「農民」記事データベース20090817-889-04

総選挙

いまこそ農民一揆!
農政の大転換(2/3)

輸入ストップ 価格保障

関連/総選挙 いまこそ農民一揆! 農政の大転換(1/3)
  /                    (2/3)
  /                    (3/3)


 日米財界は農業を含む完全自由化を要求

 第2に、日米FTAを強力に推進している日米財界の主張からいっても、事実関係から見ても、農業を例外にした日米FTAなどありえません。

 日米財界は、農産物を含む全面的な日米FTAを結ぶことを一貫して要求しつづけています(「日米財界人会議共同声明」08年10月7日など)。民主党のFTA問題の責任者も、アメリカ政府から、農業を抜きに「日本とはFTAの議論はできない」という圧力があったことを認めています(「週刊東洋経済」8月8日号)。

 実際、日米の関税率を比べると、日本は工業製品の関税がほぼゼロなのに対し、重要農産物の関税率は高く、アメリカはその逆。これでFTAを結ぶとすれば、アメリカ側は日本の農産物市場の明け渡しを求めてくるのは理の当然です。アメリカにとって“農業除外”の日米FTAなどなんの魅力もなく、米や小麦、牛肉などの“本丸”を攻めてくることは、火を見るより明らかです。

「世界の流れは食糧主権」―全国食健連の国際シンポジウム(2007年5月)

 日米FTAで米生産は82%減!
画像 たとえば「日米経済協議会」(日米財界人会議の日本側主催者)の委託研究報告書は「アメリカは米をはじめ…重要農産物のさらなる市場自由化を求めてくるに違いない。これまでのFTAとは異なり、これらの農産物の市場開放を拒否し続けて合意が得られるとは考えがたい」と指摘。さらに、日米FTAが結ばれたら日本の米生産は82%減るという試算を示したうえで(図2)、いっそのこと米生産を放棄し、遺伝子組み換え技術を駆使した野菜工場や花工場に特化すべきだと要求しています(「日米EPA:効果と課題」08年7月)。

 一方アメリカは、アーミテージ元国務副長官などが「日米同盟に関する報告書」(07年2月)で、日本農業の危機を大喜びし、アメリカと日本の経済統合にとってジャマな日本農業の解体を求めています。いわく――

(1)農業が危機的状態にある日本は、農産物の輸入をさらに自由化するしかない。
(2)米を含む全部の農産物を日米FTAの中心部分としてそ上に載せるチャンスだ。
(3)米や小麦、牛乳、肉などの生産が消滅しても、日本には農業が残っていると国民に思わせるために、日本農業を花や「高級」果実、葉菜などの「すき間部門」に集中させるべきだ。

 民主党の“農業除外”論は、どこからみても総選挙で農村票を失うことを恐れての方便にすぎません。

 底が抜けたバケツ(FTA)に水(戸別所得補償)を注ぎ込む

 ところで、日本農業新聞は「(日米FTAについての)具体的な説明がない限り、1兆円の戸別所得補償制度もかすんで見える」と指摘しました(7月28日付)。

 しかし問題は「かすんで見える」だけではなく、完全自由化を前提にした戸別所得補償は「底が抜けたバケツに水を注ぎ込む」ようなものだというところにあります。

 実際、民主党は次のように言ってきました。

「米がたとえ1俵5000円になってしまったとしても、中国からどんなに安い野菜や果物が入ってきても、全ての販売農家の所得を補償する」(07年のビラ)
「日本の農水産品の総生産額は13兆円ですよ。それを全部補償したところでタカが知れている」(小沢氏『月刊BOSS』06年6月号)

 現在の消費税歳入は約10兆円ですが、輸入を完全に自由化し、市場原理で価格暴落を野放しにしたうえで、「全部補償したところでタカが知れている」というやり方は、財源論からいって無責任であり、農家の生活を本当に守るものではありません。米が1俵5000円という想定も日米FTAを前提にしたものです。完全自由化が前提であって、戸別所得補償は自由化を進める手段なのかという疑念は消えません。

(新聞「農民」2009.8.17付)
ライン

2009年8月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2009, 農民運動全国連合会