「農民」記事データベース20100830-938-02

EPA・FTA戦略をはじめとした
農政とのたたかい(2/2)

農民連全国研究交流集会への報告 真嶋良孝副会長

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民主党の自由化推進路線は根深い

 民主党は、2002年8月に「産業再生戦略」を発表していますが、その中では「FTAを結ばないことによる不利益を緩和するため、WTOによる多角的自由化を重視しながらも、(アメリカ、オーストラリアを含む)環太平洋地域を中心にFTAの締結も積極化していくべき」「FTA締結を、農業を始めとする国内の保護主義政策見直しの契機とし、産業構造改革を推進するために活用していく」などと提言しています。

 「小泉構造改革路線」とウリ二つですが、これをとりまとめた中心人物は、現在の外務大臣の岡田克也氏(座長)と、厚労大臣の長妻昭氏(事務局長)です。

 また、2005年4月には「経済外交基本方針」をまとめています。そこでは、自民党のやり方を「小出しの自由化」だと批判し、民主党は「原則自由化」、つまりアメリカや中国を含む国々と全面自由化を進めることを公言しています。また、自由化にあたっては「価格保障ではなく所得補償制度として確立することによって輸入を妨げ」ないことを強調しています。民主党は、米価暴落対策をとることを強く拒否し、戸別所得補償にこだわりつづけていますが、その背景にあるのが、「価格保障をすれば輸入規制せざるを得ないけれども、所得補償なら輸入をまったくフリーにしてカネをばらまくことができる」という、彼らの哲学です。

 この基本方針をまとめたチームに、農水大臣の山田正彦氏が副座長として参画していることもきわめて象徴的です。

 さらに、菅首相が民主党の代表だった2004年度の定期大会では、菅氏は「農業を強化することは、FTAを推し進める条件整備にもなり、貿易立国を維持していくうえでもやらなければならない大改革」とあいさつで述べています。

 このように、民主党の自由化推進路線は、きわめて根強いものがあるということもよく見ておく必要があると思います。

米価と最低賃金引き上げこそ、成長戦略・内需拡大の柱

 菅政権が打ち出した内需切り捨て・外需依存の「成長戦略」では、景気回復も経済成長もできるはずがありません。国内総生産(GDP)544兆円のうち、内需は522兆円で、家計消費支出は300兆円です。GDPの55%を占めます。貧困と格差拡大のなかで落ち込んでいる家計消費支出を拡大することこそが経済成長の決め手です。

 だからこそ、富士通総研という大企業のシンクタンクは「最低賃金引き上げは最大の成長戦略」と指摘しています。労働運動総合研究所は、最低賃金を「時給1000円」にすれば、国内の内需は5・8兆円拡大し、それによって国内生産が22・4兆円誘発されると試算しています。

 一方、稲作農家の自家労賃は、図3のように最低賃金の4分の1から2分の1程度で、この15年間に農家が失った所得は毎年約3兆円にものぼります。これを回復させることが内需拡大にとって決定的です。そういう意味でも、米価回復は緊急の課題です。


秋のたたかい―APEC対抗市民行動
―自由化ノー、新潟・横浜に集まろう
 農民連・全国食健連は、APECとCOP10(生物多様性条約締結国会合)にむけた「対抗市民行動」を行います。

10月16日(土)新潟市〜食料安全保障大臣会合にあわせて
国際フォーラム(ビア・カンペシーナを迎えて)と提灯パレード
11月14日(日)横浜市〜首脳会合にあわせて
街頭アピールと内橋克人氏(経済評論家)の講演
「自由化は経済と国民の暮らしを脅かす」

COP10(名古屋市)では10月20〜21日を中心に

 COP10は、10月11〜29日まで名古屋市で開かれますが、農民連・全国食健連は、来日するビア・カンペシーナの代表とともに、国際フォーラム(20日)や農家・農村との交流などを企画しています。とくに青年の参加を訴えます。また、地球温暖化問題と結びついたNGOなどとの連携も強めます。

 EPA・FTAをめぐる秋のたたかいに、多くの方々が参加するよう呼びかけます。

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(新聞「農民」2010.8.30付)
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2010年8月

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