱い数量を維持していることは貴重な成果です。低米価や戸別所得補償のもとで、多くの農家や農協、自治体が販路の確保を求め、準産直米への期待を広げています。
県連では奈良県連をはじめ、会員と読者を前進させている組織が生まれていることは貴重な成果です。この間の会員拡大の特徴は、暮らしと経営が脅かされているもとで重税や負担増の軽減を求める要求にもとづく加入、大規模農家や集落営農組織が準産直米や産直、直売所などの生産・販売の要求で加入しています。農家の要求にかみ合った対話や働きかけを行えば会員拡大の飛躍は可能です。
また、TPPなど農産物輸入自由化に対する農民の怒りが大きく高まっているもとで、たたかいの先頭に立つ農民連への期待も大きく、会員拡大を前進させる条件が広がっています。
新聞「農民」は、食と農をめぐる動きや農政が激動しているなかで、現場の農民の声を伝え、世界の食や環境、米価問題、食の安全など、国民や農民の関心に応える報道を通して、自公政治に審判を下す役割を果たしてきました。農協や農業委員などに一定の読者を持っていることが、運動を前進させる力になっています。購読を働きかける努力をすれば読者拡大を前進させることは可能であり、働きかけの頻度を増やすことが前進のカギです。
[2010年12月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2010, 農民運動全国連合会