「農民」記事データベース20090914-893-01

自民農政への怒り爆発

さらに要求実現へ向け全力

 総選挙の結果は、与党の自民・公明両党が大敗、野党の民主党が大躍進し、日本共産党と社民党は現状維持。農産物の輸入自由化と選別化・規模拡大の「構造改革」を推し進めてきた自民党農政は、国民の怒りをかって退場に追い込まれました。一方、日米FTA(自由貿易協定)推進を掲げる民主党にも、不安や批判の声があがっています。各地の組合員に聞きました。
(農民連・白石会長の談話は2面に掲載)

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政権かわっても新たな不安が

北海道音更町の畑作農家・田守文夫さん(45)

 長く「中川王国」といわれてきた十勝地方でも、中川昭一前財務・金融担当相が落選するという劇的な変化が起きました。しかし、私は当然の結果だと受け止めています。

 とくに、自民党が進めてきた「品目横断」対策に対する農家の怒りは大きかった。「人よりもがんばってたくさんつくる」というのが農家の誇りなのに、たくさん収穫してもお金にならない。政治の都合でやる気をそいだ罪は重いと思います。

 政権が代わっても、日米FTAなど、新たな不安もあります。外圧や政治の駆け引きに左右されず、現場で働く農民の願いを実現する農政に変えなければなりません。そのために私も、農民組合とともに大いにものを言っていきたい。自国の食料生産を担っている心意気です。


安心して農業で暮らせる政治を

岩手県岩手町の岩崎金次郎さん(77)

画像 タバコと米を作っています。タバコの団体は自民党支持なのですが、自民党ではやっていけなくなることがもうはっきりしています。

 この地域は、父親が首相経験者で、本人も大臣になったことがある鈴木俊一氏の地盤で、必ず当選する人でしたが、民主党候補が当選しました。しかし日米FTAなど、民主党にも期待がもてないという話がかなり出ています。

 健康志向でタバコも先細りです。これからの政治には、やはり米の価格をなんとかしてほしい。

 今年、地域から小学校へ通う1年生がついに1人になってしまいました。農村に後継者をつくることがすっかりできなくなってしまっているのが実態です。安心して農業をやって暮らせるような、そんな政治を期待しています。


保守地域の雰囲気変わった

群馬県高崎市のトマト農家・木村君江さん(67)

画像 保守王国の群馬では、民主党の日米FTA推進をはじめ、各政党の危険な政策の中身が農家に意外と知らされていません。本当のことを知らせてくれる人が少ないんです。福田前首相のポスターが張られた農家にも対話に行きましたが、要求や政策では一致できても、支持する政党の「変え方」がわからないんですね。あまりに保守が強い地域で、支持政党を変えてもいいのかと、勇気がいる。対話してはじめて「そういうことだったのか」と驚かれることがありました。

 それでも「こんなに米の価格が下がったらやっていけない」という思いが広がっていて、地域の雰囲気がうんと変わってきたと実感しています。農民連の役割がますます大切になっています。


今度は民主党…やはりいかん

福岡・みのう農民組合の足立博幸組合長(71)

画像 自民党の農政がとうとう終わった。同時に、今度は民主党の農政かと思うと、やはり民主党でもいかん。

 戸別所得補償とやらで、1俵の米価が5000円になっても、1万円を付けてやると言っているが、努力もしないでバラマキをやると、努力しない人が出てくる。また民主党は、日米FTAを促進するそうだが、米を除外すると言っている。しかし、そんな話は通るはずがない。

 とにかく、小さな農家でも勤めながらでも、やっていける農家を応援してほしい。

画像
新聞「農民」号外を手元におきながら学習する、みのう農民組合のみなさん(手前左が講師の村尻勝信常任委員)


農家は危機を肌で感じている

長野市で米とりんごを作る小山榮人さん(79)

 長野県でも自民党の小選挙区候補が全員落選しました。「やったぞ!」という気持ちです。この選挙で初めて農協の支所や、つながりのない専業農家を回りました。保守系と思っていた農家も、自由貿易最優先、農業つぶしの政治に怒っていて、まじめに農業をやっている人は農民連の主張と一致することを実感しました。

 長野の特産のりんごは、貿易自由化で輸入ジュースがなだれ込み、価格が暴落しています。米価も再生産できない価格です。年金頼みの農業の現状や農地法改悪を見て、ある農家は「今、農業はなんとか続いているかもしれないが、農村がなくなりそうだ。農民がいなくなりそうだ」と言っていました。農家は皆、この農村の危機を肌で感じています。引き続き、農民連が地域で役割を果たせるよう、がんばります。


農民が自ら判断する力つけてきた

新潟県阿賀野市 稲毛明さん(58)

画像 新潟では、自民党が小選挙区で全敗しましたが、出るべくして出た結果だと思います。「自民を落とせ」「1回でもいいから、政権を代えてみたい」という思いがこんなに表立って語られたことはありませんでした。

 農民の怒りは昨日今日のものではありません。農民連をはじめ、長い運動の中から生み出された流れです。農家の間には、「減反させながら、外米を輸入するとはなにごとだ」という怒りが、長いこと渦巻いています。

 一方で、阿賀野市では農民連の活動が目に見える形で取り組まれています。とくに昨年取り組んだ軽トラパレード以降、「運動を起こさなければ何も変わらない」という共感をヒシヒシと感じます。こうした気運が、自民党政権を終わらせるエネルギーになったのではないでしょうか。農民が自分で判断する力がついてきたのだと思います。


農水省

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 2面に関連記事

(新聞「農民」2009.9.14付)
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2009年9月

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