世界的視野で食糧主権の確立をめざし、
地域で農業と農村を再生する運動を広げ、
強固な農民連をつくろう!(1/3)
第17回大会 常任委員会の報告
関連/世界的視野で食糧主権の確立をめざし、
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強固な農民連をつくろう!(1/3)
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I はじめに(大会の目的)
(略)
II 二年間の運動から確信にすべきこと
(1)農民と苦悩を共有し、立ち向かった農民連
1、農民と国民の利益を守るため亡国農政とたたかってきた農民連
代議員・評議員のみなさん、ご苦労さまです。常任委員会を代表して第十七回大会決議案の報告を行います。報告に先立って、大会を成功させるために奮闘をされたみなさん、そして大会直前まで会員や「農民」読者を増やして大会を成功させようとぎりぎりまで奮闘されたみなさんに心から敬意を表します。
前大会からの二年間は、WTOと財界農政によって農産物価格の暴落と農業経営の破壊、農山村の衰退・破壊の進行など、農民の苦難と日本農業の危機がさらに深まり、現状を打開するために懸命に努力する農家や農業関係者と農政との矛盾が、劇的に拡大された二年間でした。
そういうなかで、農民連は、農民と国民の利益を守る立場を貫き、農業経営の安定と地域農業の発展、食料自給率の向上、安全・安心な農産物を生産して国民に届けるという農民連の原点に立って、果敢に情勢に立ち向かってきました。また、多くの農民を失望させるイデオロギーに反撃し、国の内外で農業・食料を守る「もうひとつの流れ」を拡大する共同に全力をつくしてきました。
私たちの奮闘は、苦悩と失望感を深めている多くの農業関係者や国民に共感と展望を広げ、具体的な農政の一つひとつの場面で、政府を揺り動かしてきました。
2、国民世論と共同して農政を揺り動かしている―農と食を守る運動の核として
二つの点にふれたいと思います。一つは、アメリカの圧力に屈してBSE対策を棚上げしたままアメリカ産牛肉の輸入再開のレールをひた走る政府に対する農民連・食健連のたたかいは、アメリカいいなり政治とのたたかいの貴重な到達点です。
食健連と共同してアメリカに調査団を派遣し、アメリカのさまざまな消費者運動とネットワークを広げ、安全無視のアメリカ産牛肉の輸入に反対する広大な世論を作ってきました。世論は、輸入再開を急ぐ政府を包囲し、結果として輸入再開は強行されたものの、いまだにアメリカ産牛肉を敬遠する国民が多数であり、アメリカ産牛肉の流通にたちふさがっています。
もう一つの点は、品目横断的経営安定対策とのたたかいです。農民連は、この本質を暴き、全国各地で学習を広げ、広範な方々と対話を広げてきました。農水省にもたびたび足を運び、全国から寄せられた矛盾や問題点をつきつけてきました。
その結果、品目横断的経営安定対策の説明資料が十回も書き換えられ、国会での法案採択にあたって当時の中川農水大臣が欠陥制度であることを認めざるをえない状況まで追い込みました。政府は、制度のスタート前から破たん状態に陥った品目横断的経営安定対策を、ゴリ押ししていますが、農民連のたたかいは、多数の農民の要求や苦悩を代表するものでした。
(2)食糧主権を対置した国内外でのWTOとのたたかいの前進
WTOを危機に追い込み、交渉を凍結させるうえで私たちの運動は大きな役割を果たしました。
世界と日本の農業・食糧を破壊し続けてきたWTOとのたたかいの前進は、情勢を大きく動かし、WTOの弊害に苦しむ日本と世界の農民、民衆に展望をもたらしています。
〇五年十二月に日本から百八人の代表団を派遣した香港WTO閣僚会議行動は、食糧主権の実現のために奮闘しているビア・カンペシーナから高い評価を得て、昨年五月に、埼玉県秩父市でビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議を受け入れ、成功させるに至りました。国際フォーラムも大きく成功させ、アジアの農民代表が参加した五・二七国民大集会では、日本の民衆と東南・東アジアの農民代表が、しっかりとスクラムを組んで、新自由主義に立ち向かう姿を体現することができました。こうした成果を共有し、確信し合おうではありませんか。
前大会の承認のもとに〇五年の全国委員会で全員一致で採択された「行動綱領の一部改正」の眼目のひとつは、私たちの行動綱領に国際連帯という柱を打ち立てることにありました。「行動綱領の一部改正」は、WTOを追いつめて食糧主権の確立を求める国際的流れを作るうえで大きな力になりました。
WTOとのたたかいは、農業構造改革や品目横断対策の前提に対するたたかいでもありました。WTOが危機に瀕(ひん)しているなかで安倍内閣はWTOにしがみつき、新自由主義の旗を降ろそうとせず、世界の流れに逆行する姿をあらわにしています。
WTOとのたたかいは、こうした日本政府の存在を国内のみならず国際的に告発し、抗議するたたかいとも大いに結びついたことも強調しておきたいと思います。
(3)農民連食品分析センターの機能強化
農民連食品分析センターの機能を抜本的に強化できたことも重要な前進でした。十周年を迎えた食品分析センターは、WTOが発足した翌年の一九九六年に立ち上げられました。WTOによる生産の縮小や危険な農産物の洪水輸入から食の安全守る「砦」(とりで)として食品分析センターは立ち上げられました。以後の十年間、分析センターが日本の食の安全を守る国民共同の分析センターとしての役割を果たし、今日、ポジティブリスト制という新しい要請に対応できる体制が全国の仲間の募金で実現できたことを農民連組織全体の成果として確認したいと思います。
同時に、募金の目標を達成するためには六百万円ほどたりません。これまで募金を寄せていただいたみなさんに感謝すると同時に、もう一回りの募金を訴えていただくことをお願いするものです。
(4)憲法、教育基本法の改悪を許さない共同
憲法を守ることなくして農と食を守ることも、食糧主権を実現することもできない。平和でこそ農業を発展させることができるという立場から、憲法を守る創意ある取り組みを展開してきました。
(5)かつてない農民連への期待の高まりと、組織づくりの展望
二年間の運動を通して農民や農業関係者の農民連への期待の大きさを実感します。今ほど多数の農家が暮らし破壊の政治に苦しめられ、怒りや不安を募らせているときはなかったでしょう。農業で生活できない、農山村で生活できない、こういう事態にまで、日本の農業の危機は、歴代の自民党政治、とりわけ小泉「構造改革」以後の五年間で深まっています。農業をめぐる現実を直視するとともに、情勢の大局に展望をもって要求を基礎に果敢に立ち向かっている農民連への期待が大きく高まっています。農民連の要求運動の一つひとつが経営の展望に結びついています。
「日本販売農業協同組合連合会」(二十JA・十二万人で構成)を農民連に迎えることができました。農協組織が加盟したことは、農協組織の中における農民連への期待の高まりを示すもので、非常に重要です。昨年、新聞「農民」で農協特集号を発行しました。農協破壊攻撃の本質を明らかに、共同して反撃することや、農家と地域農業を守る農協になろうと励ましてきました。私たちの働きかけに、「食糧主権宣言」(案)を大量に購入したり、共同事業に踏み出す農協も生まれるなど、どこでも歓迎され、共同を大きく広げています。
私たちは、仲間作りと読者拡大こそ農業破壊を押し返す何よりの力であると位置づけ全力をあげてきました。全国的に高齢化や離農などによる世帯会員の減少や、読者が減少傾向にあることは事実です。
(新聞「農民」2007.2.5付)
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