一貫して危険性を追求してきた新聞「農民」政府は輸入依存の食料政策を転換せよ(2/3)特集 中国毒ギョーザ事件の深層をさぐる/ (2/3) / (3/3)
増大し続ける開発輸入安い労賃求めアジアを渡り歩く今度の事件で、多くの国民が驚いたことの一つは、ジェイティフーズをはじめなんと十九もの食品企業が約九十品目の冷凍加工食品を「天洋食品」に製造させ、日本に輸入していたことでした。さらに、日商岩井とニチメンが合併してできた総合商社「双日」広報によると「双日食料だけでも、加工食品の工場は海外に三百二十四社あるが、そのうち百三十六社は中国だ」といいます。味の素は二十三カ国に「グローバルネットワーク」を展開し、中国だけでも子会社が十六社あることを誇らしげにホームページにのせています。 一方、日本生協連は二月十三日の記者発表で、コープ食品を製造委託している工場が中国で六十工場あり、「中国関連商品」が二百六十五、「中国で製造と最終包装が行われている」商品が百四十五にのぼることを公表し、二月中に「緊急点検」を行うとしています。 コストを引き下げるために、日本企業の企画と技術指導で海外の工場に生産させ、日本に輸入する「開発輸入」。その行き先は、図のように一九七〇年代は主に台湾でしたが、一九八〇年代になるとタイや韓国に移り、そして一九九〇年代前半には中国へと移っています。安い労賃を追い求めて、アジア各国を渡り歩いているのが実態です。その結果、安全チェック体制が弱い国に食品の生産と供給をゆだねてきました。 天洋食品の労働条件は過酷です。報道によれば、月給は日本円にして約一万〜一万二千円程度。一日十三時間も働かされていたという元労働者の証言も伝えられています。
開発企業への手厚い保護策農水省は、昨年度から五億五千万円の予算をかけて「東アジア食品産業共同体構想」なるものを始めました。食品企業が東アジアに投資しやすいように情報の提供や人材の育成、技術開発を行おうというもの。食品企業が安い食材と安い労賃の東アジアにどんどん進出して、現地で“もうけ”を増やすお手伝いを国が予算までつけてやろうということです。しかも、これを実行する「食品産業海外事業活動支援センター」のセンター長は農水省の天下りです。中国の農民と「民工」と呼ばれる農村からの出稼ぎ者の低賃金の犠牲のうえに、安全を二の次にして進められてきた「開発輸入」。これを野放しにしてきたから、今回のような事件を生んだのに、さらに「開発輸入」を促進しようという農政に、強い怒りを感じます。 共同通信社の世論調査によると、今回の事件を通じて行政に望むことで最も多かったのは「国内の農業を見直し、食料自給率を高める」の五五%でダントツでした。食料自給率が三九%という中で「やっぱり国産」と再認識されようとしています。「開発輸入」企業は、“もうけ本位”を見直し、安全・安心な国内で生産された食材を国民に供給すべきです。
学校給食全国578校で使用国産の安全な食品を中国製の冷凍食品は、学校給食でも使われ、文部科学省の調査によると、天洋食品製造の冷凍食品を使用していた学校は、全国で五百七十八校。今月六日には、北海道小樽市で、中国産塩漬けマッシュルーム入りのカレーを食べた児童らが下痢・腹痛を訴える事件も発生しています。全教栄養職員部部長・東京板橋区中台小学校栄養士 中村扶美子さん 地産地消の学校給食が広がってきた矢先の事件発生。やはり地産地消をすすめ、日本の農業を充実させることが根本的解決にかかせない、という思いを強くしました。 問題の冷凍食品を使っていた学校給食のリストを見ると、センター方式が多い。自校直営方式なら手作りも可能ですが、センター方式は労力をかけないで、大量調理しなければならず、バリエーションをつけるために、どうしても冷凍・加工食品が多くなってしまうのです。しかも価格も安い。 食材費が高騰していますが、給食費はそうそう値上げできません。センター給食だと現場の工夫でしのぐことも難しく、安い冷凍・加工食品が増えることになります。 文科省は通知を出して、学校給食の合理化を推し進めていますが、今こそ国産の農産物を使った安全で豊かな学校給食を求めて、運動していきたいと思います。
(新聞「農民」2008.2.25付)
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[2008年2月]
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