世界的視野で食糧主権の確立をめざし、
地域で農業と農村を再生する運動を広げ、
強固な農民連をつくろう!(2/3)
第17回大会 常任委員会の報告
関連/世界的視野で食糧主権の確立をめざし、
地域で農業と農村を再生する運動を広げ、
強固な農民連をつくろう!(1/3)
/ (2/3)
/ (3/3)
こうした全国的な到達点があるものの、各県・地域では、貴重な経験・前進を作っている組織が少なくありません。
前進した組織に共通した経験・教訓についてのべたいと思います。奈良県をはじめ、いくつかの県連がこの間、組織現勢を前進させています。その教訓は、第一に、県内農家比での積極的で大志ある目標を掲げ、役員会で繰り返し、議論と具体化を行い、どこに可能性があるかということを専従者や役員が一丸となって、日常的に探求してきたことにあります。奈良県などでは、毎週、産直センターを含めた専従者会議を開いて意思統一や交流を行うなど、目標を達成するための日常的な探求が行われています。農民連の専従者と産直センターの専従者が一緒になってやっていることが重要です。ここに生産を広げ、仲間づくりを広げ、農民の要求運動を前進させた一番の教訓があります。
二つ目に、税金、生産・産直、固定資産税、労災など、農民の要求は多面化しています。ひとつ要求課題からだけの接近ではなく、文字通り、農民の生活や生産の場に踏み込んで要求をとらえ、一緒に実現する多様なメニューを取りそろえる運動を進めていることにあります。
三つ目は、会員をいかに大事にするか。そして会員の集まる機会をいかに提供するかです。班長、支部長、単組の組合長などの一番の役割は、みんなが集まれる段取りを調整することと言っても過言ではありません。
四つ目は、前進した組織での専従者・役員と組合員の結びつきが深いことです。奈良県のある専従者が「会議に来たときの姿や発言からだけでは、その組合員の本当の姿はわからない。その方の家に足を運んで、田んぼ・畑を見、家族の顔色を見、そうすれば本当の農家の姿が浮かび上がる」と発言しています。奈良県の拡大の成果の多くは、会員さんの紹介によるものですが、前進しているところでは、こういうことが力になって、組合員が自信をもって仲間を紹介しています。こうした教訓を組織全体で共有し、力にしようではありませんか。
III 情勢について
(1)亡国政治のもとでつくられている異常な日本社会
決議案は、小泉「改革」が国民生活に重大なしわ寄せをもたらし、あらゆる分野で格差を広げ、ワーキングプアといわれる貧困層が日本の全世帯の一割にも及んでいることなど、異常な、ゆがんだ日本社会が作り出されていることを指摘しています。
こうした現象は農民のなかでも同様です。米不足にもかかわらず生産コストを手取りで四千〜五千円も下回る異常な米価が押し付けられて、農業では生活できない農業ワーキングプアの現象や、都市と農村の格差がひろがり、住めない農村となり、過疎や農山村の崩壊という事例も作り出されています。
こうした事態は、グローバリゼーションへの対応を旗印にして経済、税制、通商政策、社会保障、労働法制など、大企業が生き延びるのに都合のいいような規制緩和を行った結果です。食糧庁がなくなり、政府が米の流通への責任を放棄した結果が、今の米価の現状です。
小泉政治の継承をうたって登場した安倍内閣は、憲法改悪を公約した初めての内閣です。政権発足後にやったことが教育基本法改悪の強行です。憲法改悪が戦争する国づくり、教育基本法改悪は戦争する人間づくりであり、そのための教育への国家介入・支配です。愛国心教育はその最たるものです。防衛庁が防衛省に格上げされ、海外派兵が自衛隊の主要任務にされました。侵略戦争への無反省から靖国神社への参拝を繰り返し、アジアや国際社会から孤立する事態が広がっています。
戦争は最大の犯罪であり、戦争のない社会をめざすことこそ国際社会の流れです。アメリカ言いなりに戦争する国づくりほど、異常で時代遅れなことはありません。私たちは、安倍内閣の危険なねらいを厳しく見ながら、たたかいを国民的に広げる必要があります。
元旦に日本経団連の御手洗会長が「希望の国」という提言を発表しました。十九のテーマで、国のあらゆる分野にわたって一握りの大企業にだけ都合のいい提言を行っています。そのなかでEPA・FTAの締結、日本国憲法の改悪など、財界のねらいが浮き彫りになっています。日本経団連は、この提言にもとづいて政党を評価し、出来具合によって政治献金の額が決まってくるでしょう。こうした政治は、国民との矛盾を広げ、自民党政治の危機をますます深めることになります。
(2)農業をめぐる情勢
1、ゆきづまるWTO、食糧主権を求める国際的な世論と行動、EPA・FTA問題
(略)
2、戦後農政を“総決算”する農業構造改革、品目横断的経営安定対策
(1)単なる農政の改変にとどまらない財界戦略による「戦後農政の総決算」
決議案は、農業構造改革は、WTOと財界の要求を最優先にして農地制度を軸にした家族経営と、これを支援する戦後農政の枠組みを否定・破壊するものと批判しています。現に、すべての農家を対象にした諸制度が担い手中心に見直され、市場主義が貫徹され、農協の解体など、攻撃は農業のあらゆる分野に及んでいます。
最大の問題は、危機に直面しているWTO流の自由化路線をさらに推し進め、自給率が四〇%しかない日本の生産をさらに縮小して、食糧の外国依存をさらに強めることにあります。
いま、世界の食糧は重大事態にあります。FTAによって日本が食糧をさらに依存しようとしているオーストラリアを空前の大干ばつが襲い、米生産は前年より九割減、小麦で六割減という事態となっています。国内の生産を縮小して、国民の食糧をこういう国に依存することほど亡国的で無責任なことはありません。
人類は自然に働きかけ、数千年にわたって食糧を確保してきました。輸出型農業、経済効率優先の流れがWTOによってさらに加速され、自然への働きかけの仕方が自然との共存を破壊する方向に変化し、生産構造に重大な影響を与えています。
また、原油高騰を背景に主食である穀物がエタノールとして燃料に代替され、「人間と自動車の食糧の奪い合い」という状況がつくられ、すでに穀物市場に重大な影響をあたえています。飢餓人口は世界で八億五千万人いると言われています。十分生産できる力がありながら、がんばっている農民を生産から締め出して生産を縮小するような政治は世界中のどこにもありません。こうした農政を一日も早く転換させるためにたたかおうではありませんか。
(2)破たん状態に陥りながらゴリ押しされる品目横断的経営安定対策
昨年十一月に締め切った、秋蒔(ま)き小麦の「ならし対策」への加入は、個人の認定農業者で二万四千六百四十六、集落営農で三千五十四。面積で二十七万三千八百八十五ヘクタールで、農水省は、約九割(八九・六%)をカバーしたと豪語しています。しかし、認定農家は全農家比では〇・八%、販売農家比でも一・三%、農地比ではたったの五%に過ぎません。品目横断対策が多数の農家を農政の対象から排除するものであり、担い手の経営すら守れない、生産を縮小する政策であることはあきらかです。
集落営農組織で加入を申請したほとんどが転作受託組織であり、政府が目指す五年後の基準を満たす組織はわずかと思われます。
日本農業新聞の東北六県のJA組合長アンケートでは、半数が品目横断対策を批判的に受け止め、約四割が地域にあった弾力的な運用や見直しを求めています。
今年から品目横断対策が始まるというなかで、担い手の育成では、順調が一四%、目標の半分程度が四〇%、ほとんど進んでいないが二八%、これから始めるが一四%という状態です。
集落営農の悩みについては、「農家の理解が得られない」「事務が煩雑」「転作はできるが米となると反対される」が多数となっています。地域の現実を無視した推進の中で苦悩する実態を浮き彫りにしています。
高齢化や耕作放棄の進行の中で、集落営農をめぐって耕作放棄地が拡大され、高齢化の波も押し寄せています。集落のなかでの助け合いによる農地の維持と生産を確保する取り組みは、農山村を守る上で、決定的に重大な課題です。しかし、政府の進める集落営農は、いまがんばって生産を続けている農家に、「規模が小さいから、年をとっているから」として「土地持ち非農家」に追い込むものです。この問題をめぐって各地で紛糾・混乱が起きています。
「担い手」のいかんを問わずすべての農家にとっての最大の障害は、暴落に歯止めがかからない米価や、EPA・FTAです。
IV 二年間の運動方針について
(1)憲法改悪、増税を許さないたたかいに全力をあげよう
五年以内の改憲を公約した安倍内閣のもとで、通常国会の焦点は、改憲手続き法である「国民投票法案」です。改めて、この改憲手続き法案を阻止するために、全力でたたかいぬくことを誓い合おうではありませんか。
憲法を守る運動は、半数の国民世論を結集する壮大なたたかいです。
「九条の会」のよびかけに応えて農山村に網の目の「九条の会」をつくりましょう。「農林水産九条の会」をすべての都道府県に立ち上げましょう。「9条田んぼ」が大きな注目を集めました。ある労働組合の幹部が、農村を走っていたら田んぼに9という字があり、「ここでも九条を守る運動があるのか」と感動したという報告が寄せられています。すべての単組と支部で「9条田んぼ」をつくりましょう。
(新聞「農民」2007.2.5付)
|