「農民」記事データベース20051107-707-02

座談会

郵政に次いで浮上した「農協解体」は何を狙う

消費者と連携、地域農業を守ってこそ−

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ここに農協の危機打開の活路が

「合併したら産地はつぶれる!」

議論重ねた末に結論

 横山 七〇年代の中ごろ、地域に四つの農協がありました。私らのところが産直事業で元気があるので、ほかの農協が一緒にやらせてくれということになりました。でも、やっぱり産直は面倒なんですよ。消費者から苦情も言われます。それで、ほかの農協はだんだん離れていきました。

 うちの組合員は、面倒なことをやりながら生きていくと決めたんです。だから、面倒なことをしている農協を守るためには合併してはだめなんだと、組合員の意識は非常に高い。何度か総会などで議論はしていますが、合併したら産地がつぶれるということで合併しないできました。

 佐々木 非常にわかりやすいですね。

 大関 うちも部落懇談会などで合併のことを説明しますが、「未合併のままだと、赤穂浪士じゃないけれど、野垂れ死にするかも」と言ったら、「それでもいいよ」という組合員の強い決意なんです。「もし合併するなら、組合を脱退するよ」という組合員もいます。


融資、営農相談など

合併後の農協は冷たい

 佐々木 合併するかどうかは、最終的には組合員が判断するんです。「うちの農協は合併しない」という組合員の判断、これは心強いですよね。

 私は福島市で大型合併した農協にいます。組合員が一万人規模なんですが、これでも中規模です。

 私も農協支店の運営委員長をやってきました。合併してはじめに何をやるかというと、支店の統廃合をやるんです。

 組合員にとって支店が一番の窓口で、支店長の顔とか窓口の人の顔はわかる。じいちゃんが窓口にいくと、どこのじいちゃんかわかるわけです。農協の窓口がなくなると、五キロも行かないと金融の窓口がないということで、組合員から不満が出ました。総代会でも議論になって、アンケートをとったり署名を集めたりして、結局、出張所を置くことになりました。

 支店が統廃合されると、ささやかだけれど、大事なサービスがなくなり、目に見えて農協から離れますね。

 それと、営農計画を立てて機械を導入したいという農家が資金の借り入れを申し込んでも、積極的でない。あんなところに貸していつ不良債権になるかわからない、というようになりました。

 大関 金融庁の関係で裏づけのないものには、貸せなくなっています。

 佐々木 やっぱりそうですか。一生懸命やろうとする農家は、“資金を持っているから”ではなくて、“なんとか経営をよくしたい”、“こういう状況を脱皮したい”と思うからやろうとするわけです。そうすると資金対応が必要になるんですが、そういう農家に対しては冷めた目で見る。これも合併農協の現状だな、と思います。

 大関 大銀行と横並びにしています。いまの全中は、日本農業の確立とか担い手づくり、食料自給率の向上といったことを言葉では言うんですが、何もやらないんです。農家は、個々ではどうにもならないから、農協をあてにしています。そういう農家の願いに応えていくというのが私たちの役目ではないかといつも思っています。東京でものを考えている人たちにはわからないと思います。


なぜ「一県一農協」なのか?

おどして合併迫るJA中央

 山本 全中はじめ都道府県の中央会は、未合併JA解消対策(別項)をもとに、いろんな手段をとってきます。一番の典型が大分県と京都府です。

 京都では、中央会の会長が出ている単協が核になって、府内一つの農協を作るんだと宣言して、毎年一農協ずつ吸収合併でつぶしています。そのやり方は、中央会の監査機能を総動員して農協経営の弱点をあばき、「理事者が全部連帯責任をとりますか」とおどしをかけて吸収していくやり方です。

 これに対して大分では、全県的に財務調査をやり、一気に県域の合併農協にもっていこうとしています。大分の例を報告していただけますか。

 横山 いま経営内容が悪いということで、毎月、県と中央会も入って破たん未然防止対策を検討しています。自己資本比率、遊休資産の取り扱い、減損会計、二年連続して赤字を出せないなど、法的なしばりがあります。県や中央会からは「もう合併しなければ、業務取り消し命令を出さざるを得ない」というおどしまでかけられています。

 本当に、全中の方針どおり「未合併で経営不振の農協はつぶしてしまえ」ということです。ちょっとひどいやり方だと思います。中央会としては、自己資本比率がクリアできない農協がひとつでもあれば、支援を受けられない、資金注入してもらえないからヒヤヒヤなんですよ。県全体でクリアできないことは許されないということで、県域農協の構想になるんです。

 山本 大分の場合は、農協の弱点を全部明らかにして合併せざるをえない状況を作り出す、そして来年七月を目標に県域の合併農協をつくりあげるやりかたですね。

 佐々木 結局、組織をどう守るかということに力点がいっていて、構成している組合員や営農をどうするかはどこにもでてこない。


全中の未合併JA解消対策

 (全中の方針から)未合併JA解消にむけての重点県は、(1)未実現JA数が十組合以上ある県(2)未取組JAが県内JA数の三〇%以上の県および未実現JAが県内JA数の五〇%を超えている県。
 この基準に該当するのは、北海道、青森、山形、神奈川、新潟、富山、石川、滋賀、兵庫、広島、高知、大分の十二道県。

(新聞「農民」2005.11.7付)
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2005年11月

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