「農民」記事データベース20080421-825-01

地球温暖化
どこか遠い国でも将来の話でもない
日本でも現実に始まっている

 観測史上、最高の暑さを記録した昨年の夏。各地の農産物もさまざまな被害を受けました。ところが、「地球温暖化が深刻化すると、百年後には真夏日(最高気温三〇度以上)が百日以上になる」との予測があります。地球温暖化は、日本でも現実に始まっています。どこか遠い国の話でも、将来の問題でもありません。

関連/地球温暖化/どこか遠い国でも将来の話でもない/日本でも現実に始まっている
  /地球・人類の存続かけて待ったなし! 温暖化防止(1/2)
  /地球・人類の存続かけて待ったなし! 温暖化防止(2/2)


三大湾の高潮危険地域
=国土交通省「災害情報」から作成=
東京湾伊勢湾大阪湾
:現在の海抜ゼロメートル以下
:大潮の満潮位 以下
:最大級の台風と高潮の発生、満潮が重なった時の潮位 より低い所

 洪水や干ばつなど食糧生産に被害

日本の真夏日の経年予測 「地球の自然環境は、今まさに温暖化の影響を受けている(この百年で〇・七四度気温が上昇した)」「原因は、人間活動によって大気中に排出された二酸化炭素などの温室効果 ガスである」―昨年、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、このような報告書を発表しました。

 重要なのは、「温暖化=暖かくなる」という単純な変化ではなく、場所によって、分野によって様々な現われ方をする、気候大変動を引き起こすということです。

 具体的には、(1)寒い日の減少と、暑い日の増加、(2)高緯度ほど温度が上がりやすくなる、(3)雨の降り方や降水量が変わってしまうために、世界各地で洪水や干ばつなどが多発するようになる、(4)極端な気象現象が起こりやすくなる、(5)台風が強大化する――など。これらが食糧生産に深刻な被害を及ぼすと警告されています。

 地球温暖化は、食料自給率三九%の日本の危うさと、食糧主権の重要性をあらためて浮き彫りにしています。

 人間が制御できぬ温暖化の暴走

 また、温暖化の重大な影響として、氷河、永久凍土、北極の氷が溶け出し、海水面が上昇することがあげられます。海面上昇は現在すでに始まっており、海抜ゼロメートル地帯に大都市の集中する日本にとっても大問題ですが、世界中の大都市は低地に多く、南の島国は国が消滅する危機に直面しています。そしてこれら温暖化によって特に貧しい人々、発展途上国が被害を受けるのです。

 さらに恐ろしいのは、気温上昇が引き金になって、さらに温暖化が進んでしまう「フィードバック」という現象です。気温上昇が二〜三度以上になると、「ツンドラが溶け出し、強烈な温室効果ガスのメタンが噴き出す」、「北極の氷が溶けて青い海が太陽光線を吸収する」など、人間が制御できない温暖化の暴走が心配されています。

 今の技術でガス80%削減できる

▲砂漠化がすすむオーストラリア
 IPCCは、人類が温暖化に対応しながら生活していくには、気温上昇を二度以内に抑えることを求めています。そのためには、温室効果 ガスの排出量を二〇五〇年までに世界全体で半減しなければならず、責任の重い先進国は八〇%以上の排出削減が求められています。

 世界銀行の元エコノミストで、現在、イギリス政府顧問のニコラス・スターン氏が中心になってまとめた「気候変動のための経済学(スターン・レビュー)」は、悪影響が起きてから対応するより、温暖化しないよう対策を取った方がずっと安上がりであることを明らかにしています。

 また、IPCCをはじめ世界中の科学者たちが「今ある技術、十年以内に商業化可能な技術を駆使すれば、温室効果ガスを八〇%削減できる」と述べています。日本政府は、京都議定書の議長国としても、地球温暖化がテーマとなる洞爺湖サミットの議長国としても、温室効果ガスの排出削減に真剣に取り組み、「低炭素社会」「持続可能な発展」を実現する義務があります。

(新聞「農民」2008.4.21付)
ライン

2008年4月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2008, 農民運動全国連合会