座談会郵政に次いで浮上した「農協解体」は何を狙う消費者と連携、地域農業を守ってこそ−
ここに農協の危機打開の活路が産直を軸に三者のチームワークで困難のり切ろうと横山 私たちは、黒字体質の経営にしていこうと、役員や職員、生産者、すべての生産団体、産直でつながっている消費者の代表にもお願いして計画をたて、意見を出してもらいました。貴重なものです。「白旗揚げるわけにはいかない、がんばろう」「こうした措置がムダにならないようにしてほしい」―これが最大の願いです。それに経営者は応えなければなりません。産直は、農協を基軸に生産者、消費者の三者によるチームプレーなんだという位置づけでやってきました。困難なときもチームプレーで乗り切ろうということです。 佐々木 それが原点なんでしょうね。下郷農協が提案していることが前進すれば、今の日本農業が抱える矛盾を突破することができるんじゃないかと思います。一農協の問題ではなく、日本農業全体が抱えている問題が現場であらわれていると思います。 横山 私は三つのことを言っています。ひとつは、合併すればこの世で地獄をみるようなことをせんならん。だからこの世で地獄を見るよりも地獄を見る思いで再建しよう。二つ目は、平成の下郷一揆だ。そして三つ目は、無から作り出した農協創設の時のたたかいをいまやろう――こういう話をしながらがんばっています。 大関 やはり組合員がひとりひとりではどうにもならないから、自分たちの生活や経営を守ろうということで協同組合という組織をつくったのに、いまは組合員の組織でなくなっている。われわれは、農家や地域の農業振興に対して、農協の役割をきちんと果たしていくべきだと思います。 全中の考えているような弱いものを切り捨てていくやり方では、地域は発展していきません。 横山 全国には、未合併でがんばっている農協がまだまだあります。大分県にも大山農協とかいくつかあります。そういう農協ががんばってくれると励まされます。 大関 青森県でも下田町農協や相馬村農協など、未合併でがんばっているいい農協があるんですよ。 佐々木 そういうがんばっている農協のネットワークがほしいですね。
財界が異常な執念「改革もっと急げ」と山本 十二月には財界主導の「農協解体論」が再び登場してくることははっきりしています。オリックスの宮内義彦会長が規制改革・民間開放推進会議の議長になっていますが、「こんどの総選挙は、小泉構造改革のスピードアップを国民が要望していると考えられる。これから年末にかけて不眠不休でやらなければならない」と話し、新聞記者の質問に「おそらく年末答申は検討したすべての分野に触れるということになる可能性が非常に強い」と答えています。 農協のなかには、「そんなこと言ったってそうはならないよ」とタカをくくっている人もいますが、財界が執念深く追求していることだけは事実ですし、いまの内閣ならやりかねません。 大関 地域にとって農協がこういうかたちで必要だ、ともっとアピールしていくことが必要です。負債で困っている農家に、私たちが生活指導、生活設計、融資の相談に入り、立ち直った農家はいっぱいあります。 金融がなくなったらそういう指導はできません。単なる取り立て屋でしかなくなります。すこし宮内会長と会って話したいですよ。(笑い) 横山 地域農業の発展にとって、農協金融の果たす役割は限りなく大きいのです。また、農家や組合員の生命と財産を守る上で、共済事業の役割も大であり、農協の金融・共済・経済事業の分割は、農業と地域こわしそのものです。 分離分割攻撃に対する反撃を地域で組織していくことが大事です。 佐々木 農協攻撃は、農民の協同を否定するだけでなく、地域農業の切り捨てだということですね。 横山 それともう一つは、協同組合の生命ともいえる基本原則への攻撃です。組合員みんなの意見を聞いて民主的に運営しようというのが一人一票制ですが、これがいわゆる選別された担い手を育てる障害だというんですから、まったくひどい話です。 農協を「新基本計画」の補完的な機能にさせてしまうというねらいが、ここにあるのではないでしょうか。 山本 一人一票制への攻撃ですね。これは農協にとどまらず生協も問題になってきます。協同組合つぶしに発展する第一歩なんです。財界にとっては、こういう自主的組織がジャマだということではないでしょうか。 佐々木 郵政事業の資産は三百四十兆円、農協は五百数十兆円なんだそうです。それをねらっている財界にとって、農協は垂涎(すいぜん)の的なんです。財界がなにをねらっているか、ちゃんと見ておかないといけません。 大関 目的は、金もうけしかないと思います。 横山 財界は、農地もねらっています。農業委員会に地元の農家以外の人も入る第三者機関に改組しようというんですから、驚きますね。
力を合わせ打開の大道を山本 全中も全国の集まりはだいたい組合長さんまでで、以前に東京ドームでやったような農民の大集会は、もう考えられないですね。農政運動という面からみても決定的に後退してしまいました。完全に自民党、農水省との三位一体で封じ込められているので、これだけ押し込められているのに反発する力が出せない。だから、突破しようという方針ではなく負け戦(いくさ)の方針しか出てこない。 佐々木 私たち農民連は運動体としてやや大きくモノが見れます。しかも自由な立場から批判もできます。そういう意味では、われわれの存在、役割はますます大きいなと思っています。 大関 そうですね。組合員が訴えようとしていることがなかなか通らない時代です。農民連にがんばっていただければ私たちも心強いし助かります。 横山 今回の問題は、単に下郷農協だけに当てられた攻撃ではありません。私が会長をしている日本販売農協連(日販連)の会員農協は、未合併ながら組合員の営農と生活を守るための多様な事業を展開しています。産直で全国の消費者と提携しています。こうしたまともな運動全体への攻撃です。全国の仲間と一緒にはね返していきたいですね。 佐々木 下郷農協は生産者・消費者と一緒になって産直事業で切り開いてきました。われわれも今そういう運動を全国に広めていますが、ものを作る生産現場と消費する消費者が、ただ作る、買うだけの関係だけでなく、農業を守るという目的で一緒に運動するのが基本です。 一方は買いたたき、一方は金もうけするという関係ではなく、生産する現場と消費者が共同することが日本農業の本来の筋だろうと思います。 いまはたしかに困難ですが打開する方向がわかりました。これが回り道でも一番の大道だろうと思います。お互い力を合わせてがんばっていきましょう。
青森・野辺地町農協 (新聞「農民」2005.11.7付)
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[2005年11月]
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