EPA・FTA戦略をはじめとした
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農民連全国研究交流集会(8月3〜5日)で、真嶋良孝副会長は「参院選挙の結果と、EPA・FTA戦略をはじめとした農政とのたたかい」と題して特別報告を行いました。そのなかから、菅内閣のEPA・FTA戦略と秋のたたかいについて、紹介します。
FTA(自由貿易協定)は、商品の貿易自由化を進める協定。EPA(経済連携協定)は、商品のほかに、投資・労働力移動・サービス貿易の自由化を進める協定。
「強い経済」の中身は、日本を高齢化し衰退していく国家と規定し、日本市場(内需)をないがしろにして海外依存をさらに強めることです。
その中心の一つが「アジア経済戦略」であり、FTA・EPA戦略にもとづく農産物輸入の全面的な自由化と主要な工場の海外進出、原子力発電や新幹線・上下水道など海外インフラ整備への大企業支援です。
日本農業新聞は「財政支出を伴わない高い経済成長効果が期待できるのは、貿易の自由化と規制緩和だ。今後はEPAの促進や規制改革の動きが活発になるだろう」(7月12日付)と報じています。
すでに自動車メーカーはインドや中国、タイで生産し、逆輸入が始まっていますし、衣料安売りのユニクロはバングラデシュに工場を作り安い労働力で生産した激安製品を国内で販売しています。しかし、こういう方向に展望はありません。本格的な内需拡大をめざすのではなく、より大規模に外需依存を進めるところに菅政権の「新成長戦略」の本質があります。
6月にカナダで開かれたG8サミットでは、毎年お決まりとなっている「WTO年内妥結」を表明することができませんでした。来年以降、大きく進展する可能性も高くはありません。
その柱は、図1のように(1)APEC(アジア太平洋経済協力会議)21カ国を対象にする「アジア太平洋FTA(自由貿易圏)」(FTAAP)を結ぶことを中期(2020年)目標に、(2)日豪、日韓、日ペルーFTAの早期締結、(3)日中韓のFTA共同研究は2012年に終えて交渉に入る、(4)日米FTAは経済連携のあり方を検討し、(5)APEC域外のインドやEUとの交渉も進めるというものです。
これは、アフリカとラテンアメリカの大西洋側諸国(ブラジル、アルゼンチンなど)を除くすべての国々と自由化戦略を推し進めようとするものです。しかも「関税の削減・撤廃」を掲げ、「ヒト・モノ・カネの流れを倍増」をスローガンにしていますが、これでは農産物の輸入も「倍増」することになります。
経団連は6月15日に「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」という提言を出していますが、これは菅政権の「新成長戦略」とウリ二つです。違うところといえば、「新成長戦略」では妥結年限をぼかしていますが、経団連の提言では、日中韓FTAの妥結年限を「遅くとも2015年前に妥結」、日豪EPAは「2012年度までに妥結」などと明示していることです。
日米安保条約(2条)や農業基本法のもと、自民党農政による自由化で、米をのぞく穀物と大豆の生産は「安楽死」させられ、アメリカやオーストラリアから輸入される体制ができあがりました。その後、日本の生産構造は畜産・野菜・果実の選択的拡大と米の減反で大きく変わりましたが、ここを襲ったのが中国・アジアからの輸入でした。
アメリカ・オーストラリアが「前門の虎」なら、中国・アジアは「後門の狼」です。ですから、「アメリカやオーストラリアとのEPA・FTAには反対だが、アジアとのFTAはいいんだ」というあいまいな態度をとることは絶対に許されないと思います。
ところが、驚いたことに同じ会議で総合商社・双日の加瀬豊社長は、ルース大使に「日本は『外圧』に影響されやすい側面があり、日米FTAに関してはアメリカ側からより積極的な説得のアプローチが実行されることで、その締結を早期に実現する方法もご検討いただきたい」と、「外圧」をかけるよう陳情さえしています。
また菅政権は、5月末に「日中友好商社」といわれ、中国に最も強い伊藤忠商事の会長、丹羽宇一郎氏を中国大使に任命しました。同大使は「日中のFTAを進めないと、日本は完全に取り残される。早急に問題を解決するよう首相に申し上げたい」などと述べていますが、総合商社の会長を大使にするなどということは自民党でもできなかったことです。菅政権になってからの経団連との蜜月ぶりは、あまりにも異常です。
[2010年8月]
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